魔王さんとの街歩き・2
おはようございます。
第204話投稿させて頂きます。
良いね。ありがとうございました。とても励みになります。
前回は急にお休みさせて頂きすみませんでした
今回も葵の視点になります。
楽しんで頂ければ幸いです
何だかんだであの後、私も焼き串をもう2本頂き、引き続き街の散策をする。
朝早くだったので少しだけ重いかとも思ったけど朝食を食べずに来たのでお腹的には丁度良かった。
結局、20本という数が多かったのか私が3本、ト・・・ハクさんが5本食べた所で残りはハクさんのアイテムボックスというスキルの中に保存する事になった。大量の荷物が消えたのはこのスキルを使ったからみたいだ。
そんな事を考えながら歩いて居ると市場の様な所から様々な雑貨などを扱うエリアへと入った所で一つのお店が目に入る。
「あ、ガラス細工・・・」
「入ってみるかい?」
「あ、はい。お願いします」
透明なガラスに様々な色で模様の描かれたグラス等が目に入り思わず足を止めて眺めていると目の前を歩くハクさんが尋ねてくれたのでお言葉に甘えてお店の中を見させてもらう。
「わぁ~」
中に入って綺麗に輝く様々なガラス製品を目にして昔からガラスが好きだった私は思わず感嘆の声を上げてしまう。
普通、こういう異世界ってガラス工房に依頼してオーダーメイドして貰うのが普通だと思っていたのにこの国にはガラス専門の小売店が有るんだぁ~。
「いらっしゃい。おや?ハクかい?あんたが来るなんて珍しいねぇ。珍しく連れも居るのかい?」
私がワクワクした気持ちで製品を見ているとお店の方から声を掛けられる。
ビックリして声のした方を見ると白髪のお婆さんがお店のカウンターからこちらを見ている。
彼女がリューンさんの言っていた人間種と呼ばれている所謂私達と同じ種族だった事に密かに驚いていると声を掛けられたハクさんが笑みを浮かべて口を開く。
「お久しぶりです。カーナさん。近くを通ったので寄らせて貰いました」
ハクさんがそう言うとカーナと呼ばれたお婆さんはニカっと笑いながら言葉を返す。
「そうかい‼じゃあ、ちょっと手伝ってくれんかね?最近、どの孫も忙しいらしくて顔も見せにこん。それとそっちの嬢ちゃんは誰だい?」
「彼女は立花 葵さんです。今、城の方に滞在して貰っていて街を案内しているんです。ご相談したい事も有りますし、お手伝いの件は了承しました。立花さんに説明するので少し待っていてください」
「あいよ。頼んだよ」
そんな会話をした後でカーナさんは店の奥へと去って行き、ハクさんは私に説明をしてくれる。
「さっきの方はこのお店の店長さんでカーナさんって言うんだ。人間種の方だけど魔族の旦那さんとご結婚されていて4人のお子さんと7人のお孫さんが居るんだ。君の部屋の前で待機していた若い方の騎士はバッカスと言って彼女のお孫さんの一人だよ」
そう言われて部屋に案内された時に見た若い方の騎士さんを思い出し思わず声を上げる。
「あ、あの騎士さん」
使っている部屋に案内された時に扉の前に立って居た頭の片側に黒い角の生えた若い男の人を思い出す。
「彼女に相談したい事も有るし、手伝いに行って来るよ。申し訳ないけど少しだけ商品を見て待っていてくれるかい?」
「あ、はい。わかりました・・・」
魔族の人と人間種と呼ばれている人との間に結婚した方が居た事に密かに驚いているとハクさんから待機して欲しいと言われたので返事をすると彼はもう一度『すまないね」と言ってカーナさんを追ってお店の奥へと消えて行く。
———多分、カーナさんは知らないのかもだけど魔王なのにお店の手伝いを頼まれて嫌な顔もせずに引き受けるんだ・・・アルバルト様だったら怒り狂うだろうなぁ・・・
ここに来てから同じ王様なのにアルバルト様とハクさんとの違いにかなり悩みながらもハクさんを待ちながらお店のガラス製品をゆっくりと見ながらハクさんを待つ。
「あっ、こんな物まで有るんだぁ・・・」
商品を眺めて数十分ぐらい経った頃にグラス等の食器や置物等の雑貨の中に髪留め等の小物も置かれているのを見つけ、その中の蝶を模ったガラスのブローチを手に取って見る。
・・・これ、かわいい
少しだけ欲しく思ったがよくよく考えればこの国のお金を持っていない事を思い出し、有った場所に戻そうとしていると不意に後ろから声を掛けられる。
「何か気に入ったものが有ったのかな?」
「わあ‼」
いきなり声を掛けられて驚いてしまいその拍子に手に持っていたブローチが手から滑り落ちてしまう。
まずいと思った瞬間にはブローチは落下していき、そのまま床にぶつかると思ったがそうなる前に後ろから声を掛けてきた人物の手が間一髪の所でブローチをキャッチし難を逃れる。
「おっと、驚かせてしまったみたいだね。申し訳なかった」
何時の間にか戻って来て居たのかこちらも驚いた様子のハクさんがブローチを手に持ち立ち上がる。
キョトンとしている顔が先程までと違い何だか幼く見えるなと思いながら慌てて口を開く。
「す、すみません‼気配がしなかったので驚いちゃいました‼商品大丈夫ですか⁉」
「うん、落ちる前にキャッチしたから大丈夫だよ」
ブローチの無事を確認するとハクさんが手に持ったブローチを見せてくれて何処も破損していない事にホッと息を吐く
「待たせてしまってごめんね。これと皆へのお土産を買ったらカフェにでも行って少し休もうか?」
そう言うとハクさんは先程のブローチと幾つか花を模った小物とグラスとガラスペンを何点か持ってカーナさんが座っているレジの方へと歩いて行く。
「ヒッヒッヒ、アンタは金払いが良くて助かってるよ」
カーナさんはそう言いながら丁寧に一つ一つガラスを梱包していき箱の中に入れて行く。
「あ、その蝶のブローチだけは渡して貰って良いですか?」
「はいよ」
ハクさんがそう言うとカーナさんは先程のブローチを分けて箱に詰めたガラス製品と一緒にハクさんに渡す。
「ありがとうございます。はい、立花さん。どうぞ」
「え、そんな。悪いです・・・」
そう言ってハクさんはブローチを渡しに渡してくれる。
流石に悪いと思い断ろうとすると手に渡され
「黄昏の国を観光した記念だよ。大事にしてくれるとうれしいな。それじゃあ、カーナさん.
また来ます」
そう言って箱をアイテムボックスボックスに仕舞ってお店を出て行こうとするハクさんを見ているとカーナさんが声を掛けて来る。
「ヒッヒッヒ、ウダウダ言わずに貰っときな。世話焼きはあの子の性分みたいなもんさね」
「はい・・・あの、少しだけカーナさんとお話しても良いですか?」
出て行こうとするハクさんにそう声を掛けると手を挙げて了解の意を示してくれたので私は少しだけカーナさんとお話をしてからハクさんを追ってお店の外へと出た。
此処までの読了ありがとうございました。
次回も葵視点です。
ごゆるりとお待ちいただければ幸いです。




