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何してるのあの子・1

おはようございます。

ブックマーク・評価ポイント・いいね。ありがとうございました。とても励みになります。

また、誤字脱字報告。真にありがとうございました。

第200話投稿させて頂きます。

今回は久しぶりにコハクの視点です。

時間軸は前話と同じ日でリューン達の所に来る前です。

楽しんで頂ければ幸いです

 ————ミステタナ、ミステヤガッタナ

 ————ショセン、キレイゴトヲナラベルギゼンシャダ

 ————イツカオマエハサバキヲウケル

 ————ジゴクイキ、オマエハジゴクイキダァ‼


 何時もの怨霊達の夢なのに私は何処か凪いだ思考で聞き流す。

 何時もなら何とも言えない苛立ちと憎悪が溢れていたと言うのになぜか彼等の言葉に何一つ心が動かない。


 ————ドウシタ?ドウシタ?イツモミタイニオレタチニドナラナイノカ?


 怨霊の一匹が私の事を煽って来るがやはり何にも感じない。

 何も言わない私が面白くないのか怨霊の連中が今までと同じ様な煽りも含めて様々な言葉を投げかけて来る。苛立ちや憎悪は無いけどいい加減うざったいので周囲を飛んでいた一体を捕まえて少しだけ低い声を出して語り掛ける。


「五月蠅いよ。毎回毎回、似た様な事ばっかり言ってきやがって・・・その時が来たら存分にアンタらと言い合ってやるからいい加減黙ってろ。それまでに精々語彙を増やしておけ」


 そう言って捕まえた怨霊から手を離したのと同時に夢の中なのに意識が薄れて私はゆっくりと現実世界へと戻って行く。

 隠し部屋を照らすランプの光がチラチラと瞼の裏を照らし私の意識がゆっくりと胸糞の悪い夢から戻って来る。

 熱は下がったらしく昨日感じていた体の怠さは感じない。

 そんな事をベッドの中で考えながらゆっくりと起き上がろうとして自分の体に小さな手が抱き付く様にして回されている事に気が付く。

 不思議に思い布団の下の方を見て見るとそこにはネージュが私に抱き着く様にして眠っている。

 ・・・成程。昨日、私が寝入った後にメイド長かリューンがネージュに頼まれて私の所に連れて来てくれた感じかな?

 起き上がるのを止め、ベッドに横になったまま幸せそうに眠っているネージュの頭を撫でる。

 ———そう言えば、この子にも最近、寂しい思いをさせてしまっているなぁ・・・

 そんな事を考えながらネージュの髪を手櫛で梳いてやるとネージュは嬉しそうに身を捩りながら更に私に擦り寄って来る。

 時刻は5時で何も無ければ何時も起きている時間だが恐らくネージュの寝た時間は遅かっただろうからもう少しだけ一緒に横になっていても良いだろう。

 そんな事を思いつつ私はネージュを抱きしめてネージュが起きるまでしばしベッドの中で横になる事にした。



 しばらく横になって9時ぐらいになると隠し扉のドアが開く音がしてピコピコと動く赤い髪に包まれた狼耳が顔をのぞかせる


「おはよう。会頭。起きているかい?」

「おはよう。ヴァネッサ。今日は貴女が来てくれたんだね」


 私が挨拶を返すと少しだけホッとしたような顔をしてヴァネッサが口を開く。


「おはよう。聞いていた話よりだいぶ元気そうだな。朝食は食べられそうかい?」

「皆のお陰でね。ありがとう。朝ご飯も頂くよ。」


 そう言いながらネージュの背中を左手でポンポンと優しく叩いてやるとモゾモゾと動き出しゆっくりと目を開ける。


「ん~」

「おはよう。ネージュ」


 まだ眠気眼なネージュに笑いながら声を掛けると眠そうに目を細めたまま朝の挨拶を返してくる。


「んー。あるじ~。おはよ~」

「おはよう。朝ご飯にするからそろそろ起きようか?」

「は~い」


 ネージュが完全に起きてからヴァネッサの用意してくれた朝食を摂り、ネージュと二人で身支度を整える。少なくとも昨日丸一日動けなかったのだ。今日はフェル達に連絡したりしないとなぁ・・・狗神君達とも会って話がしたいなぁ・・・

 ネージュの髪を三つ編みに結んであげながらそんな事を考えて居ると私の考えを読んだかのように朝食の片付けをしていたヴァネッサが声を掛けて来る。


「あぁ、そうだ会頭。今日はどんなに焦っていても絶対に休息を摂る様にってメイド長が泣いて頼んでたぞ。メイド長の心労の為にも今日はゆっくり休みな。誰か話したい人達が居たらアタシから伝えておくからサロンで待ってな。それと、人と会う前に風呂に入った方が良いぞ?汗も掻いているだろうしな」


 ヴァネッサにそう言われて私は自分の体を見る。

 ・・・・確かに汗でベタベタだ・・・うん、お風呂に入ろう。それにメイド長に心配させるのも悪いし、言われた通りに今日は急速に当てよう。


「わかった。私はお風呂に入ってくるよ。その後はメイド長の言う通りにしてネージュと一緒に過ごす事にするよ」

「誰か会いたい奴は居ないのかい?」


 私の言葉にヴァネッサが訝し気な顔で訊き返して来る。

 ヴァネッサの言葉に私は思わず目を逸らしながらお風呂の支度をする

 ・・・会いたいには会いたいけどそれは私が会いに行くのがスジであり病み上がりだからと言って来て貰うのは違うんじゃないかと思う訳でして・・・会いに行けば良いと思われるかもしれませんが気まずくって会いに行きづらいというのも真実でして・・・・

 彼と会わない理由を心の中で誰にともなく言い訳をしているとヴァネッサが溜息を一つ吐き、口を開く。


「はぁ、コハク。アタシは基本、アンタの事は尊敬しているし大好きだけど自分に素直じゃないアンタの事はあんまり好きじゃないよ。取り敢えず。会いたい人間は居ないんだね?了解した。その辺はアタシが上手い事やっておくよ。ネージュは見ておくからさっさと風呂に入って来な」


 そう言われて私は隠し部屋から追い出されてしまい。私は仕方がなくお風呂セットを持ってそのままお風呂場へと向かった。

 ヴァネッサが何を上手い事やるのかは分からないけど取り敢えず今は汗を流すのを優先しよう。

 ヴァネッサの言葉に引っ掛かりを憶えたが分からない物は分からないので取り敢えずお風呂を優先する。

 ヴァネッサの言葉の意味はお風呂に入りさっぱりした後で隠し部屋のある図書室前に居た狗神君と会った事により分かる事になった。

 狗神君に会いに行くという心の準備も無いままに狗神君と遭遇してしまい私は思わず彼を見たまま動きを止めてしまう。

 何か話さなければと思っていると狗神君の方も少しだけ気まずそうにしながら顔に笑みを浮かべ口を開く。


「久しぶり。体はもう大丈夫なのか?」

「あー、うん。一応、大丈夫。御心配をおかけしました。狗神君はどうして此処に?」


 若干、緊張している様な声音で私の事を気遣ってくれる彼に私の方も良く分からない緊張をしながら答えなぜ彼が此処に来たかも訊いてみる。

 私の質問に狗神君も何だかよく解らないと言ったような様子で答えてくれる。


「あー、ヴァネッサさんから何でか分からないけど図書室前で待っててくれって言われたんだよ。で、着いた直後でコハクと鉢合わせた」

「そ、そうなんだぁ・・・」


 心の中で『ヴァネッサァァァァァァ‼‼‼‼』っと叫びながら狗神君の言葉に返事をする。


「・・・」

「・・・」


 私の言葉を最後に気まずい沈黙が続きどうしようと困っていると狗神君が意を決したような目で私を見ながら口を開く。


「コハク。今、時間が有る?少し話がしたいんだけど良いかな?」


 狗神君の言葉に私は一番最初にどうやって逃げよう等と失礼な事を考えてしまったがふと今朝ヴァネッサに言われた事を思い出す。

『アンタの事は尊敬しているし大好きだけど自分に素直じゃないアンタの事はあんまり好きじゃないよ』

 今の私は彼と敢えてどう思っているのかと訊かれたら嬉しいと答えるだろう。

 そして、彼と話したくないかと言われれば間違いなく『ノー』と答えるだろう。

 以上の事を踏まえて私も意を決して彼の目を見ながら答える。


「うん。私も話がしたい」


 そう言って安心した様に笑う彼を図書の中に招き入れ、私は久しぶりに狗神君とゆっくり話をする事になった。

此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ちいただければ幸いです。

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