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久しぶりの熱

おはようございます。

ブックマーク・評価ポイント・いいね。ありがとうございました。とても励みになります。

また、誤字脱字報告。真にありがとうございました。

第195話投稿させて頂きます。

楽しんで頂けたら幸いです。

「ちょっと待ってください‼帝国の人達を見捨てるんですか‼」


 帝国を見捨てる有無を謁見の間に集まった皆に伝えると狗神君達の居る方向から声が上がる。

 怠い体にムチ打ちゆっくりとそちらの方を向くとアオイが私と周囲の圧に蹴落とされながらも勇気を振り絞って前に出る。


「ほう、僕の決断に何か異議が有るのかな?お客人?」


 私がやや威圧的に声を掛けるとアオイは一瞬、ビクッと肩を震わせるが私の事を真っ直ぐに見据えるとはっきりとした言葉で話し始める。


「帝国には戦えない人達も沢山居るんです。お願いします。何も知らないその人達をアルバルト様の言葉だけで見捨てないでください‼良い人だって沢山居るんです‼お願いします‼」


 そう言って頭を下げるアオイに対して私は仮面の下で恐らく冷ややかな視線を向けながら切り捨てる言葉を投げかける。


「成程、君は何も知らない・・・知ろうともしない愚か者達の為に僕達に死ねと言うんだね?」

「ち、違います‼ただ、私は・・・困っていたら助けてあげるのが当たり前だと・・・」


 私の言葉をアオイは勢いよく否定し最後に綺麗事を言おうとして後半部分が尻すぼみになる。

 そんなアオイに私は更に言葉を続ける。


「違わないさ。厄災と戦えば尋常じゃない程の死者が出る。だが、アルバルトだけじゃなく帝国の奴等は総じて自分達が特別な存在だと思い厄災と戦うなんて考えて居ないのさ。それに僕達の国にもいい奴や戦えない人達なんて言うのは沢山いるし、家庭も有れば仕事もある。帝国の人間だけが特別な訳じゃない。君はそういう事も考えずに彼等の家族に死ねと言っているんだ。困っていたら助けるのが当たり前?素晴らしい考え方だと思うさ。だが、それは助けた相手が同じ人間だった時だけの話だ。現実を見ないで都合の良い夢物語だけで物を騙るな。お前はお前の言った言葉で大勢の人間が死んで責任が取れるのか?お前と話していても時間の無駄だ。次の魔王会議の後に正式な決定を連絡する。本日は解散だ。皆、ゆっくり体を休めてくれ。リイナ。そこの客人にも監視を付けて一部屋用意してやってくれ」


 アオイとの会話を一方的に切り上げ、話をしたそうにしている狗神君達を避ける様にしての近くに居たメイドのリイナにアオイを部屋に押し込めるように指示を出し、私は隠し部屋へと逃げ帰ってこれから行う事に使う器具を机の上に用意して近くの椅子に倒れる様に座り込み、漸く息を吐く

 正直、最後のアオイへの言葉はいらなかったと反省をしながらコートを脱ぎ、銃で撃たれた傷口に目を向ける。

 ・・・やっぱりあの程度の銃の性能じゃ、弾は抜けていないな

 傷口に入ったままの弾を確認し、私はランプに火を灯し、アルコールをナイフとピンセットに吹きかけ、弾の摘出の準備を始める。

 ・・・使われている金属は恐らく鉛、このままにしていたら中毒になる可能性が有るな

 口に布を噛み、右手にナイフを持って左手の傷口を切開し、傷口を広げてからピンセットを捻じ込み、弾を掴んで無理矢理引っ張り出す。痛みで額に汗を浮かべながら少しずつ引っ張り何とか弾を摘出した後で傷口にアルコールを掛け、傷口を縫い合わせた後で梟印ではない低級のポーションを掛けてガーゼを当てて包帯を巻く。

 それらの過程を終えて安堵の息と共に布を口から落とし、外はまだ明るいが部屋の中に設置してあるベッドに倒れ込む。

 正直言って今日はもう体が動かない・・・恐らく明日は熱が出ると思うので魔王会議の最短の開催日は明後日にしてある。各魔王からの返事は明日、メイド長が教えてくれると思うので今日はそのまま休む事にする。

 寝る寸前でネージュや皆の顔が浮かんだが今の私には最早、動く気力も元気も残っていなかった。


 翌日はやはり予想していた通り体が怠く、高熱が出ている事がまだ暗い内に目が覚めた時に分かった。

 強烈な喉の渇きに近場に置いておいたはずの水差しに手を伸ばそうとしたがギリギリの所で届かない。

 熱で怠い体を無理矢理起こして水差しを取ろうと体に力を入れた瞬間、誰かの手によって口に水差しが突っ込まれ、冷えた水が喉を潤す。

 喉が潤いホッとした所で目を開けて水差しを口に入れてくれた人物を見るとリューンが心配そうにこちらを見ている。

 よく見ると奥の方にメイド長の姿もある。


「・・・リューン、ありがとう」


 些かかすれた声でお礼を言うとリューンは心配そうな顔のまま現状の報告をして来る。


「目が覚めて良かったです。お帰りになられてから様子を見に窺ったら熱にうなされながら2日も寝ていらしたので本当に心配しました・・・」


 何時もより真面目な態度で今の状況を教えてくれるリューンの言葉に私はぼんやりする頭で絶句する。

 何と横になった日から一晩経って更に二日目の深夜とは・・・それは強烈な喉の渇きにも襲われるし、リューン達も心配になるか・・・

 自分の服装を確認してみると服も寝た時のコートの下に着ていたインナーから寝間着に着替えさせられている。左手を見ると包帯とガーゼも新しい物に交換されている。随分と迷惑を掛けた様だ・・・

 リューンと話をしているとメイド長がお盆に雑炊を乗せて前に出て来る。


「魔王様、食欲は有りますか?無くても少しだけでも食べてください」


 そう言って簡易テーブルにお盆を置いて匙に乗せた雑炊を口元まで持って来てくれる。

 メイド長に甘えて横になったまま小さく口を開いて口の中に匙を入れて貰う。

 数口食べた所でもう大丈夫だと告げて再び水差しを入れて貰い、喉を潤す。

 私の状態が一通り落ち着てからメイド長が現在の状況の説明をしてくれる。

 メイド長から私の指示を聞いたメルビスは迅速に行動してくれたらしく各魔王に直ぐに魔王会議開催要請の連絡が通達された。

 結果として強欲の魔王以外の魔王は直ぐに何時でも大丈夫という連絡が来たのだが強欲の魔王だけは二週間後の開催を要望して来たらしい。

 私としてはアイツが居なくても何も問題は無いのだが事が事だけに省く訳にもいかない。

 それに、今回は帝国を見捨てるのだから厄災が着た後でも問題は無いか・・・

 溜息を一つ吐き、メイド長に二週間後の開催を連絡する様に頼むとメイド長は頷き引き受けてくれる。

 続いて、連れて来て放っておいてしまったアオイだが彼女に関しては夢菜さんと光さんとネージュが気に掛けてくれたらしくアオイの話し相手になってくれているらしい。

 アオイの名前が出た途端にリューンが不愉快そうに顔を顰めるのを見て私は苦笑を浮かべながらアオイのフォローを入れる。


「リューン。あんまり不愉快そうな顔はしないであげてね。私も酷い言い方をしたけど彼女はまだ帝国の事しか知らないんだよ。だからと言って許される事では無いけどこれからの事も考えて普通に接してあげてね」

「・・・かしこまり」



 不満げに何時もの返事をするリューンにメイド長と苦笑をしてメイド長とリューンに声を掛ける。


「さて、そろそろ二人も休んだ方が良いね。色々と世話をしてくれてありがとう。私ももう一度寝るから二人もゆっくり休んで」


 私の言葉に二人は朝まで隠し部屋(ここ)に居ると言ってくれたが二人は明日も仕事がある。流石に寝不足で仕事をして貰うのは申し訳ない。・・・若干の手遅れかもしれないけど

 それらの事を伝えると全然問題無いと食い下がって来るので最終的に命令という形で頼み。何か有ったら直ぐに連絡する事を約束してから二人には自室に戻って貰い。

 私も未だに下がらない熱の怠さにやられながら明日以降の事を考えながらもう一度眠りにつくのだった。

此処までの読了ありがとうございました。

ごゆるりとお待ちいただければ幸いです。

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