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第一印象は嫌な奴

おはようございます。

ブックマーク・評価ポイント・いいね。ありがとうございました。とても励みになります。

また、誤字脱字報告。真にありがとうございました。

第193話投稿させて頂きます。

楽しんで頂けたら幸いです。

「7です!」

「8だよ」

「きゅう‼」

「10だ」

「11です」

「12・・・」

「「「「「ダウト(だ)(です)‼」」」」」

「はぁ、ちくしょう・・・」


 次々と続いた数字を出すトランプゲームのダウトをやっていると何故か全員が俺の時にだけ全員がダウトを宣言してくる。

 そんな連中のダウトに小さく愚痴を溢しながらカードを回収して場に出ていたカードを確認する。

 5,A、9,Q、K・・・ネージュ以外正直者が居ねぇ‼

 内心でそんな叫びを上げながらこんな所(サロン)でカードゲームしかやる事の無い事にやきもきしてしまう。

 正直、こんな所でカードゲームなんてやっている場合では無い事は解っているのだが今回の俺達はコハクからの伝言でメイド長から黄昏の国での待機を言い渡されてしまった。

 既に今日の分の鍛錬は終了し、各々やる事を済ませた所で月夜を頭の上に乗せ、サロンで寂しそうに座っているネージュを見かけてその事を放って置けなかった湊瀬さんがトランプ等のカードゲームを持って来て皆で遊ぶ事になった。

 因みにあの告白からコハクには会えておらず。今の俺の稽古は完全にコハクの手から離れてしまい事前に手配してくれていたのかレクセウスさんが見てくれている。

 稽古内容は錬氣という肉体強化の方法で要は漫画なんかでよく見る達人や獣人の人が使うアレである。

 何故今更と思われるかもしれないが言い訳をさせてくれ、実はコハクと稽古していた時にもちょくちょく錬氣の練習はしていたのだ。ただ、コハクの練習法と言うか説明が魔法の時と違ってよく解らなかったのだ。

 そんな経緯が有り、コハクの方からしばらく錬氣の練習はやめようと言われ今日まで至る。

 そしてレクセウスさんに交代してから再び錬氣の練習が始まり、彼の指導の元、練習をしてみたら比較的あっさりと使えるようになった。後にレクセウスさんにその事を相談したら『魔王様に錬氣について訊いても無駄、元から天然で出来る天才は出来ない人間が何処で躓いているのか理解できない』と苦笑して言われた。

 さっきからそんな事を考えて居る所為か俺はまたしても全員からダウトを宣言されいそいそとカードを手元に寄せる。

 そんなゲームを数十回繰り返した後で俄かにサロンの外が騒がしくなってくる。

 何事かと思いサロンから廊下に繋がる扉をひっそりと開くと数十名の男女とメイド長達が廊下を歩く姿が見える。

 しばらく様子を見ていると数十名の男女の中から代表らしい若い男が出て来てメイド長に声を掛けている。

 何を話しているのかを耳を澄まして聞こうとして見たが二人の距離が離れすぎていて会話が全く聞こえてこない。

 危険度は上がるが少しだけ近づいてみようかと思ったその時、脇から魔法を使う声が聞こえて来る。


「《オクタ・イーヴズドゥロプ》」


 そんな声と同時にメイド長達の話し声が聞こえて来た。

 驚いて声のした方を見ると湊瀬さんがイェイと言いたげな顔でブイサインをしている。よく見ると皆近くに集まって来ている。

 てか、俺とコハクが出かけた時に会話を聞いていた方法はこの魔法か・・・

 そんな事を考えながら聞こえて来る声に集中する。


『それで、魔王様はまだ帝国に居るのね?』

『はい、会頭は確かめたい事も有ると言って店を閉めた後に帝城へと向かいました』

『分かりました。貴方も少し休みなさい。恐らく貴方はこれから忙しくなるでしょうからね。私は医療班に話をしてきます』

「はい、そうさせて貰います」


 そんな会話を最後にメイド長は医務室へとスタスタと速足で歩いて行き、男の方は・・・って⁉なぜこっちに来る⁉

 口元に笑みを浮かべながら近づいて来る男に全員で慌ててドアから離れるとガチャっと音が鳴りドアノブが回されドアが開かれ、先程のサロンの中に入って来る。

 こげ茶の長い髪を一つに結び、優し気な顔の長身の男性はサロンの中をサッと見回し俺達を見るとニッと笑みを浮かべながら口を開く。


「ど~も~、勇者の皆さん。初めまして。リコリス商会、グラディア帝国支店の取り纏め役のアルって言います。挨拶が遅くなってすみません。あ、皆さんの事は同期連中やメイド長から聞いているので自己紹介は不要です」


 人好きのしそうな爽やかな笑顔で自分は俺達の事を知っているからと俺達の自己紹介は拒否しながら自分の自己紹介をする青年からは何故か敵意を感じる


「ご丁寧にどうも。俺達の自己紹介はいらないって言ったけど誰が誰だか分かるのか?」


 相手の態度に嫌味を込めてそう言ってやると有ると名乗った男は爽やかな笑顔から一転してフンっとこちらを馬鹿にするような笑みを浮かべると口を開く。

 てか、俺達初対面だよな?何で初対面なのにそんな態度取られないといけないんだよ。


「別に覚える必要は無いでしょう?アンタ等は勇者と言えど結局は戦場で死なれないように扱われている連中だ。そんな連中の事を憶える気にはなれねえし、自分達が厄災討伐に貢献しているなんて思ってほしくねぇんだよ。アンタ等は足手纏いだ。じゃなきゃ、会頭が大変な時にこんな所でカードゲームなんてやってられる訳がねぇ。俺は役目を果たさねぇ奴らは認めねぇし、そんな連中の為に会頭が危険な目に会うのはもっと認められねぇ」


 そこまで言って一度言葉を切るともう一度俺達全員の顔を見回して更に口を開く。


「以上の理由で俺はアンタ等が嫌いだ。分かったら人の話を盗み聞きなんてしてねぇでさっさと自分のやく・・・うげ」


 俺達に向けて攻撃的な言葉を投げかけて来るアル。だが、彼の言葉は最後まで言い終わる事無くゴンっと言う鈍い音と共に彼の長身がゆっくりと地面に向かって倒れて行く。

 アルの後ろには普段、俺達に見せている様な笑顔も何も無い無表情のリューンが右手に凹んだフライパンを持ちながら立ち、俺達に向かって綺麗な礼をしながら口を開く。。


「勇者様方、馬鹿が大変失礼を致しました。この阿保に変わり謝罪させて頂きます。このボケ茄子はこちらで処分いたしますのでどうか寛大なお心でお許しください」


 そう言うとリューンは床で伸びてしまったアルの服の首根っこを掴むと軽々と持ち上げる。


「コハク様が戻るまでもう少々待機をお願い致します。恐らく、コハク様が戻られたら勇者様方にもお声がかかると思います。今のうちにゆっくりと体を御休めください。また、ネージュの相手をしていただき、誠にありがとうございます」


 何時もと違ってとてもいい所の侍女という雰囲気を出したままリューンはもう一度、綺麗な礼をしてドアの向こうに消えて行った。


此処までの読了ありがとうございました。

次回も和登視点になる予定です。

ごゆるりとお待ちいただければ幸いです。

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