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店舗破棄命令

おはようございます。

ブックマーク・評価ポイント・いいね。ありがとうございました。とても励みになります。

また、誤字脱字報告。真にありがとうございました。

第188話投稿させて頂きます。

楽しんで頂けたら幸いです。

「お、会頭。おかえり~。待ち人には会えたのか?」


 商会に戻ると明日の商品を陳列する為に木箱を持った店長のアルが声を掛けてくれる。

 こげ茶の長い髪を邪魔にならない様に一つに結び、優し気な顔の彼は見た目通り優しいらしくうちの女の子達からの人気も高い。因みに怒るとこれまた滅茶苦茶怖い。


「アル、品出し中に悪いけど少し話を聞いてくれる?他の皆も手を止めて集まってくれる」


 私の言葉に仕事をしていた皆が不思議そうな顔で集まって来る。

 この店舗で働いている全員が集まって来た事を確認してから私は全員に聞こえる様に大きな声で話を始める。


「皆聞いてくれ、本日をもってリコリス商会帝国支店は閉店し、撤退する。マニュアルコード4番に従って速やかに撤退準備を進めて欲しい。また、帝国首都店以外の支店にも同様の連絡を行い。転移陣を使って各自黄昏の国への移動をしてくれ。全店撤退後、転移陣はキルプロセスにて私が処理する。話は以上だ」

「会頭。どういう事だ?何が有った?」


 私の言葉に動揺したのか周囲の子達がざわざわと驚いた様子で騒ぎ出す。

 そんな中、アルだけが少しだけ緊張した様子で私に問いかけて来る。


「まだ、わからない。だが、私は後手に回って君達を失うなんていう愚行を犯したくない。アルも皆も今は何も訊かずに従って貰いたい」


 私の解答を聞くとアルは溜息を一つ吐くとそれ以上は何も訊かずに行動を開始してくれる。


「フェー、フュン。各支店に撤退の連絡を頼む。ミー、ネン。二人が責任者になって各資料や物品を整理して片してくれ。皆、焦らず落ち着いて取りこぼしの無い様に行動してくれ」「ハイ‼店長‼」


 アルの指示に従って皆が行動を起こすために解散する。

 皆の行動を見送った後でアルは私の方を見ると口を開く。


「取り敢えず今はもう何も訊かないけど何かわかったら俺達にもちゃんと説明してくれよ。

 それと会頭。俺は一度、家に戻ってお袋を連れて来ても良いか?」

「もちろん。早く行ってハンナさんを連れてきてあげな。此処は私が見ておくから」

「ありがとう。会頭」


 そんな会話の後にアルは急いで家に戻るとお母さんを迎えに行った。

 まぁ、此処に家族が居るのはアルだけだしね・・・

 そんな事を思いながら私は撤退の準備を進めながら皆の監督をする事になった。


「じゃあ、会頭。俺達は黄昏の国に行くけど会頭も無理しないでくれよな」


 急な撤退命令から一晩経ち、全ての店舗で撤退準備が完了し、アル達を転移陣に乗せて黄昏の国に送ろうとするとアルが唐突にそう言って来る。

 思わずアルの顔を見返すと彼は些か呆れた様子で言葉を続ける。


「あのなぁ、アンタには世話になってるし俺だって心配するんだぞ。それに今回は勇者さん達だって連れて来てないんだろ?不測の事態も起きてるみたいだしいつも以上に注意するに越したことないだろ」


 アルの言葉に今更ながらに納得しながら彼の言葉に答える。

 実は今回は狗神君達・・・勇者の皆を連れて来て居ない。

 理由はディランに会ってディランが健在であることを確認しなければこの国が建国された理由も相成って危なくて連れて来られないからだ。


「あぁ、成程、心配してくれてありがとう。気を付けるよ」

「はぁ、そうしてくれ。じゃあ、俺達は先に行っているよ」


 アルの言葉に答えると彼は溜息を一つ吐き、私に笑みを向けるとそれと同時に転移陣が発動し、皆は先に黄昏の国へと

 旅立った。

 彼等が黄昏の国へと転移して少しして他の支部でも全員が移動したのを確認してから私は各転移陣が書かれた石板を取り出すと陣に一つずつ触れ魔力を流しながらキーワードを呟く。


「キルプロセス」


 キーワードを呟くと石板の転移陣が一つずつ黒く染まって行き、最後に今いる店の転移陣の物に手を触れて同じ要領でキーワードを呟く。

 その瞬間、目の前にあった転移陣が黒く染まり音を立てて崩壊していく。

「よし」


 全ての転移陣が自壊した事を確認してから私は何時もの黒コートを着込みベルトに幾つかの魔道具や薬剤を括りつけて外に出る。

 ふと、こんな時にいつも傍にいてくれた彼等が居ない事に意外にも心細さを感じて急いでその思いを打消す。

 結局、私が意気地なしな所為で狗神君達・・・狗神君とはあの後ずっと顔を合わせていない。

 狗神君達が帰って来た後も私は図書館にある隠し部屋に潜んだまま顔を合わすことはしなかった。


「やっぱり顔ぐらい見ておけばよかったかな・・・」


 無意識のうちにそんな事を呟いた自分に些か驚きつつも建物の扉と門に鍵をかけ、これから起こるであろう事に多少の緊張をしながら帝国の城へと向かって歩き始めた。

此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ちいただければ幸いです。

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