どうだった?
おはようございます。
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また、誤字脱字報告真にありがとうございました。
第181話投稿させて頂きます。
今回は第三者視点です。楽しんで頂ければ幸いです。
パラパラと本を捲る音が静かな広い空間に静かに響く。
図書館かと思うほど大量の本と本棚がズラッと並び、部屋の床一面に真っ赤な彼岸花が咲き乱れている。
そんな異質な部屋の中心部分の空間には小さなテーブルにティーセットが置いてあり、銀の髪に紫色の瞳の少女が椅子に座り、本を捲っている。
パラパラと本を捲っていた少女は本を捲る手を止めると本棚隙間の一つに目を向けて声を掛ける。
「あ、お帰りなさい。あの子はどうだった?」
そう声を掛けると目を向けていた隙間から黒いコートを身に纏った紫の瞳の少女と同じ容姿をした赤い瞳の少女が姿を現し、口を開く。
「全然駄目ね・・・自分の現状を知っているのかそれとも無視しているのか分からないけどあれじゃあ今回も駄目そうよ・・・」
些か疲れた様子でそう言いながら紫の瞳の少女の方に歩いて行き、気怠そうに空いている席に座る。
そんな赤い瞳の少女の様子にクスクスと笑いながら本を置き紫の瞳の少女はティーポットからお茶を入れ赤い瞳の少女の前に置くと面白そうに口を開く。
「その割には手古摺った上に負けてとても疲れているように見えるけど?」
紫の瞳の少女の言葉に赤い瞳の少女は入れて貰った紅茶に口を付け、喉を潤してからバツが悪そうに紫の瞳の少女の言葉を否定する。
「私は別に負けてないわ。手古摺ったというより驚いただけだし、疲れているのだって300年振りに受肉したんだもの久しぶりの感覚で戸惑っているだけよ」
「あらら、お婆ちゃんなのかな?」
紫の瞳の少女が笑いながらそう言うと赤い瞳の少女はその言葉に少しだけ膨れ、カップを持ちながら顔を背けて紫の瞳の少女に言い返す
「私がお婆ちゃんなら貴女は化石じゃない」
「アハハハ、しばくぞ?」
自分でも渾身の言い返しが出来たと思っていたら相手は思っていた以上に気にしていたらしく予想していたよりもガチ目なドスの効いた声で返事を返されて少しだけ後悔してしまう。
よく見ると笑顔なのに目が全然笑っていない・・・。そもそもが先にそんな話題を提供して来たのはそっちなのだがその事を指摘すると後が怖いので赤い瞳の少女はそんな言葉をぐっと飲み込み急いで話題を変える。
「そう言えばほんとうにあの子をあの子と戦わせるつもりなのかしら?今のあの子だと死んじゃうかもしれないわよ?折角、貴女と同じ色に生まれたのにまずいんじゃないのかしら?」
「む、話を逸らしたね。まぁ、いいや。もちろん。あの子には彼女と戦って貰うよ。それに此処に来る為に必要な工程だからね」
一瞬、ムッと顔をしたが彼女の中では化石と言われた事は大して重大な事ではないらしくすぐに提供した話題に答えてくれる。
赤い瞳の少女は、内心でホッとしながら紅茶を一口啜り、紫の瞳の少女の言葉に更に質問を返す。
「そう、それよ。貴女はあの子が此処に来る事を確信しているみたいだけど本当に来るの?」
「来るよ。そういう運命だもん」
赤い瞳の少女の言葉に紫の瞳の少女は微笑を浮かべたまま膝の上に乗せているボロボロの本を撫でながら断言する。
赤い瞳の少女はその言葉を聞き、フーっと息を長く吐くと席を立ちながら紫の瞳の少女に告げる。
「貴女がそう言うならまぁ良いわ。あの子が此処に来るのなら今度は私が勝つだけだもの」
「気にしてるんじゃん」
「五月蠅いわね・・・じゃあ、私はもう休むわ。またね」
紫の瞳の少女に仕返しの様に揶揄われ、赤い瞳の少女はツンとそっぽを向きながら休む旨を伝えて本棚の間に消えて行く。
一人残された紫の瞳の少女はそんな彼女の後姿を見ながら声を掛ける。
「お休みなさい。アイシャ。その時が来たらまたよろしくね」
その一言を告げると少女はカップを手に取り一口お茶を飲んでから再び本を開き、辺りにはまたパラパラとページを捲る音だけが静かに響いているのだった。
此処までの読了ありがとうございました。
次回はコハクの視点に戻ります。ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




