理不尽な請求
こんばんは、第18話投稿させていただきます。
楽しんでいただけたら幸いです。
「は?」
渡された羊皮紙を見て思わずそんな間抜けな声が出てしまった。
以下が羊皮紙の内容である。
請求書
コハク・リステナ様
ポーション代・・・・・・・・金貨1枚
魔力回復用エーテル薬代・・・金貨1枚
雑費・・・・・・・・・・・・金貨20枚
真心・・・・・・・・・・・・PRICELESS
計 金貨22枚
以上の金額を請求いたします
「ちょ!?なんなんですか、これ!?」
「見ての通り請求…」
「そこじゃないですよ‼この雑費って書いてある物の金額について聞いてるんですよ‼」
請求書ですと言おうとした先生の言葉を遮り、一気に本題の話をする。
私に使われた薬の代金だという事は分かる。おそらく珍しい薬だろうから金貨2枚は妥当なのだろうと思う。
問題なのはその下の雑費と書かれている物の方だよ!何で雑費が薬より高いんだよ‼おかしいでしょ‼
「御覧の通り雑費ですよ。一体私がどのくらい森の中を走ったと思っているんですか?楽しくなる一歩手前でしたよ。それらにたいする雑費です。」
楽しくなる一歩手前だったのにこの金額なの!?明らかに不当な請求でしょ‼
「ちなみに貴方が払わないのなら御両親にこの請求書をお渡しすることになります。明かに不正な請求でも貴方の御両親なら払ってしまうかもしれませんねぇ~」
私が口を開く前にそんな脅しを言って来た。
この人本当に教師か!?一番先生をやっちゃいけないタイプの人間じゃないか!?
「しかし、今ならこの借金が全て帳消しになるプランが有ります。」
にこやかに笑いながらポーチから小さな小箱を取り出し私に渡してくる。
小箱を開いてみると中には七つの魔石の嵌った徽章が入っていた。
七つの魔石が嵌っている徽章がもう用意されているという事は最初から勝負は決まっていたという事か・・・
「うちの学校に入って無事に卒業出来たらこの借金は無かったことにします。どうですか?あなたにとって悪い話ではないと思いますけど。」
そこまで言い終えて私に答えを求めてくる・・・覚悟を決めるか…
「はぁ~、要するに先生に助けられた時点で私が学校に入る運命は決まっていたわけですね・・・親に迷惑もかけられませんし、非常に不愉快かつ頭に来ますが分かりました。学校への入学の件御受けさせていただきます。」
いつか必ず復讐してやる・・・
地味に復讐を誓う相手が増えてしまった・・・
「それは良かった。渡したお金は入学の支度にでも使ってください。」
「だだし、一つお願いが有ります」
満面の笑みを浮かべる先生に向かって一つお願いをすることにした。このまま入学してたまるか!
「お願いとは?」
「さっき言った通り人を殺す為の魔法を創るなんてごめんです。それらの事を強要しないと約束してください。」
「良いですよ。」
「へ?」
意外にもあっさりと条件をのまれてしまい間抜けな声が出てしまう。さっきあんなに魔法を創る才能がどうのこうの言っていたのに・・・
「そのお願い、了解しました。私が責任を持ってそんなことはさせません。さっき貴方と話したときに貴方の気持ちは分かりましたし、そんな事をさせるのが学校ではありませんしね。」
ビックリするくらい私の気持ちを汲んでくれていたようだ。以外にも教師らしいことを言っているのが腹立つ。
「じゃあ、なんでこんな手を使ってまで入学させようとしたんですか?」
「だって、貴方の目標はこの村で長閑に暮らして老衰で死ぬ事なんですよね?それは自分の可能性を自分で潰してしまっているんですよ?そんなの勿体無いじゃないですか、貴方は何にでもなれるし、どんな事をやっても良いんです。老衰で死ぬなんて事は少し外の世界を見て見聞を広めてからでも良いのではないかと思ってしまったんですよ。大きな理由はそんなところですかねぇ」
くそ・・・地味に良い回答が返ってきた。でもあえて言わせてもらおう。
うっせ‼今さら優しい先生風にものを言うな‼
「なら最初からそう言えばいいのに・・・」
「さて、貴方が入学してくれるのなら直属の師は私という事になります。今のうちに聞いておきたいことは有りますか?」
やっぱりこの人が直属の師匠になるのね・・・まぁ、本にはいつもお世話になっていたしこの人なら色々なことが分かるかもしれない手始めに今まで疑問だった事を聞いてみよう。
「じゃあ、お言葉に甘えて最初の質問ですけど、なぜ、この世界は魔法を使っているのに攻撃魔法や肉体強化魔法がそんなに発達していないのですか?」
この世界は魔法を使って生活などをしているのに攻撃系の魔法に関しては極端に発達していない事がずっと疑問だったのだ。
魔法国家と言われているこの国でも攻撃系の魔法に関する書物等はあまり見かけないし、見つけたとしても弱い魔法に毛の生えた程度の物しか見たことが無い。
そんな疑問を聞いてみると先生は物凄く嬉しそうな顔をしている。
「あぁ、本当にこの出会いは何て素晴らしい刺激を私に与えてくれるのでしょうか。私は今日以上に神に感謝したことは有りません。少し待ってください。この感動がもう少し収まったらお答えします。」
私は、この出会いをもたらしたあの阿保女神を一生恨み続ける勢いだよ‼
そんな事を考えていると感動が収まったのか先程の質問に答えてくれた。
「さて、貴方の質問に答えるとしましょう。質問は、なぜ、攻撃系の魔法が発達していないかでしたね。非常に素晴らしい質問です。正確に言うと発達していないのでは無く、数百年前ほど前から途絶えてしまっているというのが正解でしょう。途絶えてしまった理由は色々ありますが、それらの魔法を使っていたり、守っていた人達が不審な死に方をしていたり、魔法の記されていた書物が大量に燃えてしまった等が有ったみたいですね。そういうことが繰り返されていく内に魔法の中からその手の攻撃的な物がどんどん衰退してしまったのです。」
おぉ!すごくわかりやすく説明してくれた。腐っても先生だね。
「じゃあ、次の質問です。」
私と先生の質疑応答はこんな感じて夜になるまで続いてしまった。
色々腑に落ちないけどとりあえず両親に学校に行くことになったことを話さないとなぁ…
今回で村でのお話は終わりました。
次回はまた別人の視点でのお話にしようと思い出す
主人公は学校編に入ります。




