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私対私?・1

おはようございます。

ブックマーク・評価ポイント・いいね。ありがとうございました。とても励みになります。

第178話投稿させて頂きます。

楽しんで頂ければ幸いです

 バシャバシャと音を鳴らしながら下に溜まった海水を蹴っているとは思えない速さで私に向かって来た彼女は走って来る勢いそのままに左手で《オカミノカミ》を振るい私に向かって切り掛かって来る。

 ギリギリの所で何とか《カグツチ》を抜き、《オカミノカミ》を受け止めると周囲にガキンと硬質な音が鳴り響く。


「へぇ、攻撃を受け止められるぐらいには戦い方を憶えているんだ?」


 同じ声のはずなのに私より些か艶やかに聞える声でそう言いながら《オカミノカミ》をグッと押し込んでくる彼女に私は少しだけ苦しい表情をしながら問いかける。


「貴女は一体何者だ?」


 その問いかけに彼女はふっと笑みを浮かべると思いっ切り剣を弾かれ体勢を崩される。

 直ぐに立て直し追撃に備えようとすると彼女はクルリと空中で一回転し、私から距離を取って剣を握る左手を見ながら何かを呟く。


「右目が見えなくて左腕は自由に動かない。更に厄介な呪い持ち・・・良く生きているわね・・・挙句の果てに敵に状況を聞き出す始末か・・・あと、左手で剣を振るのは余り得策ではないわね・・・」


 そう言って《オカミノカミ》を左手から右手に持ち換えるとゆっくりと私の方を向き、私とは違う()()()()()で私を見据えながら口を開く。

 ああ、なるほど・・・鏡を見ていた時に抱いた違和感の正体はこれか・・・

 そんな場違いな事を考えながら彼女の言葉に耳を傾ける。


「ああ、ごめんなさいね。この体がどれぐらい動くのか少しだけ確認したかったの。それで私が何者か?だったかしら?それは貴女が一番よく知っているでしょ?」

「私が知っている?」


 彼女の言葉に顔を顰めながら聞き返すと彼女はしょうがないなぁっと言う様に肩を竦めると言葉を続ける。


「私は一応、貴女の一部って事よ。まぁ、分からなくても良いわ。だって直ぐに貴女が私になるからね‼」



 今一、理解できない事を言い彼女は再び地を蹴り一息に私の元に来ると再び《オカミノカミ》で切り掛かって来る。

 ギリギリの所で再びその攻撃を防ぐと彼女は楽しそうな顔で口を開く。

 くそ‼同じ剣術なのに相手の方が鋭くて速い・・・

 こっちが必死で相手の攻撃を防いでいると言うのに相手は余裕の表情で口を開く。


「うん、やっぱりちゃんと反応出来るのね。でも、残念。隙だらけな上に甘いわ」


 そう言うと腹部を蹴られまた後ろに吹き飛ばされるが相手は後ろに下がる事は無く今度は連続で剣を振るって来る。

 何とか全ての斬撃を凌ぐと再び鍔迫り合いに持ち込まれ声を掛けて来る。


「う~ん。連撃にもしっかり対応できるかぁ・・・さて、調べる事は大体終わったし、もう良いかな」


 鍔迫り合いの状態から今度は空いている左手を私の顔の前に伸ばして来る。

 伸ばされた左腕は手首から先が何処か別の空間に行ってしまったかの様に消え引き抜いた時にはその手には薄い水色の長剣(クラミツハ)が握られている


「なに⁉」


 私が驚きの声を上げると彼女は心底楽しそうに笑みを浮かべながら説明を始める。


「別に驚く事ではないでしょう?鏡から出て来たんだもの貴女と私が同じ者だとしても不思議ではないでしょう?」


 そう言い、再び私と距離を取ると《クラミツハ》を繁々と眺めてまた口を開く。


「う~ん。貴女、この子の使い方が上手くないのね。正確に言うと知らないのかしら?貴女、この子を使うのにただ血を与えているだけなのね?使い方を教えてあげる。よく見て居なさい?」


 散々、私の事をぼろくそに貶してくれてから彼女はニコリと微笑むと《クラミツハ》の能力を使う為のワードを口にする。


「啜りなさい《クラミツハ》」


 ワードと共に《クラミツハ》の柄から見慣れた棘が飛び出し、彼女の手を貫通してその血を啜りだし、薄い青色の刀身に少しずつ赤色が混ざって行く。

 徐々に赤く染まっている刀身を見ていると《クラミツハ》の刀身はいつも能力を使っている時になる血の色では無く薄い紫色に変化する

 何時もと違う《クラミツハ》に驚き、警戒を強めていると私の様子に彼女は楽しそうに《クラミツハ》の刀身を私に向けて来て口を開く。


「うふふふ、貴女、本当にこの子達の事を何も知らないのね?」


 そう言った彼女の手に握られている《クラミツハ》から一滴の赤い雫が落ち、それと同時に足元の水がまるで意思でも持ったかの様に動き出し、その形を槍のような形状へと変化させ、私に向かって襲い掛かる。

 今までに見た事の無い《クラミツハ》の能力に驚き混乱しながら槍を避け、反撃のチャンスを窺っていると水の槍の間を縫って《オカミノカミ》と《クラミツハ》を構えながら彼女が走って近づいて来て《クラミツハ》で切り掛かって来る。

 ギリギリの所で後ろに飛び、《クラミツハ》での斬撃を避けるがコートの裾が当たり、すっぱりと断ち切られる。


「‼」


 能力の発動中では切れるはずの無い防具(コート)が断ち切られさらに混乱していると相手は笑みを崩さずに喋り始める。

 くそ・・・私の顔で戦闘中にニコニコするな‼戦闘を楽しんでいるみたいで腹立たしい‼


「驚いた?これがこの子の本来の能力よ。ちゃんと使えば切れ味が落ちる事も無いし、貧血になる事も無く。大量の水が操れる。貴女は、ほとんど全ての贈り物を使えるけどただそれだけだものね。駄目よ?自分の使っている武器ぐらいちゃんと使いこなしてあげないと・・・」


 そう言うと再び水の槍を展開させながら言葉を続ける。


「すぐに死んじゃうわよ?」


 笑顔と共に《クラミツハ》を振ると待機していた全ての槍が私の命を刈り取る為に迫って来た。


此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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