泡沫の魔境
おはようございます。
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第177話投稿させて頂きます。
前半は和登視点、☆以降の後半はコハク視点です。
楽しんで頂ければ幸いです
「ふう、何とかなったか?」
気を失っている貧相な装備の冒険者を縄で縛りながら隣で他の場所を担当していレヴィさん達と連絡を取っていた乾に声を掛けると丁度通信が終わったのか他の場所の経過を教えてくれる。
「ああ、他の場所も終わったみたいだ。幸い、どこも大きな騒ぎにはならないで捕まえることが出来たみたいだ。これから尋問するから俺達が捕まえた奴等を騎士団屯所に連れてきて欲しいらしい」
縛られている男を睨みながらそう言う乾は気絶している男達から荷車に放り込んでいく。
乾と二人で黙々と作業をしているとこのパーティのリーダー各の男が目を覚ます。
「う・・・くそ、一体、何なんだよ・・・テメェらは・・・」
憎々しげに此方を見る男の方を向き、声を掛ける。
「俺達が何なのかはアンタには関係ないよ。アンタ等はこれから嫉妬の国の騎士団で取り調べを受ける事になる。そこで知っていることを洗いざらい吐いて適切な処分を受けろ」
男に向けてそう告げると俺の言った事に男はニヤリと笑みを浮かべながら口を開く。
「へっ、俺達に何かを問質しても無駄だぜ。俺達は依頼されて暴れようとしただけだ。詳細なんか知ったこっちゃねぇ。暴れようとしたのもテメェらに邪魔されて実質無実だ。分かったらさっさと縄を解けよ」
余裕の表情で此方に憎まれ口を叩いてくる男に担いでいた別の男を荷車に放り投げると近くに寄り男の胸ぐらを掴んで低い声で脅す。
「うるさいな。お前らが捨て駒な事ぐらい知ってるよ。でもな、ひょっとすると騎士団の人達はそんなこと知らないだろうからきっと酷い拷問をされるんだろうなぁ・・・」
当然騎士団の人達もこいつ等が捨て駒であろうことは説明されている。だが、俺の言葉に男は顔を引きつらせながら反論する。
「てめ・・・何も罪を犯していない俺達に手を出したら冒険者ギルドだって黙ってねぇぞ‼」
「はぁ?なんで冒険者ギルドはお前達が嫉妬の国に捕まっているって知ってるんだ?だってお前等、不法入国だろ?嫉妬の国がどんな尋問をするか知らないけどお前等は誰にも気づかれずに消えるんだ。一体誰が気付くんだ?さぁ、話はお終いだ。此処に来た事を後悔しながら死んで行け」
まだ何か言おうとする男を無理矢理荷車に放り込み丁度来た騎士の人に屯所まで運んでもらう。
徐々に遠ざかる荷車を見送っていると乾がぼそりと俺に語り掛けて来る。
「おお・・・怖。そんな脅しが出来るんならお前に群がる女連中も何とか出るんじゃないか?」
「昨日の邪魔をされて俺だって頭に来ているんだよ。それに連中がこの程度で引いてくれたら苦労しないだろ・・・全く、何で厄介な奴らに好かれているんだよ・・・本命は地味に望み薄なのに・・・」
乾の方を睨みつつ答え、現状の自分についてつい愚痴をこぼすと乾は、今度は可哀そうな物を見る様な視線で言葉を続ける。
「昨日のデートでも結局告白できなかったのはお前だけだもんなぁ・・・このヘタレめ」
乾の言葉に何も返せずに空を仰ぐ。
・・・コハクが戻ってきたら機を見つけて今度こそちゃんと言おう。
密かにそう決意をしてからまだ何か言いたそうな乾を連れてレヴィさん達の待つ別荘に続く道を歩いた。
☆
真っ暗な中でピチョンピチョンと水の滴る音が聞こえて来てゆっくりと意識が覚醒して行く。
思いっ切り咳き込みたい衝動を我慢して目を閉じたまま体に異常がない事を確認し、周囲の音に耳を傾ける。
少しの間、水滴が落ちる音だけしかしない事を確認して、周囲が安全そうである事を確信してから目を開きゆっくりと体を起こしてから激しく咳き込む。
一通り咳き込み呼吸を整えた後、今度は目で見て周囲の確認をする。周囲は薄暗いが私の眼は素で暗視のスキルを持っているので何も問題は無い。
周囲を見て周ると何処かの部屋らしく天井には一か所、穴が開いていてそこから水が滴っており、部屋の中心には鏡が一つ置かれておりそれ以外には何も無かった。どうやら遺跡の中の隠し部屋に流されてきたらしい。
仮面は海水によって流されてしまったみたいだが幸い、二本の剣はつよくにぎりしめて居た為か近くに転がっていた。《カグツチ》と《オカミノカミ》を拾い上げて鞘に戻してから出口を探すために部屋の中を探索する為に立ち上がる。
二本共、後でしっかりと手入れをしないと・・・それにしても、服が濡れて気持ちが悪い・・・
そんな事を考えながらフードを降ろして部屋の探索を開始する。
数十分程部屋を探索したが特に出る為の手篝は無く私は中央に置いてある鏡に目を向ける。
———あと調べていないのは鏡だけだけど・・・正直、気乗りがしない。大体こういう所にポツンとある鏡なんて碌な物じゃない・・・
そんな事を内心でボヤキながら仕方がなく鏡に近づいて行く。
鏡を覗きむとそこには何時もの黒コートだが見事に濡れ鼠になっている自分が少しだけ間抜けに此方を覗いている。
「?」
鏡に映った自分に多少の違和感が有るのだが具体的に何処が可笑しいというのは分からない。仕方が無いので私は、今度は眼を使って鏡を調べてみる。
☆
名称:泡沫の魔境
スキル: ?
特性:?
クラス:レジェンド
☆
「‼」
スキルを使って確認した鏡の表記に危機感を憶えて慌てて距離を取ろうとすると唐突に鏡に映った私がこちら側に乗り出してきて手を伸ばし、後ろに下がる私に合わせて腰から《オカミノカミ》を引き抜き、先程まで私が立って居た場所に現れる。
距離を取り、警戒しながら《カグツチ》を抜くと彼女が私そっくり顔を歪めながらゆっくりと口を開く。
「なにこの体のコンディション。最悪じゃないの」
そう言った彼女は確かめる様に私から奪った《オカミノカミ》を一振りすると私に向かって一気に駆けだしてきた。
此処までの読了ありがとうございました。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




