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冥蛇剣《オロチ》

おはようございます。

ブックマーク・評価ポイント・いいね。ありがとうございました。とても励みになります。

第176話投稿させて頂きます。

楽しんで頂ければ幸いです

「ふぅ」


 相手を縛り上げ完全に無力化した事を確認してから私はホッと息を吐く。

 それにしても大した戦闘でもなかったのに今まで戦闘が終わってその場でホッと息を吐く事なんて今まで有ったかな・・・?

 まぁ、少し前までと体の調子も違うし、ちょっとした事でもホッとしてしまうのはしょうがない事かな?

 今までの自分とは違った心境や行動に疑問を抱きつつも少し前よりも体のあちこちが動き難くなっている事や今回から左目が見えなくなっている事が起因だろうと結論付けてフェルとオウルが消えた方をそれぞれ確認する。

 二人共敵を縄で縛って連れてきている所を見ると特に苦戦せずに戦闘を終えたらしい。

 敢えておかしな点を挙げるとすればフェルは何で上着を脱いでいるんだろうか?

 そんなどっちでも良い事を考えながらフェルとオウルが此方に来るのを待っているとオウルが引き摺っている柏葉が何かを騒いでいたが気を失っている林葉を見た途端に驚きの声を上げる。


「ちょっと‼丁寧に扱ってよ‼引き摺るんじゃなくて抱き上げるとか色々あんでしょ・・・って、ゆうっち‼けいっち‼嘘⁉二人も負けちゃったの⁉」


 林葉と大方は機を失っていて柏葉の声には反応しない。そんな二人の様子を見て何かを勘違いしたのか私とフェルを睨み言葉を続ける。


「この人殺し‼あんた達何したか分かってんのかよ‼私らをこんな虫みたいに殺しやがって‼お前等も私達をこの世界に呼び出した連中も絶対に許さねぇからな‼」


 ギャアギャアと騒ぐ女に私は心底うんざりしながら説明の為に口を開く。


「黙れ。ギャアギャアと騒ぐ前に彼等をよく見て見ろ。大体、戦いを望んだのはお前達だろ。負けたからと言って騒ぐな。この男は、手足は折れているだろうが命が残っただけでも有難いと思え」


 仮面の下で睨みながらそう言うと女はギャアギャアと騒ぐのを止め今度は声を上げて泣き出した。

 その様子を見てフェルが少しだけ呆れた様に私に声を掛けて来る。


「おいおい。トワ、少しだけ落ち着け?こいつ等だって何等かの一方的な契約縛られて此処にいるんだろ?もうちょっと情状酌量の余地が有っても良いんじゃないか?」


 フェルの言葉を私は些か心外に感じながら彼の顔を見ながら問いかける。


「シルヴ、僕が彼等の状態も知らないでこんな態度を取ると本気で思っているのか?」

「ま、そうだな。無理な契約に縛られてる奴にお前は此処までエグイ事はしねぇからな・・・で?やっぱりこいつ等は契約に縛られてないんだな?」

「ああ、彼等は自分達の意思で僕達と戦ったよ」


 私の言葉にフェルは気を失っている大方を林葉の隣に降ろし服装を整えながら連中の状態の確認等をして来る。


「それで?こいつ等の処分はどうする?嫉妬の国に引き渡せば確実に処刑になるぞ?」


 柏葉を少しだけ乱暴に放り投げて林葉の隣に置きながらオウルが私に問いかけて来る。

 因みに柏葉は置かれた状況が分かっているのか知らないが相変わらずオウルの扱いに文句を言ってギャアギャアと騒いでいる。


「その件だけどレヴィさんに相談してスキルやレベルによる能力を封じた後に元の世界に戻せるまで黄昏の国(うち)で管理出来ないか相談してみようと思ってるよ」


 私の言葉にフェル達もその方が良いだろうと思ったのか何も言わずに頷くと撤収の準備を始める。

 一通りの撤収作業を終え、三人組を運ぼうと近づいた所で不意に左側に集中させている探知系のスキルが反応し、私は急いで横に飛ぶ。

 ガキンと飛んだ場所から音が鳴り、先程まで居た場所を見て見ると幾つかの刀身がワイヤーによって繋がった刃が先程まで私の居た場所に突き刺さっている。


「蛇腹剣⁉」


 驚きながら思考を戦闘モードに切り替えていると蛇腹剣は刺さった場所からまるで意思を持っているかのようにするりと抜けると奥に続く通路に向けて消えて行く。

 蛇腹剣の刀身が消えるのと同時に通路から聞き覚えの有る声が聞こえて来る。


「う~ん♪やっぱりおかしいなぁ~♪なんで未だにこの攻撃が避けられるぐらい動けるんだろう?」


 何を不思議に思っているのか分からないが心底不思議と言った様子だが明るい声でそんな事を言いながらコツコツと石畳を鳴らしながらエリス・ケールがその姿を現す。


「はろろ~♪トワちゃんと各魔王の皆さんこんにちは~♪うちの子達がお世話になったね~♪」

「たいちょ~・・・やっと来てくれぇたぁ~」


 片手に剣を持ちながら私達に軽く挨拶をして来るエリス・ケールに柏葉が情けない声を出して反応する。

 フェルとオウルも私から話を聞いていた本人が目の前に現れ武器を構えて警戒する姿勢を取りだす。


「柏葉ちゃん♪待たせてごめんねぇ~♪目的の物も手に入れたからお暇しようか~♪」


 そう言いながらエリス・ケールは右手に持つ濃い緑色の刀身の剣を持ち上げてアピールをする。

 持ち上げられた剣を私は即座に眼を使って確認する。


 ☆


 名称:冥蛇剣オロチ

 刀匠:unknown

 スキル:刀身分離、薬物ストック

 特性:縦横無尽

 クラス:レジェンド


 ☆


 予想通りの武器の表記に内心で舌打ちをしながらエリス・ケールに向かって口を開く。


「その剣、この遺跡に隠されていたものだな・・・林葉達を囮に使ったのか?」


 私の問いかけに楽しそうに笑いながら答える。


「ううん♪別に意図的に囮にしたわけじゃないよ♪僕の方に来ることも予想していたし、君達が彼等の相手をしたのはたまたまだよ♪」


 エリス・ケールは楽しそうにそう言うとゆったりとした動作で《オロチ》を持ち上げると言葉を続ける。


「まぁ、彼等(物語の端役)が君達魔王を僕が《オロチ》を手に入れるまで足止めできるとは思ってなかったけどね♪さて♪一応、彼等の雇い主との約束だからね♪生きているみたいだし♪返してもらうよ♪」


 そう言って《オロチ》を軽く振ると私やフェル達の間を縫って柏葉達の元に到達し、刀身を変形させて彼女等を確保すると簡単にエリス・ケールの元まで運んでしまう。


「逃がすかぁ‼」


 一瞬にして捕獲していた三人を奪取され、慌てて一番距離の近かった私が剣を構えて走りだすがエリス・ケールは懐に手を入れると何かの結晶を取り出して余裕の表情で私達に声を掛けて来る。



「それじゃあ♪僕達はお暇させて貰うね♪あ、君達も早くここから逃げた方が良いよ♪この剣を取った際に何かしらのトラップが発動したみたいでね♪もうすぐここも水没するよ♪じゃあ、生きて居たらまた会おう♪チャオ♪」


 そう言ったエリス・ケールにギリギリで切り掛かるが《カグツチ》は彼女の首をスッとすり抜け空を切りエリス・ケール達の姿がこの場から消える。その直後、彼女の言葉通りに先程まで彼女が立って居た後ろから唐突に大量の海水が流れ込んできて私はその海流に飲まれてしまう。

 流されながら死に物狂いで海面に顔を出しフェルとオウルに向けて声を掛ける。


「フェル‼オウル‼先に外に出て皆と合流して‼私は後で追いつく」


 フェル達の返事を聞く前に私は来た方向とは逆の方にどんどんと流されて行き、遺跡の奥へ奥へと流されてしまった。


此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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