うん、まぁ、海の中なのは知ってた
おはようございます。
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第171話投稿させて頂きます。
楽しんで頂ければ幸いです。
「ティア、大丈夫?怪我は無い?」
三人組の姿が見えなくなってすぐにティアに怪我が無いかを確認するとティアは平常運転の無表情でしかし、彼女の特徴である猫耳をピコピコ動かしながら口を開く。
「はい、わたくしも他の子達も怪我一つ有りません。会頭。ありがとうございました」
ペコリと綺麗なお辞儀をするティアにホッとしながら先程の連中の事を訊こうとしていると後ろから狗神君の声が聞こえて来る。
「コハク‼大丈夫か⁉」
どうやら人垣をかき分けて私達の顔を見るとホッとした様な顔をして駆け寄って来る。
そう言えば彼の手を離して駈け出したのだった・・・心配させてしまった・・・
今更ながら彼を置いて行って走りだした事を思い出し、些か申し訳なく思いながら口を開く。
「狗神君、私達は大丈夫だよ。置いて行ってごめんね」
「緊急事態にそんな事を気にしてる暇ないだろ?気にしないで大丈夫だよ。二人に怪我がなくて良かった」
「そう言ってくれて良かったよ・・・心配してくれてありがとう」
「・・・会頭が男性と一緒に来られた・・・明日は嵐か雪でしょうか・・・」
狗神君の言葉に内心ほっとしながらお礼を言っていると後の方でティアが驚いた様にポツリとそう呟く。
なんだよ・・・私が男の子と一緒にいたら天変地異レベルだって言うのかよ・・・まぁ、そう言われる自覚は有るんだけど・・・
そんな事を考えながら取り敢えず周囲に集まった人達に騒動の謝罪とお詫びの割引券等を渡し、私達は奥の応接室へと移動して話をする事にした。
少しして応接室に三人で移動し、ティアがお茶を入れてくれたのにお礼を言ってから座る様に促す。
「じゃあ、彼等の事を話して貰っても良いかな?」
椅子に座りお茶を飲んで一息ついた所でティアに先程の連中との経緯を訊く。
まぁ、大体胡散臭い男が言っていた事と一緒だろうけど・・・
「はい。でも、大体はあの林葉という男が言っていた通りなのですが・・・嫉妬の国に有る遺跡の中を探索したいから遺跡ダンジョンの案内役を会頭に依頼したいとの話でした。この国は遺跡の保護の為に中の探索や研究を禁止しており。また会頭今現在この場に居ないとお伝えしたのですが「大丈夫だ」の一点張りの上にしつこく会頭を出せとしか言わず終いには会頭が出て来て下さったときの有様になってしまいました。会頭が現れるまでわたくし達は何度所属を訊いても答えなかったので彼等が帝国に与している者とは存じ上げませんでした」
一通りティアの話を聞き、私は溜息を一つ吐き、ソファーの背もたれに背を預け、狗神君に声を掛ける。
「狗神君、本当に申し訳ないのだけど街の散策を終わりにしても良いかな?」
確認を取る様な問いをしながら私は通信機で全員に連絡を取る準備を始める。
「もちろんだ。街の散策については気にしないでくれ」
「ありがとう。・・・・つながった。皆急いで拠点に戻って来てくれる?至急、話さなければいけない事が出来た」
狗神君にお礼を言ったのと同時に皆に通信が繋がったので今は用件を伝えずに急いで拠点に戻って来て貰う様に伝えて通信を切る。
「狗神君、私達も拠点に戻ろう。ティア、私達は泊っているレヴィさんの別荘に戻るけどリコリス商会は一応通常通り営業。ただし、帝国に関係ありそうな人間やさっきの連中の様な奴らが来た場合はマニュアルの第3項に基づいて排除する事を許可する」
「解った」
「畏まりました」
ソファーから立ち上がり狗神君に声を掛け、ティアに今後の対応を伝えてから出口に向かう。
「あ、会頭。お帰りになる前にこれを」
外に出るという少し前にティアが小箱を取り出し私に渡して来る。
「会頭当ての荷物です。これを受け取りに此方にいらしたのでしょ?」
「ありがとう。すっかり忘れてたよ」
ティアに言われて本来此処に来た理由を思い出し、お礼を言って箱を受け取ってから私達はレヴィさんの別荘に急いで戻る事にした。
「はぁー、帝国って奴は本当に碌な事をしねぇ~」
数分後、戻って来た皆に先程の事を話し、いやに機嫌の悪いフェルが大きな溜息を吐きながらそう愚痴る。
「面倒事は確かだが、その者達を遺跡で待ち伏せして全員で叩けば早急に解決できるのではないか?」
フェルの事を宥めながら小父様がそう提案してくるのを今度は私が溜息を吐きながらその案を却下する。
「私もその方が早いと思ったんですが連中他にも仲間がいるみたいでその連中が街で騒ぎを起こしている間に遺跡に潜入する腹積もりの様です。そこで班分けなんですけど遺跡には私、フェル、オウルで向かって他の皆にはその連中の対処をしてほしいんです。人数が多い方が問題に対処がしやすいですしね。レヴィさんは自分の国なので御自分で動きたいと思うんですけど国の皆さんは自国の魔王から直に命令された方が動きやすいと思うんです。貴族も動かせますしね」
眼で見た連中の心の中で考えて居た作戦を話し、班分けを提案するとレヴィさんが声を上げて反論しようとするので先に理由を話し反論を叩き潰す。
その後は特に意見も無く私が提案した班分けで動くことが決定し、私とフェルオウルは遺跡で連中を待ち伏せる準備を始める。
「コハク、少しだけ良いか?」
「なに?」
何時ものコートを着込み準備をしている途中で狗神君が私に声を掛けてくる。
首を傾げ、先を促すと狗神君は言葉を続ける。
「この問題が解決したら少しだけ時間を貰えないか?言いたい事がある」
真剣な様子でそう言う彼に私は頷き返事をする。
「うん、分かった。帰ってきたらゆっくり話そう」
そう言うと狗神君は少しだけ笑って「ありがとう。気を付けて」と言って自分も準備の為に去って行った
数十分後、準備を終えて件の海の底に有る遺跡を前にしてフェルが少しだけ呆れた様に声を掛けて来る。
「で?お前は泳げたんだっけ?」
呆れた様にそう言うフェルの問いに私は海底遺跡を睨みながら小さく溜息を吐く事しか出来なかった。
此処までの読了ありがとうございました。
ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




