異世界人
おはようございます。
ブックマーク・評価ポイント・いいね。ありがとうございました。とても励みになります。
第170話投稿させて頂きます。
楽しんで頂ければ幸いです。
「あー‼もう、うるせぇな‼もう良いからテメェ死んどけ‼」
そう言って粗暴そうな男がティア(男達の対応をしていたうちの大切な従業員)に向かって拳を振り上げたのと同時に私は狗神君と繋いでいた手を離し4人に向けて駆ける。
———しまったな・・・走るのが遅すぎた。ティアを助けるのに間に合わない・・・
駈け出してすぐにそう思い走りながら粗暴そうな男に向かって魔法を放つ。
「《エアロ・バインド》《アース・バインド》」
「何だ⁉」
ティアを殴ろうとしていた男は唐突に手足を拘束され驚いた様な声を上げる。
近くにいる二人も男と一緒に驚いている間に人垣を飛び越えティアと三人の間に降り立ち相手を睨みながら口を開く。
「何者だ?私の大切な仲間に何をしようとしている?」
「・・・会頭⁉」
私の登場に驚いているティアを背に庇いながら声を低くしてそう問うと粗暴そうな男と一緒に居た糸目の胡散臭そうな男がティアの声を聞き、粗暴そうな男を拘束から解放しようとしている動きを止め私の方を向く。
その間に私は眼を使い敵の情報を見る。
☆
種族:人間 名前:大方 圭吾 性別:男 年齢:21 Lv.66 拳Lv.66 魔法Lv.0 状態:健康 特記:異世界からの旅人 所属:グラディア帝国
種族:人間 名前:林葉 勇太 性別:男 年齢:19 Lv.67 剣術Lv.70 魔法Lv.45 状態:健康 特記:異世界からの旅人 所属:グラディア帝国
種族:人間 名前:柏葉 美海 性別:女 年齢:18 Lv.65 剣術Lv.0 魔法Lv.66 状態:健康 特記:異世界からの旅人 所属:グラディア帝国
☆
粗暴そうな男が大方 圭吾で胡散臭そうな男が林葉 勇太、最後に残った女が柏葉 美海か・・・所属国家もそうだけとそれより驚くのは特記事項か・・・所属国家が帝国というだけでも面倒なのに更に異世界からの旅人だと?ディランは一体何をやっているんだ・・・
三人のステータス情報を見て誰にも分からない様に小さく舌打ちする。
相手のステータスを見て居ると胡散臭そうな男・・・林葉 勇太がやっと口を開く。
「ああ、すみません。そんなに殺気を出さないでください。悲しい誤解何です。貴女は銀姫と呼ばれている冒険者ですよね?僕達は貴女に用事が有って来ただけで決して彼女に危害を加えたいわけでは無いのです。僕の名前は林葉 勇太。どうか話を聞いてもらえませんか?」
まるで私の事などいつでも殺せると言う様な態度で余裕たっぷりにそう言う林葉に私はアイテムボックスから《カグツチ》を取り出しながら先を促す。
「ああ、ありがとうございます。君が理性的に判断してくれて助かりますよ。僕達はグラディア帝国に所属している者です。実はこの国に有る遺跡を探索するのに貴女の力を借りたいと思い。此処に来たんです。しかし、貴女が背に庇っている彼女に貴女は此処にいないと言われた上に呼んでくれと言っても取り合ってもらえなかったので仲間である大方君がキレてしまったんですよ。それで今に至ります。此処までは解って貰えましたか?」
あくまでティアに危害を加えようとしたのは事故だという男達を睨んでいる林葉はこちらを馬鹿にした様に溜息を一つ吐き、話を続ける。
「此処までの話しを理解して頂けたなら取り敢えず彼の拘束を解いてもらえませんかね?そうじゃ無いと本題の話に入れない」
呆れた様にそう言う林葉を睨みつつ男の問いかけに答える。
「経緯はどうあれ君達の事は信頼できない。それに私に依頼しようとしている事もこの国は現在遺跡への立ち入りを何人たりとも禁止している。君達の印象が良くてもお断りだ。そこの粗暴な男の拘束は解いてやるからさっさと帝国に帰れ」
大方という粗暴そうな男を解放させてから遺跡への同行を合意させるつもりだったようだが私はそれに応じるつもりが無いので冷たく切り捨てる。
大体にしてこちらは大切な仲間が脅迫された上に楽しい時間を邪魔されているのだ。
挙句の果てに嫉妬の国の法律を破れ?マジでぶちのめしてやろうか?
そんな意味を込めて冷めた目で林葉達を見ていると林葉は何かに耐えかねた様子でプルプルと震え唐突にキレ始める。
「ざっけんなよ‼この糞アマが‼こっちが下出に出て謝罪してやれば良い気に乗りやがって‼俺達が動いてんだ‼言う事聞けや‼」
・・・いや、アンタら謝罪はしてないし、どういう理論で動いてるの?つか、アンタが私達を馬鹿にしていたのは目を使ってなくても丸わかりだったからね?
そんな事を思いながら腰の剣を抜剣して切り掛かってこようとする男を見ていると男達の元に一羽の白い鳥が舞い降りる。
鳥が近くに降り立つと先程まで興奮状態だった林葉がピタリと動きを止めて鳥を凝視する。
その鳥に括りつけられていた手紙を柏葉という女が取り外すと手紙の中を改めて林葉に声を掛ける
「ゆうっち~、隊長から連絡。問題を起こさず早く帰って来いってさ~。隊長が怖いしアタシは帰るよ。逆らってもうボコられたくないし~」
そう言って間延びした声で林葉に声を掛けた柏葉は《エアロ・バインド》と《アース・バインド》に手を振れるとあっさりと粗暴そうな男の拘束を破壊する。
「ちっ、タイミングの悪い隊長ですね。銀姫さん。我々の時間切れなので今回は此処で失礼します。大方君。殴りたい気持ちは分かりますけど行きますよ。流石にあの人に逆らうのは、今は得策じゃありません」
先程までのキレ方が嘘の様に冷静になった林葉は未だに私達に殴り掛かって来そうな粗暴そうな男に声を掛けると出口に向かって歩き出す。
粗暴そうな男と柏葉がその後に続き三人組は迷惑行為と疑問だけを残してこの場から去って行った。
此処までの読了ありがとうございました。
ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




