自分の知識の基を燃やしたくなる瞬間
こんにちは、第17話投稿させていただきます。
楽しんでいただけたら幸いです。
「では、改めて言わせていただきますね。コハクさん。貴方の魔法の才能はとても素晴らしい。七つの属性が使えるだけでなく、新しい魔法を生み出す才能も有る。我が校でその才能をもっと伸ばしてみませんか?」
「大変ありがたいお話なのですが申し訳ありません。お断りさせていただきます。」
「理由を聞かせて頂いてもよろしいですか?」
「まず、第一に私の目標はこの村で長閑に暮らして老衰で死ぬことです。決して偉大な魔法使いになりたいとかそんなことは考えていません。第二に新しい魔法を生み出した際にそれが攻撃系だったときは沢山の軍に広まり戦争で使われ沢山の人間が死ぬ事になる可能性が有ります。私は間接的な大量殺人者にはなりたくないです。」
「そうですか…確かに攻撃魔法を創った場合は、軍にその魔法が伝わり大勢の人間が死ぬ可能性も有りますね。個人的にも非常に残念ですがその様な考えなら仕方が有りませんね。とりあえず諦めるとしましょう。あぁ、そうでした。貴方に渡しておくものが有りました。」
私の考えを聞き、あっさりと引いた先生はポーチから袋を取り出すと私に渡してきた。
カチャっと重そうな音を立てて渡された袋の中には金貨や銀貨が入っていた。
「これは何ですか?」
「見ての通りお金ですよ」
私の質問に先生がキョトンとした顔で返答してくる。
これがお金だってことは知っとるわい!何で渡して来たのかを聞いてるんだよ!
「いえ、これがお金だという事はよく分かっています。なぜ、このお金が私に渡しておくものなんですか?」
「あぁ、そういう事でしたか。それは貴方が狩った熊をギルドに売ったお金ですよ。貴方が狩った物ですから当然貴方に権利が有ると思ったので渡しただけです。」
サラっと何でもない事のように言う先生から目を離し、袋の中の硬貨を見て更に質問を重ねる
「私が狩った熊を売ったものにしては金額が多くないですか?あの破損の仕方でこんな金額になるなんて思えないんですが?」
袋の中には、金貨2枚, 小金貨8枚、銀貨9枚、銅貨4枚、小銅貨3枚が入っている。
この世界のお金は金額が大きい順で金貨、小金貨、銀貨、小銀貨、銅貨、小銅貨となっている。これらを元々の世界で計算するとこんな感じになるのではないかと私は思っている。
金貨が10万円ぐらい、小金貨が1万ぐらい、銀貨が1000円ぐらい、小銀貨が500円ぐらい、銅貨が100円ぐらい、小銅貨が10円ぐらい。
要するに今、私に手渡された袋の中は元々居た世界で299,430円ぐらいになるのではないかと思われる。
結構な大金だし、私はあの熊達を素材目的で殺していたわけではないので売れないような物が多かったはずだ。明らかにこの金額はおかしい。
「別におかしくは有りませんよ。貴方が最後に狩ったイビルベアは綺麗に死んでいましたし、魔石持ちの物が何体かいましたからその分上乗せされたのでしょう。あれは、鉱山から発掘されるか魔物から出るかしか採取できない貴重な物ですしね。」
なるほど、魔石による上乗せ報酬が有ったのか…一応それで納得しておこう。
さて、このお金は全額先生に渡して受け取らないでおこう。先生の取り分もあるし、子供がこんな大金持っていたくないしね。
「ちなみに受け取らないという選択肢は貴方にはありませんよ。私の取り分はもう貰っていますしね。」
爽やかな笑顔で私の言おうとした事に先手を打ってくる。
何この人!?人の考えていることが分かるの!?
「いえ、別に考えていることが分かるわけではないですよ。貴方の顔が受け取らないでおこうと思ってそうな顔をしていたので先に言わせて貰っただけですよ。ちなみに今のも顔色を読んだだけです。」
「そうですか…わかりました。このお金はありがたく頂戴します…」
くそ…この人には何かわからないけど色々負けている気がする…
学校への入学の話も拒否出来たけど気を抜かないでおこう。
「さて、余談ですが貴方は意図せずに大金を手に入れたわけですが一体何に使うつもりですか?」
お金の入った袋を持ってガックリしている私にニコニコしながらそんなことを聞いてくる
そんな事を聞いて何の意味が有るんだろう?
「えっと…それって答えなければいけない事ですか?」
「そうですねぇ~、お金を渡した手前聞いておくのが筋だと思いましてね。差し支えなければお答えして貰えないでしょうか?」
なるほどね…こんな子供にお金を渡した責任として使用用途を明確にしておこうって事かな…。
つか、いきなり渡されて使用用途なんか決まってないよ!
「いきなり渡された物なので詳しい使い道は全然決まっていませんけど、とりあえず街に行ったときに幾つか本を買おうと思います。残りは親に渡すにしてもどうやって手に入れたお金なのかの説明が面倒ですしどこかに隠しておこうと思います。」
正確に言うと自前のアイテムボックスに隠すんだけどね。
「なるほど!!本ですかそれは良い!とても素晴らしい使い道です!!知識は宝ですからね!!」
私の言葉に何やら興奮して先生のテンションが上がっている。
まずい、知識を得るならぜひ学校へ、みたいな空気になるかもしれない…使い道の選択をミスったかな…
「それにしてもこの部屋には結構な本が有りますがすべて同じ著者の物なんですね。」
興奮しながら本棚を眺めていた先生が嬉しそうにそんな話題を振ってきた。
あれ?意外だった、すぐにでも学校へって話になると思ったのに・・・
「えっと…色々な本を立ち読みしてみたんですけど、その著者さん…ゴルデュフィスさんの本が一番わかりやすかったのと魔物の生態や魔法に着いて等幅広い分野で本を出してくれているので自然とその人の本を集めるようになっちゃったんです。」
実は一度この著者さんには会ってみたいなと思っているんだけど、どんな人なのか全然分からないんだよね。
「そんな本を書いている先生の下で勉強してみたいとは思いませんか?」
さっきまでハイテンションだった先生が急に真面目な口調になり静かにそんな事を聞いてきた。
「ゴルデュフィスさんが先生をやっているんですか!?」
先生の言葉に今度は私の方が興奮気味に喰いついてしまった。
やってまった…その手に乗るかと思ったばっかりだったのに…
「ええ、我が校で教師をやっていますよ。」
「どんな人なんですか?」
こうなれば自棄だ。聞きたいこと聞いてやる。
胸に手を当ててにこやかに目の前の先生は口を開いた。
「本のお買い上げありがとうございます。まだ正式に名乗っていませんでしたね。私の正式な名はイクス・ゴルデュフィス・ゲネディストと言います。この本の作者にして魔法学校の教師をしています」
いかん。急激に持っている本を全て燃やしたくなってしまった…
かなりの衝撃に見舞われている私にさらに声を掛けてくる。
「今、入学してくれるのなら私の集めた本や私の書いた本が読み放題のおまけつきです。」
う゛、此処に来てなんて魅力的な提案をしてくるんだ…
でも、此処でこのスカウトの話を受けたら魔王コースまっしぐらな気がする。意志を強く持って断らなければ…
「えっと…大変魅力的なお話ですけど先程の理由も有るのでお断りさせて頂きます」
本当に魅力的な提案だ…まだ心が揺れている…
多少の未練を持ちながら頭を下げるとゴルデュフィスさんはなぜか非常に楽しそうな感じの声音で話してきた。
「そうですか…非常に残念です。まぁ、私もなるべくならこの手を使いたかったのでセカンドプランで行くとしましょう。」
は?何?使いたかったセカンドプランって?普通は使いたく無いじゃないの?
何プレ〇テ2のあるゲームのお父さんみたいな事言っているの?
「いや~、準備したものが無駄にならなくって良かったですよ」
そう言ってゴルデュフィスさんはポーチから一枚の羊皮紙を取り出し私に手渡してきた。
思っていたより過去のお話がだいぶ長くなってしまっています;つД`)
個人的に過去はしっかり描いた方が面白いと思ってしまうタイプなので魔王になるまでまだまだ掛かりますが気長にお付き合いいただけたら幸いです。




