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閑話・兵隊貸してよ

おはようございます。

ブックマーク.評価ポイントありがとうございました。とても励みになります。

第167話投稿させて頂きます。

閑話なのですが☆は視点変更でコハクの視点になり少し本篇になります。

楽しんで頂ければ幸いです

「Broken down♪ Broken down♪」


 豪奢な廊下を金髪の美しい少女が歌を歌いながら楽しそうに歩いている。

 忙しなく人が動いているこの場に相応しくない程陽気に歌を歌う彼女に周囲の人間は驚いた様子も無く自分の仕事をする為に歩いている。


「My fair lady♪」


 廊下に有る扉の中でも一際豪奢な部屋の前で止まると丁度歌も終わり少女はノックも無しに部屋のドアを開く。


「はろろ~ん♪元気~?ちょっと報告とお願いが有るんだ・・・・ウオェ」


 軽い口調で部屋に入りながら声を掛けると部屋と部屋の外との空気の違いに思わず女性らしからぬ声を上げる。

 その声を聞いて甘ったるい香の焚かれている部屋の奥から若い男の声が聞こえて来る。


「ふん、予の私室にノックもせずに入って早々にその様な態度を取るとは相変わらずの様だな。エリス」



 不機嫌そうにそう言う男にエリスはアイテムボックスからガスマスクを取り出し、装着しながら男の様子を気にした様子も無く口を開く。


「いやいや、自分の部屋の空気と外の空気を吸い比べてからモノを言えよ♪どうせまた気に入った女の子を連れ込んでいたんだろうけど終わったら換気ぐらいしろよ♪それ使った後だと普通の人には辛いだろさ♪」

「ふん、予のやる事に口を出す愚か者は此処には居ないわ。師よ。そこのソファーに座ると良い。それで我が剣の師は何か言っていたが何の様なんだ?」


 お互いに軽口を叩きながら男はエリスに椅子を勧めエリスもガスマスクを着けたまま素直に応じて座ると早速本題に入る。


「ああ、そうだった♪単刀直入に言うけど女神の贈り物(君達の探し物)が有りそうな未探索の遺跡を見つけたから君の所の兵隊貸―して♪」



 エリスの言葉に興味が無さそうに聞いていた男は話を聞いた途端に色めき立ち椅子から立ち上がってエリスに詰め寄る。



「本当か‼どこだ⁉何処に贈り物が有る‼」

「まぁまぁ、落ち着きなよ。まだ有るかもしれないってだけだし、場所が嫉妬の国なんだよね♪だから僕一人だとちいっときついんだよね♪で?どうする?兵隊貸してくれる?」


 興奮する男を宥めながらエリスは探し物の場所を告げ再度兵隊の貸し出しを要請すると男は一応の落ち着きを取り戻し、少し考えてから口を開く。


「ふむ、そう言う事なら兵を貸すのは吝かではない。だが、そこまでの道案内をして貰うのと贈り物は余が貰うぞ?それでも良いのなら新しい予の私兵を貸し出そう」

「もちろん♪元々見つけたら君にあげようと思ってたもん♪そうと決まったら顔合わせをしなくちゃね♪」


 明らかに理不尽な要求をさらりと流してエリスは貸し出されるという兵士にを見に席を立つそのエリスに男は少しだけ笑みを浮かべながら口を開く。


「まぁ、待て。我が師よ。連中は後で此処に呼び出す。それよりどうだ?そろそろ予と寝て見るつもりは無いか?」

「あは♪冗談は休み休み言えよ♪君が僕と寝ようなんて千年早いんだよ♪そこに転がっている女の子と同じになりたくなかったらさっさと自分の仕事をするんだね♪」


 男の誘いを辛辣な言葉で断り再び席に着くエリスを男は不満そうな顔で眺める。

 そんな男が先程まで居たベッドには無残な姿になった少女の骸が横たわっていた。


 ☆


 朝の日差しが窓から入り込み私ゆっくりとベッドの中で意識が覚醒して行く。

 近くに置かれている時計を手に取り時間を確認する。現在時刻は午前6時、みんなが何時に起きて来るかは分からないけど10時から各班に分かれて出かけるので起きて朝食の支度をした方が良いだろう・・・

 まだ少しだけ眠い体を無理矢理ベッドから起こし着替えを始める。

 ・・・あれ?そう言えば昨日は皆で女子会をした後、ベッドに入った記憶が無いんだけど・・・夢菜さんの話の後に何が有ったんだっけ・・・?いや、憶えてるよ。ただ自覚した事がまだ飲み込めていないだけで・・・

 誰に対する言い訳か分からない言い訳を心の中でしながら着替えて朝食の準備に取り掛かる。

 メニューは、大人組はホットサンドとコーヒー、サラダ、スープ。ネージュ達にはホットケーキと牛乳(テルルの乳)にスープだ。

 ネージュはアミルさん達の所で一緒に寝て居るのでレニちゃん達が起きた時に一緒に焼いてあげればいいだろう。まぁ、大人組も起きてきた順に順次提供だね。

 サラダやスープの仕込みをしながら昨日の夢菜さんのテストを思い出す。

 まさか自分が狗神君に対して恋愛感情が有るとは・・・まぁ、でも、この感情は隠しておくに越した事は無いね・・・彼にだって告白したい女の子が居るらしいし、帰る場所も有る。私みたいなのに告白されても迷惑なだけだろう・・・この感情は知らなかった事にしよう。

 そんな事を思いながらサラダ用の野菜を処理しているとアミルさんが起きて来る。


「コハクちゃん。おはよ~」

「あ、アミルさん。おはようございます。コーヒー飲みますか?」

「ありがとう~。頂くわ~」


 コーヒーを入れてアミルさんに手渡すと彼女はもう一度お礼を言って受け取り口を付ける。


「ふぅ~、美味しいわ~」

「それは良かったです」


 そんなやり取りをした後で私は朝食の支度に戻る。少しするとアミルさんが何かを思い出したのか声を掛けて来る。


「そう言えばコハクちゃんは今日のデートで彼に告白するのかしら~?」


 アミルさんがそんな事を言った瞬間、私の手からはボールやら何やらが落ちガシャンっと大きな音が鳴る。


「あらあら大丈夫かしら~?」


 私の状態に目を丸くしてそう言って来るアミルさんに私はボール等を拾いながら返事をする。

 ・・・小麦粉を入れる前で良かった。


「告白なんてしませんよ。この気持ちは胸の奥底に仕舞ってそれで終わりです」

「あら?どうして?」


 冷静な言葉で対処できたことに内心でホッとしながら落としたボール等を洗っているとアミルさんは普段の喋り方を止めて理由を訪ねて来るので理由を説明する。


「狗神君、好きな人が居るらしいですし、彼等に帰る世界が有りますからね・・・私に告白されても迷惑でしょう」

「好きな人が居るというだけで告白はしていないのでしょう?」


 先程、考えて居た理由を話すとアミルさんは真剣な声音で言葉を返してくる。


「ええ、多分そうだと思いますけど・・・」

「なら、ちゃんと告白して振られるなら振られた方が良いわ。魔王とか勇者とか貴女が闇の住人だとかそんな事関係ないわ。何よりもコハクちゃんが後悔しない為の行動を心掛けなさい」


 アミルさんの態度に内心驚いていると彼女はフッと表情を和らげ言葉を続ける。


「それとね。本命に太刀打ちできるのは最初に告白した子だけなのよ。そこの所をよく考えて今日を過ごしてごらんなさい」


 そんな話をした所でぞろぞろと皆が起きて来たので私達は急いで朝食の支度を済ませて朝食を摂り、時間まで各々支度をする事になった。


「さて・・・」


 一通りの支度を済ませ吊るしてある昨日購入した白色のトップスと藍色のジャンパーフレアスカートを見る。

 正直、これを着て行くつもりは無かったのだが、アミルさんに言われた事も有り少しだけ頑張ってみる事にした。

 そんな少しだけ自分らしくない事をする事に少しだけ苦笑しながら私は鏡台の前に座り髪型をいじり始めるのだった。


此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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