ほほう・・・これは何か有りやがったな・・・
おはようございます。
第158話投稿させて頂きます。
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今回は乾視点です。
楽しんで頂ければ幸いです。
「むー、ショウギもチェスもリバーシもトランプもゆうしゃ達は皆、つよすぎる‼」
俺の目の前で不満そうに青みがかった銀の髪を持つ少女が子供特有のフニフニした頬を膨らませている。
非常に可愛らしい仕草だが騙されることなかれ、彼女の正体は一人で街一つ滅ぼせるドラゴンだ。
そんな彼女のテーブルの前にはチェスや将棋等の馴染み深いゲームが大量に置かれている。
「まぁ、元々は俺達の世界の玩具だからな・・・俺の場合はじっちゃんに将棋や囲碁の相手をさせられてたからその影響だな」
「むー」
「はいはい、そろそろ朝飯の時間に為ると思うから膨れてないで食堂に行こうぜ」
「むー、行く前にもう一戦だけやろう?ご飯までまだ時間あるよ」
「はぁ~、わかった、わかった。取り敢えずこれで最後だぞ?」
溜息を吐きながらそう言い、将棋盤に駒を並べて行く。
そもそも、なぜ俺が七時にもなっていない朝の早い時間にちびっ子の相手をしなければいけないのか・・・こういうのは早乙女か湊瀬、戌夜がメインの仕事だろうに・・・
そんな事を考えながらコハクの現状も踏まえて考えて見る。
コハク・・・三徹の末に仕事を終わらせ昨日(最早今日?)の深夜にてやっと眠りについたらしい(ネージュ談)
湊瀬、戌夜・・・まだ起きて来る時間では無かった
早乙女・・・湊瀬曰く何やら創作意欲とやらが沸いて来たらしく大量の紙をメイドさん達に貰い受け部屋に籠ったまましばらく姿を見ていない。
狗神・・・第6の厄災戦以降、徐々に元気がなくなり部屋に籠っている。
・・・駄目だ。誰一人として役に立たねぇ・・・まぁ、べつに子供が嫌いなわけでは無いから嫌では無いのだが・・・
他は時間が経てば起きて来るだろうが狗神の奴は今日あたり一度、部屋から引きずり出した方が良いだろう。一人で考えこんでいたら関係ない事にまで悩みだしそうだしな。アイツとは一応幼馴染だし、大体想像が付く。
そんな事を考えながら自分の駒を動かしネージュ側の駒を取る。
「むー」
ネージュが唸りだし、そろそろ終局になりそうだ。
さて、やっと終局か・・・実は一か所だけ突破口が有るのだが今日は珍しく朝も早かったし、そろそろ朝飯が食いたい・・・
そんな事を考えながら将棋盤を見ているとネージュの後ろから声が掛かる。
「ネージュ、相手の駒と自分の飛車の間に相手から奪った歩を置いてやれば相手の駒を防げるぞ」
ネージュに助言をした奴の確認の為に顔を上げるとネージュの後ろには思った通りの人物がネージュと話している。
「ここ?」
「そう、そこだ」
「おい、対局中に助言をするのはルール違反だろ」
ネージュと話している狗神にジト目を向けると狗神は若干呆れた様子で口を開く。
「身内同士の対局なんだから良いだろ?それにネージュはドラゴンとは言え子供だぞ?これぐらいの助言は有っても良いだろ?」
そんな事をいつも通りの態度で言われ溜息を一つ吐き、狗神が助言する事を了承する。
つか、コイツ、いつの間にか元気になってやがる。何か有ったか?
結局、狗神の助言を受けたネージュに俺の攻めは尽く潰され、初めての負けで
終局する事となった。・・・実質、狗神に負けたか・・・
終局したところで何だかんだで7時半に為っており、メイドさんに朝食の用意が出来たと呼ばれ俺達は食堂へと移動する事になった。
「あ、ネージュ、狗神君、乾君。おはよう」
「先輩方、ネージュちゃん。おはようございます」
「狗神先輩、乾先輩、ネージュちゃん。おはようございます」
「おふぁようございます・・・・・」
食堂に入るとすでに起きていたらしいコハク達に声を掛けられる。早乙女だけは未だに眠そうで欠伸をしている。
「皆、おはよう」
「おはようさん」
「おはよう‼」
挨拶を返し、席に着くとコハクが狗神に向けて声を掛ける。
「もう大丈夫そうだね。元気になってくれて良かったよ。」
「あ、あぁ、お陰様で・・・」
笑顔でそう言うコハクに対して狗神は若干気まずそうに答えてから何かの感触を確かめる様にテーブルの下で右手を握ったり開いたりしている・
・・・ううん?ちょっとまて、俺の知らない所で何か面白い事の有った気配がするぞ?
狗神の反応に戌夜と早乙女は不思議そうな顔をしている。唯一、湊瀬だけが何かを察したのか目を輝かせている。
その後は特に何も無く食事が始まり俺はやっと朝食にありつくことが出来た。
「そう言えば今日は、コハクちゃんは何か予定が有るの?」
朝食の途中で湊瀬が唐突にコハクに今日の予定を確認する。
「うん、今日は少し街に用事が有るからそれらを終わらせようと思っているよ。何か私に用事があった?」
「ううん、ちょっと気になったから聞いただけだよ」
コハクが何か用事が有ったのかと問うと湊瀬は首を振って気に為っただけだと言っている。
そんな二人の会話に脇から狗神が口を挟む。
「コハク、差し障りが無ければ俺も着いて行って良いか?」
狗神のその言葉にコハクとネージュ、この世界の人間以外のメンバーが驚き、一瞬動きを止める。
ちょっとまて‼お前、女性の外出に着いて行きたいなんてそんな事言う奴だったか?何が有った⁉
「うん、大丈夫だよ」
「そうか、ありがとう」
そんな空気に気付いて居るのか居ないのかコハクは笑顔で答えると狗神も笑顔でお礼を言っていた。
そんな事が起きた朝食を終え、狗神とコハクは準備を済ませて街の方へと出かけて行った。
「さて、乾先輩、山辺君、ネージュちゃん、ひかちゃん。私達も出かけますよ」
狗神とコハクが外に出てから少しして湊瀬が元気いっぱいに二人を追うと宣言する。
まぁ、気持ちはわかる。俺は自室でゆっくりして居たいが・・・
「拒否権は無いです‼全員参加です。面白そうですから‼」
目をキラキラさせながらそう言う湊瀬に俺は溜息を吐きながら支度の為に一度自室に戻るのだった。
此処までの読了ありがとうございました。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




