徹夜明けのテンションだったんです・・・
第156話投稿させて頂きます。
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本日、2話投稿しております。このお話は2話目です。
楽しんで頂ければ幸いです。
「メルビス、法改定とそれに伴う税金の増減をまとめた資料を持って来て‼ドード‼私の担当している各公爵領の最優先事案の報告書を‼」
机に向かいながらメルビスや文官の一人であるドードに指示を出し、私は再び書類に目を通す。
今は、第6の厄災戦から2日経ち次の第7の厄災の襲来まで一ヶ月の猶予が有る。
・・・そう、一ヶ月の猶予だ。
あの後、ゴディニさん達の無事を確認し、メアとクラシアへの抗議内容や冒険者への処罰(全員顔も名前も私は分かっているので片っ端から名前を上げてやった)等を考え、ゴディニさん達にはしばらくルファルデに身を潜めて貰う事を了承して貰い。ゴディニさん達も退出したので帰ろうとした所でメアから聞かされたのだ。
「ああ、そうじゃった。コハク、レスナ様から神託じゃ、次の厄災の襲来が伸びた様じゃ。次の襲来は明日から一月後。敵も力を蓄えてきよる。お主等も十分に休み、気力や体力を回復せよとの事じゃ」
そんな話を聞いて黄昏の国に戻り勇者達を含めた皆に伝達したのが二日前。
そして現在、私は帰還した日の夜を含めて三日間、執務室の机にかじりついて仕事をしている。他の皆には思い思いに過ごして貰っている。
王としての仕事と領主の代行としての溜まっていた仕事とこの先5ヶ月分の仕事を全て終わらせる為だ。
因みに私が領主代行の仕事をしているのは黄昏の国の内情に大きく関係していたりする。
まぁ、実は私の自業自得と言われてもしょうがない内容なのだけど・・・
「・・・魔王様、いい加減お休みに為った方がよろしいかと」
「帰ってから寝ずに仕事などしたら体に悪いですよ・・・」
「これだけ終われば休むよ・・・皆にも無理をさせて申し訳ないけどもう少しだけ頑張ってくれ・・・」
「いえ、そう言う事を言っている訳では無いのですが・・・」
メルビスやドードが心配した様子で声を掛けて来るが手を止めずに応対し、仕事に戻る。
クレスプクルム領の資料に目を通している時にふと違和感を覚える。
・・・ここの記録何だったけ?
憶えていたはずの領地の記録が思い出せずに顔を顰めすぐにドードに資料を持って来て貰うとメルビスが心配そうな顔で口を開く。
「魔王様、やはり早急に休まれるべきです」
私が領地の記録を忘れていた事が余程意外だったのかメルビスが書類を片付けようとする。
「メルビス。問題無いから大丈夫だよ。どっちみちこれが最後の仕事だ。悪いけどこれが終わったら私は少し休ませて貰うよ」
「・・・解りました」
私の言葉にメルビスは心配そうな顔を崩さないまま了承の意を示し、仕事に戻る。
結局、領地の情報を思い出せなかった理由が分からないままドードの持って来てくれた資料に目を通し、指示を出して私は溜めていた仕事と5ヶ月分の仕事を無理矢理終えることが出来た。
「はぁ~・・・っ‼」
湯船に浸かり息を吐くとこの二日お風呂に入った際に走る不愉快な痛みに顔を顰める。
顔を顰めながら痛みの原因であるつい最近、エリス・ケールに切られた右腕を見る。
エリス・ケールに切られた場所は切断された箇所に赤黒い円が一周した様に痕が残っており、その箇所が常にジクジクと痛んでいる。
ポーションも温泉も駄目か・・・
実はこの温泉。皆、気軽に入っているけど先代魔王のストリアさんの転生特典で傷の治癒や毒や呪いの解毒や解呪なんて物もしてくれる優れ物だったりする。因みに腰痛、肩こり、胃腸機能の低下等の諸々の症状にも効果がある。
・・・さて、腕の事は今度対策を考えるとして、次は狗神君と話をしなければ・・・ここ数日は誠に申し訳ない事に私の都合で彼のケアはまだ出来ていない。一応、城の医師にも狗神君のメンタル面での検診をして貰ったが彼は問題無いと言うだけだったらしい。
大丈夫などと言っていたらしいがこの2日の彼は明らかに元気が無いというのをメイド長やバラン達から報告されている。平和な世界に居た彼が化け物とは言え、生物を殺し続けたんだ。後から思う所が出て来ても不思議では無いだろう
因みに他の皆は防御に徹した戦いだったのが幸いしたのか等に変わった様子は無かったらしい。・・・何故か光さんだけが新しいインスピレーションが消えないうちにとか何とか言って大量の紙を頼み、部屋に閉じこもっているらしいが夢菜さん曰く心配無いらしい。
そんな事を考えながら胸元に下げている鍵以外に最近加わった月と龍と少女のペンダントを無意識に撫でる。
温泉に金属を漬けるなと思われるかもしれないがこれは実は希少金属使われているので温泉の成分で変色したりする心配がないのだ。そもそもこの温泉が特殊な物なので金属が変色するのかも解らない。
取り敢えずお風呂から上がったら一度、狗神君の部屋を訪ねてみるか・・・
次の行動方針を決め、ゆっくりと湯船から出て脱衣所に向かう。
「いらっしゃーい♡」
ガラッと扉を開けるとそこには満面の笑顔で出迎えるリューン達が私の逃げ道を塞ぐように立っている。
・・・・は?君達何してるの?てか、ヴァネッサとルージェは何でまだ此処にいるの⁉
「魔王様はすごくお疲れの様なのでイヌガミ様に会いに行く前に今から全身マッサージをフルコースで行います。逃げないでくださいね♡」
そんなリューンの言葉に反射的に扉を閉じようとしているとその様子を見たリューンから「ほ か く♡」っという無慈悲な言葉と同時に笑顔のメイド達に手を取られ私は前の様に全身のケアをする事になった。
結局、リューン達にマッサージして貰った後で私は狗神君の部屋へと向かう事になった。
少しして狗神君の部屋に着き、私は扉の前で少し考えてしまう。
・・・あれ?時間も遅いし、これって寝ていたら滅茶苦茶迷惑じゃない?
部屋の前まで来て今更そんな考えに思い至り暫く扉の前で動きを止める。
・・・やばいなぁ、頭が回ってない。取り敢えず声だけ掛けて寝て居る様だったら明日にしよう。
そんな事を考えながらゆっくりと扉を叩き、声を掛ける。
「狗神君。まだ起きているかな?」
声を掛けるとドアの向こうからまだ起きている様な気配が伝わって来るが返事は無い。
多分、誰にも会いたくないという心境なのかもしれない。
・・・気持ちは分かるけどそうなってしまうのは一番まずいんだよなぁ・・・仕方がない取り返しがつかなくなる前に強硬手段に出るか・・・恐らく、リング・オブ・トワイライトは外しているだろうし、危ない事には為らないだろうしね。
「うーん。もう寝ちゃったのかな・・・」
私はそんな事を言いながら廊下に誰も居ない事を確認して言葉を続ける。
こんな所をメイド長やリューン達に見られたら面倒くさいことこの上ないからね・・・
「うん、はしたないかもだけど寝て居るかどうかだけ確認させて貰おう。コリドーオープン」
わざとそんな風に言いながらリング・オブ・トワイライトの起動ワードを唱え、現れた回廊をゆっくりと歩き出口に向かう。
「はぁ⁉」
「ほぇ⁉」
回廊を抜けた先で見た光景に思わずそんな間の抜けた声を上げてしまう。
回廊を抜けた先は床では無く目の前にはベッドで仰向け、で寝転んでいる狗神君が驚いた顔で私を見ている。
恐らく、予想していた様にリング・オブ・トワイライトを外さずに指にはめたままにして右手を上にして見ていた様で空中に回廊が開いてしまったようだ。
パッと見た様子でそれだけ判断してから私はそのまま彼に向かって落下していった。
このお話から少しの間、体休め(休暇)のお話になります。
次回は和登の視点になります。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




