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戦いの終わりに

おはようございます。

二週間、お休みさせて頂きありがとうございました。投稿を再開させて頂きます。

第155話投稿させて頂きます。

前半は月濱視点、☆の後はコハクの視点です

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とてもとても励みになります。

本日、この話を含め2話投稿させて頂きます。

多分、2話とも少し長めです。

楽しんで頂ければ幸いです。


「精霊化が自分達の特権だと思うなよ。命を捨てる覚悟で掛かって来たんだ。死んでも後悔するなよ・・・《カンナカムイ》」


魔王の唐突な問い掛けに立川と一緒に答えると魔王は怒りを顕わにして本気を出すと言って最後に魔法名の様な物を唱えた。

《カンナカムイ》と唱えた言葉の後に唐突に日が傾き暗くなってきていたが晴天だった空が曇り、魔王の居た場所に落雷が落ちると周囲に轟音が鳴り響き、土煙が舞う。

土煙が晴れるとそこに魔王の姿は無く魔王の持っていた二本の剣だけが地面に転がっている。


「なんだ・・・?自爆か・・・・?」


立川がそんな事を呟いたのとほぼ同時に周囲をパチパチと電気が走ったかと思うといきなり立川が目の前から消えて吹き飛ばされる。


「なに⁉」


驚いて声を上げながら立川が吹き飛んだ方を向くと立川は何度も攻撃を喰らっているのかどんどんと空中に打ち上げられていく。立川も何とか反撃をしようとしているが敵を目で追い切れていない。

そしてとうとう、空中から一気に地上に叩き落とされ周囲に土煙が上がる。煙が晴れると立川が聖武器を手放し、奥の手が解けた状態で地面に伏している。

魔王が精霊化と言っていた俺達の奥の手は武器の精霊と融合する事で実体を一時的に失う為、物理攻撃が一切効かなくなる。その上、こちらからは物理的な攻撃がし放題というチートの様な攻撃手段だ。

それなのに立川は物理攻撃・・・・を喰らった?


「成程、武器を手放せば勇者の奥の手は解除されるのか・・・武器ごと精霊化しているのは厄介だと思ったが良い事を知った」


立川がやられた事に驚いて立ち尽くしていると唐突にそんな声が立川の立っていた辺りから聞こえて来る。

声のした方を見ると魔王の姿に更に驚く。

立川がいた場所には火や闇そのものに為った俺や立川の様にまるで雷に為ったかのような魔王が立っている。


「さぁ、次は君の番だ。散々、僕を倒すと言っていたんだ。今更怖気づいたとか言わないよな?」


そう言い素手での戦闘にも慣れているのかこぶしを握り構えを取る魔王を睨みながら武器を構え応戦する意思を示す。

相手は素手でこっちは武器持ちだ・・・立川は油断しただけだ。負けるはずがない・・・

そんな事を考えながらしっかりと武器を握り、口を開く。


「お望み通り倒してやるよ‼」


魔王に向けてそう啖呵を切った瞬間だった。不意に地面から足が離れ、顎に衝撃を受ける。


「‼」


いきなりの事に驚いている内に手や足、腹などにも同様の衝撃を受ける。

幸いなのは奥の手を使用中は手足の欠損や痛みを感じない事か・・・まぁ、衝撃や不快感は有るのだが・・・


「くそ‼」


悪態を吐きながらなんとか《アグニ》を振るおうとすると柄に魔王の手が乗せられ動きを封じられる。


「悪いな。私はもうお前達に行動させるつもりは無いんだ」


その言葉と同時に頭にドスンと鈍い衝撃が頭に走り宙に浮いていた体が落下し、地面に叩きつけられる。


「くそ・・・」


幸い、立川と違い俺にはまだ意識が有り奥の手も解けていなかったので手の中の《アグニ》を握り、魔王に切り掛かろうとすると手の中の《アグニ》をひょいっと誰かが俺の手から取り上げる。

武器が手から離れた所為で奥の手も解除されてしまい驚いて《アグニ》を取り上げた人物を見るとそこには未だに実体を失ったままの魔王が実体の無いままの《アグニ》を右手に持ち立っている。


「終わりだ。そこで寝て居る。闇の勇者とお前の取り巻きを連れて今すぐこの国を出ろ。お前達の事は後日、ルファルデ法国から正式に抗議文が送られるだろう。まぁ、馬鹿に何を言っても無駄だろうがな」


俺の前に立ち、そんな事を言う魔王を睨んでいると唐突に暗くなってきた周囲が更に暗くなる。

驚き上を見上げると頭上に黒い体毛の猫の様な犬の様な不思議な生物が鳥の様に大きな翼を広げて飛んでいる。


「オオタカ?」


魔王が何かに気付き距離を取ろうと動き出したのとほぼ同時に上空から誰かが降り立ち、《アグニ》を握っていた魔王の右腕の肘から下を切り飛ばし、《アグニ》が地面に刺さり、実体を取り戻す。

驚いていると暗くなってきた周囲にキラリと黄金が輝き、俺と魔王の間に一人の可憐な少女が姿を現すと少女はこの殺伐としたこの場に相応しくない楽しそうな声音で口を開く。


「はろろ~♪お久しぶりだね♪」


黄金の髪を持つ少女が笑いながらそう言うと魔王は切られた右腕を空中で掴み、俺達から距離を取り自分の剣の落ちている場所まで些か慌てた様子で離れる。

正直、魔王がなぜ急いで距離を取ったのか分からない。俺達も彼女の事は知っているがクラシア王国の食客で世界中を飛び回っているとしか聞いていない。

そんな事を考えて居ると魔王は切り飛ばされた右腕を切口に押し当て繋ぎ直し、緊張した声様な声を出す。

・・・どうでも良いがくっつくのは腕だけなのか・・・服に該当する部分は白と黒の布になり足元に落ちている。


「・・・エリス・ケール」

「あは♪憶えていてくれて嬉しいよ♪ところで相談なんだけど僕達をこのまま逃がしてくれないかな?」

「素直にはい、そうですかと逃がすと思うか?」

「う~ん♪普通はそうならないと思うけどそうした方が良いんじゃない♪君のその状態だってもう終わりでしょう?あんまり無理するのは良くないよ?」


エリスさんの言葉に魔王は一瞬、苦々し気配を漂わせると足元から徐々に実体が戻って行く。


・・・・え?


足から腰に腰から胴に胴から腕にと実体が戻って行くのを見ていて右腕の実体が戻った際に思わず声を出して驚きそうになる。

エリスさんの攻撃により切断された右腕には魔王の着ているコートの袖が失われその下の腕が直に目に入る。・・・その腕にはつい先日、知り合った薬師の少女と全く同じ火傷の痕が有った。


—————嘘だ‼噓だ‼噓だぁ‼


心の中でそんな言葉を喚き散らしながら彼女が目の前の魔王なはずが無い。

そんな気持ちともしかしたらという気持ちが混ざりどうにも出来なくなりながら俺は魔王の右腕から目が離せなかった。



エリス・ケールと対峙しながらゆっくりゆっくりと解けて行く精霊化に内心で舌打ちしながら全身に襲い来る痛みを表に出さない様に気を付け、剣を拾い。エリス・ケールに向かって口を開く。

幸いなのは彼女を見ても前みたいに恐怖に支配されない事と彼女が今はこちらに向かって攻撃してくる気配がない事か・・・それにしても、実体の無い精霊化している私の手を切り飛ばす何てあの剣一体何なんだ?油断ならないな・・・。


「精霊化が解けたからと言ってどうという事は無い」

「だーかーらー、やめた方が良いよ♪貧血な上に魔法による無理な勇者武器の奥の手の再現。満身創痍じゃない♪戦うなら君が万全な状態じゃないと面白くないよ♪それに・・・」


エリス・ケールが言葉を切ると上空で待機していた生物が舞い降りて来る。


「今の君じゃ僕とこの子に絶対に勝てないよ♪」


空から舞い降りて来た生物は黒い体毛で犬の様な猫の様な姿に鳥の様な翼を背に持った生物でこの世界ではオオタカと呼ばれており、現在では絶滅していて神代の時代とか呼ばれている時代に存在していたらしく相当に古い図鑑にしか載っていない最早伝説上の生き物に為ってしまった生物だ。

エリス・ケールに懐いているらしいその生き物の顎下を撫でながらエリス・ケールは余裕綽々と言った様子で此方を見ている。対する私は精霊化による代償でまともに動けない。

・・・くそ、悔しいけど彼女の言う通りか。

彼女の言葉に悔しくも同意しながら情報を引き出すために質問を投げかけて見る。


「幾つか聞きたい事がある。」

「良いよ~♪僕達をこのまま行かせてくれるなら答えられる事には答えてあげる♪」


意外にも了承の意を示した彼女に内心驚きながら最初の質問を投げかける


「火の勇者が此処まで自由に行動できたのは貴女が裏で動いていたのか?」

「そうだよ~♪彼のパーティメンバーと一緒にあの筋肉おじさん達の相手をしてたんだ♪思った以上に戦える相手だったから驚いちゃったよ♪死んではいないと思うけど早く治療してあげた方が良いよ♪」


そう言いながら重さを感じさせない動作で気を失っている立川と驚いた顔で私を見ていた月濱と彼等の聖武器を犬猫生物の背に放り投げて乗せて行く。

あ、よく見ると月濱の取り巻き女達も犬猫生物の背中に乗ってる。


「二つ目だ。イリアで逃げていた連中を殺したのは貴女か?だとしたらシレネの首を何に使うつもりだ?」

「う~ん。逃げてた子達を殺したのは確かに僕だよん♪首に関しては秘密♪」


やっぱり彼女が関わっていたか・・・シレネの首も想像通り、何かに使うつもりらしい。


「三つ目だ。その生物はオオタカか?絶滅した生物がなんで貴女と一緒に居る?」

「それの答えもイエスだね♪もう一つの質問の答えは簡単だよ♪絶滅したのはこの地方だけでこの仔はずっと僕のパートナーだよ♪」


頭を摺り寄せて来る犬猫生物の顔を撫でながらエリス・ケールは楽しそうに答える。

なるほど・・・この地方ね・・・確証が欲しかった事象の裏付けになりそうだ・・・


「四つ目だ何でこんなに質問に答える?」

「その方が面白いでしょう♪どうせ答えても君にどうにかできる事じゃないし、知られても僕にはそんなに重要じゃないからね♪」


どうやら相当に嘗められているみたいだが彼女と出会った際に見せた醜態を思えば仕方がないだろう・・・

そんな事を考えながら絶対に答えないであろう最後の質問を投げかける。


「最後の質問だ。貴女の目的は何だ?」

「残念♪教えてあげないよん♪じゃあ、最後に僕からも君に質問だよ♪君の名前は何かな?」


茶化すように質問に答える事を拒否するとそのままするりとオオタカの背に乗り、逆に私の名前を聞いて来る。

・・・どうせ偽名だ。これぐらいなら答えても良いだろう。


「・・・トワだ」

「残念♪次は本名を教えて貰えるように頑張るよ♪じゃあね♪トワ♪チャオ♪」


軽い口調でそう言うとエリス・ケールはオオタカに指示を出し、オオタカは助走を付け、背中の翼を広げ空高くに舞って行く。

それにしても、何であれをオオタカって呼んでいるの?どう見ても四足獣じゃん。誰だよ。最初にオオタカって呼んだ奴・・・あのモフモフ具合だけは良いなぁ・・・

そんなどうでも良い事を考えながら飛び立った彼女達が見えなくなってから痛む体を無理矢理動かし、今後の事を話す為にルファルデの首都に向かって歩き出した。

此処までの読了ありがとうございます。

このお話でルファルデ編は終わりになります。

次のお話も楽しんで頂ければ幸いです

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