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火・闇の勇者戦

おはようございます。

第154話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とてもとても励みになります。

楽しんで頂ければ幸いです。

 ガマズミを倒し、走り抜けた方を向くと後を追いかけて来たのか二人の勇者が此方を睨んでいる。

 その敵愾心を私じゃなくて厄災に向けて貰えませんかね?

 些か呆れ気味にそんな事を考えて居ると闇の勇者が憎々し気に睨みつけ武器を向けながら口を開く。


「クラシアの時みたいに逃がさねぇ・・・クラシアでの借りを返してやる」


 敵意剥き出しでそんな事を言って来る闇の勇者に内心で呆れ果てながら私はゆっくりと口を開く。

 正直、厄災も倒したし私は早く帰りたい。


「二人一辺に相手してやる。とっとと掛かって来い」


 両勇者に向けてそう挑発してやると月濱はニヤリと嗤い得意げに口を開く。


「おいおい、誰が二人だけって言った」


 余裕たっぷりなその言葉の後に傷だらけだが下卑た笑みを浮かべた冒険者達が現れる。

 あぁ・・・そう言えばこんな奴らも居たっけ・・・数が減っているけど良くこれだけ生き残ったな


「お前の相手は俺達を含んだ冒険者達だ‼」


 勇者がそれで良いのか・・・?まぁ、別に気にしないけど・・・有象無象がいくら集まっても同じことだし・・・

 倒す順番を考えながら連中を眺めていると月濱の近くに居る冒険者の一人が私の事を指差しながら月濱に向かって声を掛ける。


「おい、兄ちゃん。コイツを倒すのにも手を貸せば報酬は倍になるんだな?」

「ああ、こいつを倒せればアンタ等の言い値で報酬を払うとクラシア王国の姫君エリュナ姫様が約束してくれている」

「へっ、一国のお姫様が約束してくれてんだったら安心だな。安心して稼がせて貰うぜ‼‼‼」


 そう言って武器を構え直しながら他の冒険者達と共に私に向かって走って来る。

 はぁ・・・こいつ等はお金目当てで此処まで来たのか・・・

 心底呆れかえりながら左手に持つ《カグツチ》を横に振るうと風の刃が冒険者達の間を抜け、全員が足を止める。


「・・・なんだ?虚仮威しか?」


 その様子を見ていた二人の勇者は風の刃が冒険者達を無残に切り裂く姿を想像していたのか一瞬、慌てた表情になるが誰一人として死んでいない現状にポツリとそんな言葉が漏れる。


「馬鹿が・・・切ったのはそいつらの心だ」


 そう言いながら《カグツチ》と《クラミツハ》の刃をぶつけてカツンっと音を立ててやるとそれに合わせて冒険者達の装備していた鎧や武器が音を立てて崩れ去る。

 冒険者達は驚いたのかその場に呆然としたように尻餅を着いている。


退()けぇ‼今退()けば貴様らの命までは取らない。それでもなお、僕の首を狙うというのならば文字通り命を懸けて掛かって来い‼」


 呆然としている冒険者達に大きな声でそう宣言してやると奴らは悲鳴を上げて一目散に逃げ始める。


「ひ、ひぃ~」

「嘘だろ‼こんな奴に勝てるわけがねぇ‼」

「お、おい‼逃げるなよ‼」

「金は要らねぇのか!?」

「命あっての物種だ。殺すのは好きだが殺されてたまるか‼」


 逃げ出した冒険者に向けて勇者二人は何とか引き留めようと声を大にして怒鳴っているが走り抜けていく最後の一人が怒鳴り返しながら走って行く。

 ・・・最後の奴は殺しておいた方が良かったかな?

 密かにそんな事を考えつつ残った勇者二人に《カグツチ》を向けながら問いかける。


「さて、他の者達は逃げて行ったが君達はどうする?」


 逃げて行く冒険者達を苦々しい顔で見ていた二人にそう声を掛けると闇の勇者は先程よりも険しさの増した視線を向けて来る。


「うるせぇ‼所詮は烏合の衆だ‼居ても居なくても関係ねぇ‼ファルガさん達の仇だ‼テメェはここでぶっ殺してやる‼」


 そう言いながら武器を構え私に向かって闇の勇者が駆けだして来る。

 月濱は尻込みしてしまったのか私の問いかけにも答えられずにその場に立ち尽くしている。


「死ねぇ‼」


 そんな声と共に振り下ろされる双剣の攻撃を後方に飛び避ける。


「逃がすかぁ‼」


 追いかけてこようとする闇の勇者に向けて避けた際に右手から飛び散った血に《クラミツハ》で指示を出し細かい針状にして闇の勇者に攻撃する。


「ぐっ‼影縫い‼」


 血の針に突き刺されながら懐から取り出した真っ黒な針を私の影に向かって投げて来てそのまま再び切り掛かって来る。


「‼」


 先程と同じ様に後方に飛ぼうとすると体が動かない。

 恐らく闇の勇者の武器による効果か・・・さっき影縫いとか言っていたしね・・・・面倒な・・・・

 内心で毒づきながら縫い付けられた腕を無理矢理引き剥がし、闇の勇者の攻撃を受け止める。

 無理矢理引き剥がした代償か腕に無数の傷が出来、血が噴き出してくる。

 影縫いという技が破られた事が意外だったのか私の行動が意外だったのか分からないが驚いている闇の勇者を再び蹴りつけ距離を取る。


「ダメージ無視で攻撃してくるとか狂ってるのかよ‼影潜り‼」


 そんな事を叫びながら技名と思われる物を叫び自分の陰に沈んでいく。

 ・・・本当にどうでも良い事なんだけど月濱にしても君にしてもいちいち技名を叫ばないと攻撃できないの?

 そんな事を思いながら《カグツチ》を逆手に持ち、自分の影の右肩辺りに突き刺す。


「があ‼」


 そんな悲鳴と共に影から血が飛び散り、闇の勇者が現れて地面に転がる。


「火の勇者は動けない。君は負傷して動けない。君らの負けだ。戦いは終わりだ。ルファルデ法国から去れ」

「うるせぇ‼まだ負けてねぇ‼」

「お前達の負けだ。いい加減に認めろ・・・‼」

「フレイムスラッシュエッジ‼」


 闇の勇者に退けと促していると先程まで動けて居なかった月濱が此方に向かって攻撃を放って来る。

 此方に飛んで来る炎の刃を《カグツチ》で撃ち落とすとその隙に月濱が接近して来て手に持つ大剣を振るって来る。

 後方に飛び大きく距離を取ると月濱はそれを見て闇の勇者に向かって声を掛ける。


「すまねぇ立川。少しビビっちまってた」


 手を出す月濱に向かって闇の勇者は笑みを浮かべながら口を開く。


「本当にマジで勘弁してくださいよ。でも、助けてくれてどうもっす」


 そう言いながら差し出された手を握り起き上がらせて貰うと二人で私に向き直る。

 はいはい、良い絵だね・・・武器を向ける相手は間違えているけど・・・


「立川、奥の手を使おう。悔しいが今の俺達じゃこいつに勝てねぇ。奥の手を使っても一人では無理だ。でも、二人なら・・・」

「勝てるっすねやりましょう」


 奥の手と聞き私は仮面の下で苦虫を嚙みつぶしたような顔になる。

 別に厄介とか不味いと思った訳では無い

 私は勇者の奥の手とそれを使った事による代償を知っているのだ。奥の手は勇者と精霊の融合による精霊化、代償は絶大な力と引き換えに削られる使用者の命。


「古より伝わりし、聖なる武器アグニよ。我が身に精霊の力を宿し、大いなる悪を焼き尽くす力を我に与えよ‼」

「古より伝わりし、聖なる武器アペプ。我が身に精霊の力を宿し、我が敵を闇に沈める力を我に与えよ‼」


 そんな言葉と共に二人の武器から炎と闇が溢れ、二人を覆い姿が見えなくなる。


「「エレメンタル・フュージョン‼」」


 思っていた通りの奥の手を見て、私は沸々と怒りが沸いて来る。

 奥の手は勇者と精霊の融合による精霊化、代償は絶大な力と引き換えに削られる使用者の命。

 当然、彼等に奥の手を教えた人間もその代償を理解しているだろう。

 私が狗神君達に絶対に教えないと決めていたソレをあっさりと教えたクラシア王国とリスクも考えずに使う彼等に対しての怒りだ。


「「行くぞ‼」」


 2人揃ってそんな言葉と共に消え唐突に私の体が宙に浮き視認できない速さで全身を強打され、吹き飛ばされる。


「ガハ・・・」


 地面に叩きつけられ血と共には肺から空気が抜ける。

 隙を見せない様に即座に立ち上がると私のダメージを見て攻め時と判断したのか一瞬にして火と闇の勇者が距離を縮めて来る。


「「まだだぁ‼」」


 そんな声と共に振り下ろされる武器をギリギリで避けながら距離を取る。

 二人は現状で避けられるとは思っていなかったのか少しだけ驚いた様子で動きを止める。

 私はそんな勇者二人に向かって息を整えてから声を掛ける。


「・・・お前達、その奥の手の代償を分かっていて使っているのか?」


 そんな言葉に二人は顔を見合わせると私を馬鹿にしたような視線を向けて答える。


「当然だ。分かっていて使っている。貴様は命を削ってでも倒すと決めた‼」

「お前を討たねぇとファルガさん達に顔向けが出来ねぇ‼大体、魔王なんてやられやくなんだよ‼心配するような様子を見せるならさっさと死ねぇ‼」


 そう叫びながら再び消えた二人の攻撃を同じ様に避け、私は再び口を開く。


「そうか・・・お前達の考えはよく分かった・・・ならば私も少し本気を出そう・・・」


 私の言葉に訝しむような顔をする二人を仮面の下で睨みながら《クラミツハ》を持つ手を上に挙げる。


「精霊化が自分達の特権だと思うなよ。命を捨てる覚悟で掛かって来たんだ。死んでも後悔するなよ・・・《カンナカムイ》」


 その言葉と共に晴天だった空が曇り私の居た場所に雷が落ちると周囲に轟音が鳴り響いた。


此処までの読了ありがとうございます。

すみません。私事で申し訳ないのですが11/21と11/28の投稿ですが私用によりお休みさせて頂きます。

投稿再開は12/5にさせて頂きます。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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