第五、第六の厄災討伐戦・8
おはようございます。
第153話投稿させて頂きます。
評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とてもとても励みになります。
今回からコハクの視点に戻ります。☆は視点変更でコハク→和登になります。
楽しんで頂けたら幸いです。
—————彼は頑張って貴女のお願いを叶えたよ?次は貴女が頑張る番じゃない?
そんな声の後にガシャンというけたたましい音が鳴り、真っ暗だった視界が真っ白になり次第に視界に色が戻って来る。
ガシャンか・・・ネージュやメアが意図的に解除した物じゃなくて破壊されたか・・・ネージュやメアが結界を解除したなら何の音も鳴らずにこの場から消滅するはずだからね。
それにしても月濱だけでは破壊出来ない様にメアの力も借りていたのにどうやって破壊したのだろう。
そんな事を考えて居るとその原因達の声が聞こえて来る。
「全く。油断して封印されるとか月濱先輩は女とやり過ぎて頭が蕩けてんすか?フォローする俺の身にもなってくださいよ」
「・・・別に油断した訳じゃねぇ。いきなり見た事の無い魔法が発動したんだ。喰らっても仕方が無いだろ。結界破壊も純粋に氷だけじゃ無かったんだしょうがねぇだろ」
月濱が苦々し気な顔で言い分けをするが闇の勇者は馬鹿にした様に嗤いながら言葉を続ける。
・・・てか、こいつ名前なんだっけ?
「だーかーらー、ソレが油断だって言ってんすよ。大体・・・」
闇の勇者の名前を何とか思い出そうと頭を捻っていると軽い感じで月濱を責め立てていた闇の勇者が私の事を睨みながら武器を向けて口を開く。
「ファルガさん達を殺したコイツの前で他に気を回している時点で終わってんだよ」
あ、思い出した。確か立川 健だ。
どうでも良いけど君らが余計な事をしてくれたからゆっくりしている余裕なんかないよ。今はまだガマズミ達も現状に混乱しているけどもうじき動き出すよ?
そんな事を思っていると不意に通信機から狗神君にしては珍しく焦ったような声が聞こえて来る。
『嘘だろ・・・俺が倒した奴以外にまだ本体が居るのか・・・?くそ‼《オクタ・サイプレス・サーヴァント》』
・・・どうやら本当に余計な事をしてくれたらしい。狗神君がガマズミの片割れを倒す前に結界を破壊してくれた様だ。
兎に角、今は目の前の勇者連中よりも狗神君を落ち着かせてガマズミを倒すことが先決か・・・
そんな事を考え、何か喚き出そうとしている闇の勇者を無視し、私は狗神君を落ち着かせるようになるべく穏やかな声音を心掛けて声を掛ける。
「心配いらないよ。ありがとう狗神君。そのまま頭を潰し続けてくれる?後は私の仕事だ」
狗神君に一言だけそう告げて通信を切る。もう少し何かないかと思われるかもしれないけど今は絶賛戦闘中なので最低限の報告に済ませる。
化け物とは言え何かを殺し続ける事は相当なストレスだ・・・狗神君には後で何かしらのケアをしてあげないといけないな・・・
「おい‼お前!聞いてるのかよ‼」
敵を倒した後の事を考えて居るとさっきから何か言っていたけどずっと無視していた闇の勇者が無視されている事に対してとうとう怒鳴りだす。
些か面倒に思いながら私は火と闇の勇者に向かって冷たく言い放つ。正直、こいつ等は眼中に無い
「どうでも良い事だけどそこ、危険だよ」
「うわ‼」
「危ねぇ‼」
私の言葉と同時に二人の背後に影が落ち、それに気づいた二人は悲鳴を上げながら急いで真横に飛び退く。
二人の居た場所に蒼白いぶよぶよした腕が振り下ろされ、ガマズミ達が忌々しげに私達を睨む。
どうやら漸く私にバラバラにされた体から再生と増殖が終わったらしい。
「相手は後でしてやる。取り敢えずお前らは生き残る事に集中しろ。あぁ、一つだけ言っておく。僕の邪魔だけはするな」
そう言い残し、《カグツチ》と《クラミツハ》を構え直し、走りだす。
「あ‼おい、待ちやがれ!」
後ろから闇の勇者が呼び止めようとする声が聞こえるが無視し、ガマズミの間を走って見失った本体を再び探す。
「見つけた‼」
ガマズミの間を走り抜け再び見つけると相手も私に気が付いたのか自分の分裂体に指示を出し、私の行く手を阻む。
「《オクタ・ウインドエンハンスアーマメン》。邪魔だぁ‼退けぇ‼」
《カグツチ》に風の魔法を纏わせ振るい、行く手を阻むガマズミの分裂体の首を刎ねる。
コイツが面倒なのは本体がどこに居るのか分からない事と今回に限って言えば二体居た事なのでネタが割れてしまえばコイツ自体の脅威度は低い。
二体目もすでに無力化しているので後はコイツを仕留めれば全てが終わるので増えても関係ないので容赦なく切り捨てて行く。
敵を切り伏せ開いた道を一気に駆け抜け本体に接近するとガマズミは悔しそうに顔を歪めながら異様に白い腕で突きを繰り出してくる。
その手を切り飛ばし、前進してその首に《カグツチ》を振う。
「いい加減に失せろ‼《クラミツハ》」
宙に舞う首からしつこく増殖しようとするガマズミに向け《クラミツハ》の能力で血柱を生み出し、その血柱で頭を潰す。
グシャっと湿った音がするのと同時に周囲を囲っていた分裂体が悲鳴を上げながら地面に溶けて消えて行く。
面倒な戦闘の割にあっけなく消滅したガマズミを確認してから私はゆっくりと次の敵に体を向けた。
☆
コハクから通信が来てから少しして剣を突き立てていた第六の厄災に変化が現れた。
剣を頭に向けて突き刺した瞬間に唐突に悲鳴を上げながらのた打ち回り息絶える。
それと同時に周囲に居たコピー達も次々に悲鳴を上げながら地面に溶けて消えて行く。
「終わったのか・・・?」
正直、化け物とは言え殺し続ける事に対して吐き気を催してきていたので終わってくれて助かった・・・
そんな事を考えて居ると唐突に足から力が抜け地面に倒れそうになる。
「危ね。よくやってくれたな、お疲れさん。和登」
そんな言葉と共に体を支えられたので声のした方を見ると何時の間に来て居たのかフェルがそこに居た。
「取り敢えず、休息が必要だな。今はゆっくり休め」
そう言いながら俺と月夜を一緒に担ぎ上げるフェルに向かって俺は急いでルファルデ法国に戻る事を伝える。
コハクは今から勇者と戦うのだ。他にも冒険者も居るし、加勢した方が良いと思ったのだ。
その事をフェルに伝えるとフェルは些か微妙な顔をしてからゆっくりと口を開く。
「人間相手なら大丈夫だ・・・正直、複雑なんだがお前は今、スキルが共有されてるんだろ?ステータスのスキルを見て見ろ。あいつは人間相手なら負けねぇよ・・・」
その言葉に顔を顰めながらぼやけて来た頭を無理矢理動かし、自分のステータスを覗く。そこにはコネクト薬によって共有されたスキルも追加されている。
幾つか見た事の無いスキルを見て行くとその中に物騒な名称のスキルが有り目を止める。
《対人間特効》
その不吉な名前に一抹の不安を覚えたが俺の意識はそこでゆっくりと闇の中に沈んで行った
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此処までの読了ありがとうございます。
次回かもう一回のお話で第五、第六の厄災討伐戦(ルファルデ編)のお話が終わる予定です。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




