第五、第六の厄災討伐戦・3
おはようございます。
第147話投稿させて頂きます。
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「なっ、何だ⁉コイツはさっき俺が倒したはずだろ?生きている上に何でこんなに増えてるんだよ⁉」
いきなり増えて目の前に現れたガマズミを見て月濱は驚愕した様に叫びながら大剣を構える。
全く持って腹立たしい・・・粉々に切り刻んでくれた上に燃やして灰にしてくれれば細かく散って数百に増えて当たり前だろうが‼コイツ・・・メアが対面した際に話したガマズミの特性を憶えてなかったのか?
月濱の様子にイライラしながらガマズミの攻撃を避け、私は通信機を使って皆に指示を出す。
「各員に通達‼敵、本体の抹殺に失敗。至急、外壁の内側に戻れ‼」
本体以外の個体を相手にしている皆に急いで撤退の指示を飛ばすと各々の班の班長をしている人達から連絡が返って来る。
『こちら第1班、パーシヴァル。報告了解。直ちに撤退する』
『こちら3班。撤退命令了解‼』
『りょ、了解‼第4班撤退します‼』
『第5班、撤退します!クレイ、あんたの班も急いで‼』
『第6班撤退。トワさんは大丈夫なの?』
『撤退します。第7班急いで‼』
『トワ、俺達は先に引くぞ。第8班撤退‼』
『トワさん。無事に戻ってください。第9班撤退しますよ』
『トワ、外壁の向こう側で待っている。第10班、他の班をフォローしながら撤退するぞ‼』
『おい!黄昏の魔王‼冒険者達はどうするんだ⁉』
各々の撤退報告を聞いていると2班班長のクレイから冒険者達をどうするのかを問いかける声が聞こえて来る。
ガマズミの攻撃を避けながら逃げる人達を確認すると遠くの方に居る第2班だけが冒険者達を気にして逃げ遅れている様子だ。
クレイの言葉に私は静かに先を含んだ声で答える。
「捨て置け。すぐに撤退しろ」
自分でも思った以上に腹が立っていたのか自分でも驚くほど冷たい声が出る。
『見捨てるのか・・・?』
攻撃を加えて来たガマズミの頭に蹴りを加えてへし折りながら聞き分けの無いクレイに更に冷淡な声音で告げる。
・・・やはり、首の骨を折っても死なないか。
「お前は馬鹿か?余計な事をして状況を悪くした奴らの命まで責任を持ってやる義理は無い。お前は命をかけて戦っている自分の仲間を判断ミスで殺すつもりか?命の優先順位を考えろ。反論や文句は受け付けない。直ぐに撤退しろ。」
『くそ・・・了解・・・』
納得できない。したくないっと言った様子で撤退を受け入れたクレイとの会話を終えると私の着地位置に横薙ぎに刃が振られる。
着地と同時に《カグツチ》で刃を受け流し、後ろに飛んで距離を取り攻撃をして来た人物を睨みながら声を掛ける。
「状況判断が出来ないのか?」
剣を振りきった月濱は私の言葉を聞いていたのか怒りを隠さずに口を開く
「黙れ‼お前、冒険者の人達を見捨てるつもりか?この国の為に命を懸けて此処に来たんだぞ‼その人たちを見捨てるのか‼やっぱりお前は人間の敵だ‼」
ガマズミが攻撃をして来る中、私に向けて武器を構えながらそんな事を言う月濱に私は心底呆れるのと同時に腹が立つ。
「笑わせる。お前が勝手に連れて来た迷惑な連中の面倒をこっちに押し付けるな。お前が連れて来たのならお前が責任を持て。僕がなぜあいつ等に今回の件を今回の件を話して雇わなかったのか教えてやろうか?あいつ等は殺しを頼むタイプの冒険者だ。そういう奴らは概ねこちらの言う事なんて聞きはしない。そんな連中は足手纏いだ。あいつらを殺すのは僕じゃない。お前と奴らの愚かさだ」
狗神君には話していなかった最後の理由を月濱に話しながら《クラミツハ》の能力で小さな血の刃を作りガマズミに向かって放って小さな傷を与えて行く。
「僕達の作戦を台無しにして更にそのツケを僕達に払わせるな。自分の尻は自分で拭け。メア‼ネージュ‼プランCに作戦を移行だ。準備してくれ‼僕以外の皆が避難したらすぐに処置をしてくれ‼」
月濱に文句をぶつけながら通信機の波長をネージュとメアに切り替えて私は二人にのみ話していた作戦に切り替える。
『・・・わかった』
『・・・了解じゃ』
私の通信の内容にメアもネージュも悔しそうな声音を出して了承の意思を示してくれる。
今回はこのアホ勇者を放置し過ぎた・・・全く持って腹立たしい。
「おい!今度は何をするつもりだ⁉プランCってなんだ‼答えろ‼」
「お前にそれを教えてやる義理は無い。少し黙っていろ。あまり喋るな。殺したくなる」
私の言葉を聞いて問いただしてくる月濱に対し殺気を込めながら答え、各班の撤退具合を確認すると案の定、クレイの率いている第2班が冒険者達の攻撃の所為で増えたガマズミに追い回されたりして取り残されている。
それらを確認してから私は《クラミツハ》の能力を発動させる。
《クラミツハ》の能力を発動させるとトネリコとの戦いでも見せた鋭く尖った赤い柱が《クラミツハ》で切り付けた個体と血の刃を受けた個体達から伸びて地面に縫い付け敵の動きを止める。
「何だ⁉」
月濱が突然体から赤い柱を生やし動きを止めたガマズミに驚きの声を上げているが無視してガマズミ達の様子を観察する。
「ちっ、やはり血からも増えるか・・・」
パッと見で血柱によって動きを止めたガマズミだがその血柱の血を利用してそこから増殖を始める。
ボコボコと気色悪く増え続けるガマズミから更に血柱が伸び増殖と縫い付けが繰り返される。
後ろの方でも同じ現象が起きていたが、戦い続けている冒険者を置いて2班のメンバーも無事に戦線から離脱したのを確認し、本体だと思われた個体の場所まで駆けて一気に距離を詰めて先程は躊躇した敵の首を《カグツチ》を使って切り飛ばす。
「メア、ネージュ、こっちの準備は整った。頼む‼」
敵の首が飛び、班員の全てが撤退したのを確認してからメアとネージュに通信を送る。
『ノナ・シールコフィン』
『ノナ・アイスコフィン』
通信機から聞こえて来た声と同時に戦闘区域全てを飲み込む程大きな魔法陣が二つ浮かび上がり輝き始める。
今回、メアとネージュに頼んだプランCは簡単な話二種類の属性の結界魔法で辺り一面を一時的に封印処理する物だ。正直、使わないに越した事は無かったんだけどね・・・
魔法が発動するまでの間に私はメアとネージュにこの戦闘中最後になるであろう言葉を残す。
「ネージュ、メア、悪いけど後は頼む。私の予想が当たっているかは賭けになるけど狗神君達に伝えてくれ」
「引き受けた・・・」
大量の魔力を消費した後で具合の悪そうなメアからその言葉を聞いたのと同時に魔法が発動し私の意識は一時的に闇に包まれた。
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次回は和登視点になります。
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