まぁ、こんな感じの関係です
おはようございます。
第143話投稿させて頂きます。
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———メアニア様とはどんな間柄なの?
夢菜さんの質問に私は思わず溜息を吐いてしまう。
正直、どんな間柄かと聞かれたら挨拶をする程度とか赤の他人とか言いたいけど変に誤魔化したとか思われるよね・・・
まぁ、彼女と出会った時の事を話せばどんな関係か分かって貰えるだろう。
「狗神君は前にマカさんが言っていたのを聞いていたし、他の皆はさっき私が言ったから聞いてたと思うけど少し前・・・正確に言うと5年前にこの国で魔物のスタンピードが起きたんだよ。その魔物がただの魔物ならそんなに問題が無かったんだけどそいつらは禍の先駆けの影響を受けていたんだよ。聖騎士や冒険者が総出で相手をしていたけど対応しきれなくて戦線は瓦解寸前。状況を見かねた当時はまだ巫女で腕利きの魔法使いだったメアニアが戦場に出たんだ。一度は持ち直したんだけどメアニアが不意打ちを喰らって重傷を負った所で私が乱入して魔物の討伐に加わったんだ。その後は禍の先駆けを倒した後でネージュのブレスと魔法を使って雑魚を一掃してこの国で起きたスタンピートを収束させたんだよ。で、此処からがメアとの付き合いの話になるんだけど・・・その時の私は実はメアに用事が有ってこの国に来ていたんだよ。でもそのメアは重傷を負って
会話も出来ないレベルだった。そこで当時初めて作られた5本のエリクサーイミテーションの内の一本をメアに使ったんだよ。他の人達にはポーションを配った後で初めて使う薬だったから経過の観察と容態変化に対応できるように看病してたんだよ。薬の提供元が私だったから数人の監視と一緒にね。で、目を覚ましたメアが事のあらましを聞いて実際に私の顔を見て一目惚れしたとか何とか言い出してあんな状態になったって言うのがあの子と私の関係だよ」
「「「えぇ・・・」」」
狗神君や乾君達が何とも言えない顔で声を上げる。
夢菜さんはそんな三人を無視し私の言った事に疑問が有ったらしく更に質問をして来る。
「でも、それだけならあんなに冷たい態度は取らないよね?何か有ったの?」
その言葉に私は仮面の下で遠くを見ながらポツリと呟く。
「125回」
「「「「「へ?」」」」」
その呟きに全員が意味が分からないと言った様子で間の抜けた声を出す。
その様子に私はげんなりとしながら続きを口にする。
「大神殿で私が部屋を借りている時や湯浴みの時、食事を摂っている時にメアが夜這い?を掛けに襲い掛かって来た回数だよ。一ヶ月の滞在で125回。流石にこれだけ奇襲されたら態度も冷たくなると思うけど?」
私の言葉に全員が何とも言えない顔になる。
「メアニアさん。美人なのに勿体ないな・・・」
乾君はメアの容姿が好みだったのか少し残念そうな顔をしている。
「メアはバイだから男性も恋愛対象だよ?」
「いや、性格が残念過ぎるだろ・・・」
そんな乾君を置いといて今度は山辺君が口を開く。
「そう言えばメアニアさん達はトワさんの事を本名で呼んでいますしトワさんもいつものコユキさんの格好じゃないですけど大丈夫なんですか?」
山辺君の言葉に私は溜息を吐き質問に答える。
「メアは腐ってもレスナの巫女なんだよ。彼女はレスナと直接好きな時に話が出来てね。レスナがメアに予め私の正体をばらしていたんだよ。幹部の人達はメアが教皇の席に着いて実権を握ってから幹部・・・枢機卿と大司教クラスの人間に私から許可を取って教えたんだよ。その方が何かと都合も良かったしね・・・コユキの姿で出歩けないのは主にアレが原因だね・・・」
再び溜息を吐きながら私はお土産屋さんに並んでいる白い龍に乗った女の子の人形や白い龍と少女を模ったアクセサリー等を指差す。
「メアの奴が無駄に権力を使った所為でコユキはスタンピートから国を救った英雄扱いでね・・・コユキとして動くよりもこの格好の方が自由に動けるんだよ・・・全く持って何のための変装なのか・・・」
人形やアクセサリーを見た夢菜さんと光さんが「可愛い・・・」っと呟いていた。
・・・自分がモデルとか恥ずかしいよ?まぁ、狗神君がくれた物は定期的に身に着けさせてもらおう。貰っておいて身に着けないのも申し訳ないしね。お礼も何か考えないとね・・・
そんな事を考えていると狗神君が疑問を口にする。
「ちょっと待った。メアニアさんやこの国の幹部達と懇意にしていたなら何でマカにコハクの事を黙っていたんだ?」
「直接聞いてないから憶測になるけどマカさんは一度クラシアに向かってそこで狗神君と合流したんでしょ?クラシアで万が一真面目なマカさんが魔族が悪い奴ばかりじゃないなんて言ったら想像できるでしょ?多分、マカさん身を守る為だったんじゃないかな?」
「あぁ・・・成程な・・・」
私の言葉に全員が微妙な顔で納得をしている。分かって貰えて嬉しいよ・・・
そんな会話を終えて宿の近くに来た所で明日の話を皆にする。
「あ、そうだ。宿に入る前に明日の予定を話しておこうか。明日、私は一度、憤怒の国に出かけて来るよ。小父様とフェルやオウル達と話をして来たいしうちの人達を預けて来なくちゃいけないからね。皆は聖騎士の人達と訓練や当日の班分けをして貰いたいんだけど任せて大丈夫?」
私の言葉に皆が少しだけ驚いた様な顔で私を見る。
はて?何か驚かれるような事を言ったかな?
皆を代表して狗神君が控えめに私に聞いて来る。
「俺達も戦闘に参加して良いのか?」
その言葉に私は今更ながらに皆が驚いた理由を理解する。
成程・・・今まで皆に頼らなかったツケか・・・
些か皆に申し訳なく思いながら私は皆の顔を見ながら口を開く。
「うん、まぁ、何と言うか・・・私が不甲斐ないばかりに毎回皆には尻拭いをさせてしまっているからね・・・流石に私も学んでいると言うか・・・皆の力を貸してください」
その言葉に皆は些か嬉しそうにしながら快く了解してくれた。
そんな会話の後、私は再び薬師の格好になり、宿に部屋を取ってその日はゆっくりとベッドで休んだ。
翌日、皆が大神殿に向かったのを確認してから何時ものコート姿に戻り、転移陣を使って黄昏の国に戻り、直ぐに転移装置を使って憤怒の国に渡る。
門番さんと話をして中に入り歩きなれた憤怒の城の廊下を歩いて会議室に向かうと対面方向から見覚えの有る人影が三人歩いて来る。
その人影を確認して私は思わず顔を綻ばせる。
「小父様‼」
周囲に見知ったその三人とネージュしかいない事を確認してからそう言って駆けだすと私は普段一緒に居る皆が居ないのを良い事に小父様に向かって思いっ切り抱き付く。
小父様もそんな私を軽々と受け止め嬉しそう口を開く。
「おお、コハク。よく来てくれたな。ネージュも息災か?」
そう言って私を抱き抱える小父様と私をやれやれと言った様子でフェルとオウルが見ていた。
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