オネェの正体
おはようございます。
第140話投稿させて頂きます。
先週はお休みしてしまい申し訳ありませんでした。
今回も和登の視点です
楽しんで頂けたら幸いです。
「紅茶を1つとリコの実のタルトを一つ。ワコさんは何か食べます?」
『コヒーとトト肉のサンドウィッチを一つ』
コハクにデートと言われ一緒に街中を歩きお店や大神殿以外の教会や神殿などを巡りしばらくして小腹が空いた俺達は近くのカフェで休憩を摂る事にした。
それにしても、急にデートとは一体何を考えているのやら…
そんな事を考えながら御冷のグラスに口を付けているとコハクが少しだけ不安そうな表情で声を掛けて来る。
てか、今の状態のコハクは何時もより幼く見えるのは気のせいか?
「楽しめたかな?」
その問いに俺は急いで口の中の水を飲み込み。コハクの問いに答える。
「あ、ああ。色々と街を見れて楽しかったよ。白夜の国は見て周れたけど他は中々そんな機会なかったから新鮮だったよ」
そう言うと不安そうな顔からニコッと可愛らしく笑う。
うん、月濱純也が見惚れるのも分かる気がする。
「そっか、楽しんでもらえたなら良かったよ」
「それにしても何で急にデートなんて言い方をしたんだ?」
そう訊ねるとコハクは少しだけ困った様な顔をしてから教えてくれる。
「この前のパーティの時に狗神君にエスコートして貰う予定だったのをこちらの都合で急に変えてしまったでしょ?そのお詫びを何かできないかなって夢菜さんと光さんに相談したら法国を二人で歩いてデートでもして来たら?って言われたからそのままデートって言ってみたんだけど言い方が間違っていたかな?」
「いや、まぁ、間違ってはいないと思うけどいきなりコハクからデートって言葉が出て来たから少し驚いただけだよ」
「そっか、なら良かったよ」
コハクがそう言った所で店員さんが頼んだ品物を持って来てくれる。
成程、デートと言う言葉はあの二人の入れ知恵だったか・・・思った通りだな・・・まぁ、楽しかったから良しとするか・・・
その後は二人で喋りながら食事をしていると横から聞き覚えの有る野太い声に声を掛けられる。
「私達も同席しても良いかしら?」
「どうぞ」
声のした方を振り向くとそこには少し前に別れたゴディニさんとレイダさんが立っていた。
驚いている俺とは裏腹にコハクは予想していた様に笑顔で返事をした後に紅茶の入ったカップに口を付ける。
「あら、ありがとう」
「ごめんなさいね。ありがとう」
対面に二人が座れる様にコハクの隣に席を移動するとゴディニさんとレイダさんがお礼を言いながら椅子に座る。
店員さんに注文をするとゴディニさんが口を開く。
「急にごめんなさいね。幾つか聞きたい事が有ったから貴女達を探していたの。まずは、薬はちゃんと届けられたのかしら?」
「はい、無事に必要としていらっしゃる方に届けることが出来ました。患者さんもギリギリでしたが何とか大丈夫そうです。その節は本当にありがとうございました」
その質問にリーフの時と同じ笑顔のまま答える。
その言葉を聞きゴディニさん達はホッとした様に頷くと些か緊張した様な顔になり口を開く。
「そう、それなら良かったわ。じゃあ、次が本題なのだけど・・・貴女は一体何者なの?」
「何者とは?どういう事でしょう?」
コハクのみに向けられたその言葉にコハクは驚いた様な様子を見せて答える。
その様子にゴディニさん達は更に警戒した様に険しい表情をしながら言葉を続ける。
「貴女からは死臭がするわ。それこそ夥しい数の人を殺している人殺しの臭いよ。とてもじゃないけどそんな貴女を薬師だとは思えないわ。もし、私達に害を為す存在なら今この場で排除するわ。もう一度聞くわね。貴女は何者なの?」
ゴディニさんの言葉に俺は思わず腰に下げている剣に手を掛けるがコハクは俺の手に自分の手を乗せてソレを止める。
その質問を終えたタイミングでゴディニさん達の注文した物が届き、店員さんが離れるとコハクが小さく笑いだす。
「フフフ・・・」
「何が可笑しいの?」
訝しげにゴディニさんが訊くとリーフの仮面を脱ぎ捨てトワの時の口調で喋り出す。
「あぁ、すまない。別に君達を馬鹿にして笑った訳では無いよ。ただ、やはりレティの手の者は油断できないと思ってね」
コハクの言葉にゴディニさん達が驚いている。
そんな彼等を無視し、コハクは言葉を続ける。
「あぁ、私の正体だったかな?私は今代の黄昏の魔王だよ。それと死臭の件に関してだが別に私が殺したくて殺した訳では無いさ。降りかかる火の粉を払っただけの結果だよ。一応は人間側の味方と見て貰いたいね」
そこまで聞き、ゴディニさんはお茶を一口飲むとゆっくりと口を開く。
「まさか貴女が黄昏の魔王だったとは思わなかったわ・・・あの方も貴女は味方だと言っていたけどまさかこんな少女だったとは・・・さっきはごめんなさいね・・・流石に黄昏の魔王が直々に動いているとは思わなかったものだから・・・」
紅茶の入ったカップに口を付けコハクはゴディニさんに答える。
「気にしてませんよ。むしろ未知の存在に対して警戒するのは流石、《ダイヤモンド》クラスの冒険者だと感心してますよ。私からも一つ質問ですが貴方方は火の勇者の監視役としてレティの命を受けて動いているんですよね?」
「驚き。私達の本当の冒険者ランクまで知っているなんて・・・ええ、その通りよ。私達はレティシア様に頼まれて火の勇者を監視する為に此処に来たわ」
そこまで聞き、コハクは席を立ちながら言葉を続ける。
「ならば私からもう一つお願いしておきましょう。火の勇者を今回の厄災戦には出さない様にしてください。はっきり言ってあの程度で戦場に出て来られては迷惑です。はっきり言ってクラシアはあいつ等を甘く見過ぎている。よろしくお願いします。行こう。狗神君」
そう言って人数分の代金を置きこの場を歩いて行ってしまう。
「あ~、すみません。俺も行きますね」
何となく居心地が悪くなり俺も二人に声を掛けその場を去ろうとするがゴディニさんに手を掴まれ声を掛けられる。
「狗神君って呼ばれてたかしら?貴方、勇者の一人よね?気を付けなさい。あの子、思っていた以上に不安定な子よ。一緒に居るつもりならいつかあの子を殺す事になるかもしれない事を肝に銘じておきなさい」
真剣な表情でそう言われてしまいその真意を確かめようとした所で俺の手を離し、ゴディニさん達も席を立つ。
「それと貴方、その恰好とっても似合っているわよ。もし、転職する気に為ったら私の所に来なさいな」
去り際にそんな事を言いウインクをして立ち去って行く彼等に今更ながら女装している事を思い出し何も聞き出すことが出来なかった。
・・・なんかシリアスな雰囲気だったのに台無しだよ・・・




