薬師の少女・2
おはようございます。
第137話投稿させて頂きます。
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また、誤字脱字報告もありがとうございます。
今回も火の勇者視点です。
楽しんで頂けたら幸いです。
「いきなり声を掛けてしまってごめんなさいね。少しだけ私達にもお話させて貰えないかしら?」
「あ、はい。私は大丈夫です。ツキハマさん。少しだけ待っていただけますか?」
筋骨隆々で見事なバリトンボイスで発せられるオネェ言葉にリーフちゃんは綺麗なエメラルド色の瞳を丸くしながら俺に彼等の話を聞く意思を示す。
正直、このまま俺のパーティの所まで行きたかったが依頼主の意向だし、彼女に悪印象を持たれるのは面白くない。
そんな事を考えた後で俺は笑みを浮かべて口を開く。
「もちろん。リーフちゃんが依頼主なんだから君が決めてくれて大丈夫だよ」
「ありがとうございます。ツキハマさん。お二人共、お話を聞かせて頂いても宜しいですか?」
そう言うと先程まで座っていたテーブルに全員で座り筋肉オネェ達の話を皆で聞く事になった。
全員が席に着くと筋肉オネェが口を開く。
「まず、時間を作って貰ってしまって悪いわねぇ。それで早速本題なのだけど貴女がそこの坊やと契約した事は分かっているのだけど私達も貴女に同行させて貰えないかしら?」
そう言われリーフちゃんはオネェ達の言葉の意図を掴もうとするかのように首を傾げる。
「実は私達は特区地区の調査をする予定なのよ。それで率直に言うと私達も貴女達に同行しても構わないかしら?もちろん私達が付いて行く立場だから報酬はいらないし貴女達の身辺警護もさせて貰うわ。報酬は坊やの分だけで大丈夫よ。なんなら私達も坊やに払っても良いわ」
「はあ!?」
オネェの予想外の条件の提示に驚愕し、俺は思わず声を上げてしまう。
正直言って冒険者であるこのオネェ口調のおっさん達が何でこんな一文にもならない提案をして来るのかわからない。
大きな声を上げた俺に周囲が注目する。
そんな中、リーフちゃんはオネェのおっさん達をしっかり見据えて口を開く。
「お話は分かりました。一つお聞かせ頂いても宜しいですか?」
「私達に答えられる事なら何でも答えてあげるわ」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて一つだけ。破格の提案ですがお二人にはどのようなメリットが有るのでしょうか?先に報告しておきますけど私は驚くぐらい足手まといですよ?お金を取らないと損だと思うレベルですよ?」
『リーフ、話がズレてる』
あ、冷静に見えたけど結構テンパっているやこの子、頓珍漢な事を言っている所にワコちゃんが冷静にツッコミを入れてる。
そんな二人と俺の事を見ながらオネェのおっさんはその厳つい顔に笑みを浮かべながら答える。
「まあ、驚くのも無理はないわね。メリットだけれども私達は貴女の薬草の知識を貸して貰いたいの。私達はギルドから特区地区の魔物と薬草の調査を依頼されていたのだけれども魔物は終わっても薬草の方はあと一歩という所なの。受付の子に相談したら丁度良いって貴女を紹介してくれたのよ。それに戦闘面も安心して貰って良いわ。私達はこれでも《ルビー》クラスの冒険者だし、そこの坊やと女の子も貴女の事を守ってくれるのでしょう?それらを含めてお願いできないかしら?」
それにしても《ルビー》クラスか・・・実力通りなら俺一人で皆を守るよりこのオネェ達にも守らせる方が効率的かつ安全性は上がるな・・・どうせ無料で使えるなら多少俺の旨味が減っても活用した方が良いだろう。
まあ、リーフちゃんが俺だけが良いと言うのならやぶさかでないが・・・
そんな事を考えているとリーフちゃんは俺の方を向き直り申し訳なさそうな顔で口を開く。
「ツキハマさん。誠に勝手な話なのですけどこの方々も御一緒に来ていただいても宜しいですか?私は相手の気配や位置を読むのは得意なのですが本当に驚くぐらい戦闘の才能が無いのです。このお二人は《ルビー》クラスの冒険者なのでツキハマさんの負担も軽くなると思うんです」
リーフちゃんは俺の予想通りの事を言い俺の返事を待っている。恐らく先に俺達と契約する前提で話を進めていたのでいきなり雇用する人数が増える事に申し訳なさを感じているのだろう。
彼女がそう言うのなら俺に否は無い。まぁ、正直言えば訳の分からないおっさん達とは一緒に居たくはないが仕方がない。
内心では面白くない感情を押し隠し顔に笑みを浮かべながら俺の答えを待つリーフちゃんに向けて口を開く。
「俺はリーフちゃんに雇われている身だから何も言う事は無いよ。さっきも言ったけど依頼主はリーフちゃん何だから君が決めてくれて大丈夫だよ」
「ありがとうございます‼」
俺がそう言うと彼女はぱぁっと花が咲いた様に笑いお礼を言って来る。
うん。家のパーティには居ないタイプで可愛い・・・
そんな事を思っているとリーフちゃんはおっさん達の方を向き、口を開く。
「それでは、私も出来る限りご協力しますのでお二人共、一緒に来ていただくのをお願いしてもよろしいですか?」
「契約成立ね。私の名前はゴディニ。主要武器は戦斧よ。魔法属性は土よ。貴女の知識頼りにしているわ」
「私はレイダ。剣士よ。魔法属性は水ね」
厳ついおっさんの方が手を出しながら自己紹介をし、もう一人の方も名を名乗る。
つか、二人共オネェ口調なのかよ。
「リーフです。薬師をやっています。一応、得意な事は薬品調合に魔物の感知、あと身を隠す事です。魔法の属性は風ですけど魔力量も低いのでほとんど使えません。よろしくお願いします」
『ワコ、剣士。リーフの護衛。魔法は光』
「俺は月濱 純也。武器は大剣で武器と魔法の属性は炎だ。今は《サファイア》クラスで活動している」
一通りの挨拶を済ませこの後の事を話し合う。
「さて、じゃあこの後の予定なのだけど今からすぐに特区地区の森に向かう?それとも準備を整えて明日出発する?私達はどちらでも大丈夫よ」
「私達も準備は整っているので何時でも行けます。ツキハマさんはどうですか?」
この後直ぐに件の特区地区という所に行くという話をし、リーフちゃんが俺にも聞いてくれたのでふとアンナ達の事を思い出す。
まずい・・・そう言えば彼女達は料理と一緒に酒も頼んでいた・・・リーフちゃん達と話してもう随分経っている。皆が酔いつぶれていないと良いが・・・
俺は結果を予測して多少の頭痛を覚えながら口を開く。
「皆、すまない。俺のパーティにまだ話をしていないから一度メンバーと話をして来ても良いか?」
「あ、はい!そうでしたね。私達もご挨拶の為に一緒に行きます」
リーフちゃんがそう言いながら椅子から立ち上がろうとするのを手で制して再び座らせる。
先程まではアンナ達にも紹介しておこうと思ったがアンナ達が酔っているのなら今はやめておいた方が良いだろう。
「いや、今更だけどひょっとしたら酔っぱらっている可能性が有るから少し待っていてくれないか?皆が酔っていたら俺一人で戻って来るから・・・悪いけどその時は出発を明日にして貰えると助かる。色々と準備もしたいからな」
「分かりました。私達は此処で待っていますね」
そう言った彼女達と別れ俺は急いでアンナ達の居たテーブルに向かう。
3人はかなりの量の酒を飲んだのかベロベロに酔っぱらっている。
そこに居た彼女達の様子を見て予想通りの光景に思わずため息を吐く。
そんな俺にベラが気が付き声を掛けて来る。
「あ~、ジュンヤさまぁ~、おしごときまりましたぁ~?
魅力的な子達だが先程のリーフちゃんやワコちゃんを見た後だと些か責任感に欠ける様な印象を受けてしまう。
そんな気持ちを心の奥に押し隠し俺は笑顔を作って答える。
「ああ、決まったよ。護衛の依頼で今からその場所に行こうという話になったんだけど今の皆の状態では無理そうだから明日に伸ばして貰おう。一応、依頼自体も野外で一泊の予定だから後で俺が用意しておくよ。だから皆はもう少しだけ待っていてくれ」
「「「は~い♡」」」
3人の元気の良い声を聞きながら俺は再びリーフちゃん達の所に戻り事情を説明して出発を明日に伸ばして貰った。
リーフちゃんやゴディニが笑いながら了承してくれたのが少しだけ幸いだった。
その後は報酬や細かい注意事項等を話合い。俺達は明日の探索に向けて準備をする事になった。
ここまでの読了ありがとうございます。
次で火の勇者視点は終わりの予定です。
暑くなってきましたので皆様も熱中症等にお気を付けください。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




