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お酒って怖いね・・・

おはようございます。

第133話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。

また、誤字脱字報告もありがとうございます。

楽しんで頂けたら幸いです。

☆は視点変更です。コハク→和登→コハクです

『今回は本当に助力してくださりありがとう。これからも同盟国としてよろしくお願いする』

「ええ、こちらこそよろしくお願いします」


 物凄く遅い朝食を摂り、愉快なエステ隊に全身を磨き上げられた後、私はコートだけ羽織りフードを被って通信機を使いクルシナ陛下と昨日の顛末と調査結果を話し合った。

 通信機は同盟直後に進呈したコンパクト型の物三機の内の一つだ。(一機は進呈した瞬間に師匠が研究の為に持って行った)

 報告会を終え締めの挨拶に入った所でクルシナ陛下が思い出したように笑みを浮かべながら口を開く。


「あぁ、そうそう。明後日のパーティーでも会えるのを楽しみにしているよ。魔王陛下」

「残念ながら今回は動き過ぎました。僕は多分いけないと思いますが勇者達には話しておきます。僕が付いて行かないからと言って変な誘惑をして陣地に引き入れようとしないでくださいよ?」


 少し無理矢理な笑みを浮かべながら明後日のパーティーの話をして来るクルシナ陛下に私は苦笑いをしながら欠席の旨を伝え、ついでに狗神君達にちょっかいを掛けない様に釘を刺す。

 まぁ、本来なら謀反者とは言え妻と息子を亡くした後なのだからパーティーなどする気分では無いのだろう


「はっはっはっは‼出来る限り善処はしましょう」


 目を逸らし乾いた笑いを漏らすクルシナ陛下をジトっとした目で睨みつける。

 ・・・いや、このおっさんこれ幸いと思っていたな?

 ジトーっと睨みつけるとクルシナ陛下はコホンと咳払いをして口元に微笑を浮かべると更に言葉を続ける。


「まぁ、本当に貴女が来れないのなら貴族連中の動向に気を付けておきましょう。まぁ、私はそうは思っていないのだがね。では、失礼するよ」

「?ええ、それではまた」


 最後に気になる一言を残したが私はそれでクルシナ陛下との通信を終えた。

 通信を終えた私は羽織っていたコートを脱ぎアイテムボックスの中に仕舞い込み椅子の背凭れに寄り掛かりフーっと息を吐きながら先程得た情報を整理する。

 昨日運び出された4人の遺体どれも凄惨な殺され方をしていたらしく。現場には首を持ち去られたシレネの死体、喉を一突きにされたクライトの死体、四肢を切り飛ばされ頭を叩き割られたデイルの死体、真っ二つに切り裂かれた王妃の死体の血肉が散乱した状態だったらしい。ぶっちゃけ、最初に見つけたテトが良く吐かなかったよね・・・

 正直、彼等を誰が殺したのかも気になるところだけどそれよりも気がかりな事が二つある。

 一つ目は現場から消えた物。シレネの首とデイルの剣は何の為に持って行ったのか・・・

 二つ目は残ったシレネの体。検死をした結果、死後三年が経過していたらしい。

 一つ目の方のデイルの剣と二つ目のシレネの死体については何となくだけど説明が付く。

 デイルの剣は分解、解析して新たに同性能の量産品を開発する為、シレネの体の問題は恐らくだけど私達の接していたシレネは第八の厄災で三年前に誰か(恐らく本物のシレネ)を殺して体を奪ったのだろう。

 大体のモノにはこれで説明が付くけどシレネ首が持ち出された事だけが説明できない。一体、犯人は何の為に首(恐らく第八の厄災の本体?)など持ち帰ったのだろうか・・・?

 考えていた事を一旦放棄し、だらしなく背凭れに寄り掛かりながら私はフーっと重く溜息を吐く。

 そのまま何も考えずにだらしなくソファーにダレていると不意に談話室のドアが控えめにノックされる。


「どうぞ~」


 恐らくメイド長かリューン達だろうと思い私はだらしなくダレたまま返事をし、入室を促す。

 メイド長だったらお小言を言われるだろうが今日ぐらいは大目に見て貰いたい。

 そんな事を考えていると予想していなかった男性の声が聞こえて来る。


「おはようコハ・・・うお‼」


 街から帰って来たのか何かの包みを持った狗神君はだらけた私の格好に驚きの声を上げながら私の事を凝視している。

 ・・・しまった・・・来た人物が予想外過ぎて完全に油断していた・・・彼等の前で此処までだらけた姿なんて見せていなかったのに・・・

 内心でそんな事を思いつつ私は何事も無かった様に姿勢を正すと顔に笑みを張りつけながら口を開く。


「おはよう。狗神君。そしてお帰りなさい」

「・・・何事も無かった様に取り繕ったな・・・改めておはようコハク。体調は大丈夫?」


 狗神君は私の様子に苦笑しながら私の目の前の長いソファーに腰掛けながら挨拶を返してくれる。

 狗神君の言葉を笑って誤魔化しながら私は狗神君の問いに答える。頼むから見なかった事にして・・・


「うん、まだ少しだけ怠いけど問題は無いよ。心配してくれてありがとう。明日はいつも通り稽古も出来るよ」

「そっか、良かったよ」


 そんな会話の後、私は狗神君に昨日、彼等と別れた後の事やその顛末を話す。


「はぁ~、何だか厄介な事になってるんだな・・・」

「うん、全部後手に回っているよ」


 話を聞き終え狗神君は溜息を一つ吐き眉間に皺を寄せながらソファーに深く座り込む。

 あぁ、そう言えば彼に村を守って貰った事をしっかりお礼は言っていなかったなぁ・・・早い内に改めて言っておこう。


「あ、そうだ。狗神君。昨日は急いでいてちゃんと言っていなかったから改めて言わせて貰うね。皆で私の故郷である村を守ってくれてありがとう」


 私がそう言って頭を下げると狗神君は頬を掻きながら些か気まずそうに口を開く。


「あ~、あの時はなんか悪かったな。コハクが決めた事に口出しちゃって・・・」

「違うよ。狗神君がああ言ってくれたお陰で私は大切な人達の命を諦めずに済んだよ・・・本当にありがとう・・・」


 私がそう言って頭を上げると狗神君は、今度はニッと笑う。


「そっか、役に立てたなら良かったよ。これからは思い悩む前にまず相談して頼ってくれよ」


 私のお礼の少しだけ得意げに茶化してくれる狗神君に私も少しだけ笑いながら口を開く。


「うん。じゃあ、これからは結構な無理も頼もうかな」

「お、おう。どんと来い」


 そんな言葉て私と狗神君はなんだか可笑しくなり何方ともなく笑ってしまう。

 二人で笑っているとノックされたので「どうぞ」っと答えるとお盆を持ったリューン達が入って来る。


「お疲れ様で~す。お茶とお菓子を持ってきました~」


 そう言いながらリューン達は手際良く私と狗神君の前にカップとチョコレートの乗ったお皿を用意していく。

 喋って丁度喉も乾いた頃だったのでとてもありがたい。


「それでは、ごゆっくり~」


 最後になぜか意味深な笑顔を残して去って行くリューン達を見送り私は狗神君に向けて声を掛ける。


「折角だし、食べようか?」


 そう言いながらお皿に乗せられているチョコレートを一つ手に取り口に運ぶ。

 この時の私は本当にうっかりしていた。最近どんなお菓子を試作したのかを忘れてしまい。このお菓子を迂闊にも口にしてしまった事を私はこの後、一生後悔する事になる。


 ☆


 なぜだ・・・なぜ今こんな事になっている?

 そんな事を考えながら俺の膝の上に嬉しそうに頭を乗せている少女の銀の髪を優しく梳いてやる。


「ん~、もっと~」


 そう言って猫の様にスリスリと頭を擦り付けて来る少女・・・コハクには何時もの凛とした様子はなくそれどころか実際の年齢よりも幼く見える。

 ・・・一体どうしてこうなったんだ?

 コハクの頭を撫でながらこうなる迄の経緯を思い出す。

 買い物を終え、黄昏の城に帰って来てコハクが起きた事をこっちに来ていたヴァネッサさんから聞き会いに行って昨日の顛末を聞きコハクから改めてお礼を言われた。

 その後でリューンさん達が持ってきたお菓子をお互いに喋りながら口にし、少ししてからコハクは唐突に座っていた椅子を立ち上がると俺の横に座りこれまた唐突に俺の膝の上に頭を乗せて寝っ転がったのだ。


「なっ⁉はあ⁉どうしたんだコハク⁉」


 突然の事に驚き声を上げるとコハクは俺の右手を掴み自分の頭に乗せて嬉しそう笑いながら口を開く。


「なでて~♪」


 そして今の状態である・・・可笑しいどう考えてもお菓子を食べてからコハクの様子が可笑しくなった絶対に原因はこのお菓子だ。


「コハク、ちょっとだけごめんな」

「ん~?」


 コハクに一言だけ断りを入れ俺は少しだけ前に屈みコハク側にあるチョコレートを一つ手に取り口に放り込む。


「‼」


 チョコレートを歯で噛み砕いた瞬間に鼻を衝くアルコールの香りに驚く。

 幾つかのチョコレートを割って見てこうなった原因がチョコで有った事を確信して溜息を吐く。

 コハクの前に置かれていたチョコレートは俺の前に置かれていたものと違い所謂チョコレートウィスキーボンボンだったのだ。

 しかも、ご丁寧にジャムやクリームに混ぜて有ったりして分かり難くしている物まで混ぜて有る。

 リューンさんの最後の意味深な笑みはコハクがこうなる事を予想してやがったな・・・てか、コハクよ。君はどれだけお酒に弱いんだ・・・

 左手で頭を抑えながらコハクを撫でていると唐突にドアがノックされヴァネッサさんの声が聞こえて来る。


「イヌガミさん、開けても良いかい」

「あ、えっと・・・どうぞ」

 俺の返事と共にドアが開き真っ赤な髪に狼の耳の美人が入って来る。


「どうも、会頭を引き取りに来たぞ」


 事前にリューンさんから話を聞いていたのか特に驚いた様子も無く俺に近づきコハクの様子を見る。


「あ~、う゛ぁねっさだぁ。どうしたの~」


 俺の膝の上で頭だけを持ち上げて嬉しそうに口を開く。

 ヴァネッサさんはその様子を見て俺と同じ様に片手で頭を抑えるとあちゃ~っと言った様子で口を開く。


「あー、これは相当出来上がってるなぁ・・・全くあいつ等加減を知らないのかい・・・悪いね。イヌガミさん。こんな状態の会頭の相手をさせちまって・・・ほら、会頭。部屋に行って休もう」

「んー」


 そう言いながらヴァネッサさんが手を出すとコハクはそっちに抱き着いて行く。

 コハクを軽々と抱き上げたヴァネッサさんは俺の方を向き口を開く。


「17歳の男子には本当に酷な状態でほっといてしまって悪かったね・・・会頭は酒に弱い上に酔うと甘え癖が有るんだよ・・・アンタが紳士で良かったよ・・・」


 そう言いながらヴァネッサさんはコハクを連れて部屋から出て行った。

 俺しかいなくなった談話室で俺は密かに今後コハクには酒を飲ませないように気を付けようと思った。


 ☆


 朝の日差しでゆっくり意識が覚醒して行き、隣に温もりが有る事を確認する。

 横には昨日は会えなかったネージュが幸せそうな顔で眠っている。

 恐らく昨日とは打って変わって早い時間に目が覚めたのだろう・・・

 ゆっくりとベッドの上で仰向けになり両手で顔を覆いポツリと一言を漏らす。


「やってしまった」


 昨日の痴態を思い出し、私は耳まで真っ赤にしながら小一時間程ベッドの中で悶え苦しんだ。


因みにコハクは最初の一個目のチョコレートの時点で酔ってしまっています。

ここまでの読了ありがとうございます。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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