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黄昏の国へ帰る

おはようございます。

第131話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。

また、誤字脱字報告もありがとうございます。

楽しんで頂けたら幸いです。

 柔らかい肌触りの布の感触と共に漂って来る消毒薬の臭いで沈んでいた意識が覚醒して来て瞼をゆっくりと開く。

 怠い体を起こし周囲を見渡すと昔懐かしい保健室のベッドに寝かされていたらしい。

 流石に夜になると懐かしい保健室でも不気味に感じてしまうのは私がこういうシチュエーションが未だに苦手だからだろう・・・マジで蠟燭の明かりだけとか勘弁して頂きたい・・・

 蝋燭明かりだけの薄暗い保健室に一人だけという状況に内心ガクブルしていると不意に右隣から女性の声が聞こえる。


「起きた・・・のね?」

「‼」


 何も無いと思った暗闇からヌッと無表情のレイン先生が現れ私は思わず身を固くする。

 正直、悲鳴を上げるという失礼をしなかっただけ偉いと褒めて頂きたい・・・え?剣を抜こうとしなかったのかって?幽霊(あいつ等)に剣が効くか‼

 そんな事を考えている内にレイン先生は部屋の光源を上げて私の近くに来て診断を始める。


「治癒魔法で・・・残った怪我は・・・回復させたけど・・・やっぱり・・・まだ・・・顔色が・・・・悪いわね」


 いえ、まぁ、顔色が悪いのは血が足りないのも有りますけどさっきまでの暗い保健室からいきなり出て来る人というシチュエーションの所為なので気にしないでください。

 そんな事を考えている間にもレイン先生は私の体の検診をテキパキと進めている。


「それにしても・・・貴女・・・どういう生き方をして来たの・・・骨折痕だけで32か所、打撲したと思われる個所で20か所、最もひどいのは右肩から右腕に掛けての火傷痕・・・その他にも爪や刃物による裂傷痕複数・・・普通なら死んでいるわ・・・」

(刃物による傷は人間によるものね・・・)

「あははははは・・・まぁ、何とか生きてます」


 レイン先生の言葉に私は気まずくなり目を逸らしながら笑って答える。


「笑い事じゃ・・・ない」

「・・・はい」


 笑って煙に巻こうと思っていたら普通に怒られちゃった・・・


「全く・・・今回・・・負った怪我で・・・治っていなかった・・・所は治したけど・・・無理は・・・禁物よ」

「はい、気を付けます。私はどれぐらい寝てたんですか?」

「今が・・・10時だから・・・大体、3時間・・・ぐらいね」


 そんな話をしている内に検診が終わったので私は血で汚れた服を脱ぎアイテムボックスから新しい服を取り出して着替える。

 ・・・そろそろ服の在庫も無くなって来たな・・・トムさんに修理と一緒に新しい物を注文しておかないと

 そんな事を考えながら着替え終えた所で保健室のドアが叩かれる。


「どうぞ」


 私が着替え終えたのを確認したレイン先生がドアの向こうの人物に答える。

 レイン先生の言葉に扉が開き、テトが入って来る。


「失礼します。レイン先生、コハクは起きましたか?」

「ええ・・今・・・起きたわ・・・」


 そう言いながら近寄って来るテトに向かって控えめに手を振って見るとちらりと私を見てからレイン先生に向って口を開く。


「先生、すみませんが少しコハクと二人で話させて貰っても良いっすか?」

「・・・わかったわ。私は・・・外に・・・居るから・・・余り・・・無理を・・・させては・・・駄目よ」

「うっす」


 テトの言葉にあっさりと承諾すると席を立って外に出て行ってしまう。

 え⁉ちょっと待って!戦闘中は普通に話していたとはいえ、今はテトと二人で話すのは気まずいです‼

 そんな私の心情を知らないレイン先生はスタスタとドアに向かって歩いて行きあっという間にバタンとドアが閉じる。


「よっ、地下で見たよりは多少回復したみたいだな」


 第4の厄災戦前に別れた時や此処に到着した時の様子とは違い。いつも通りのテトの様子に私は困惑しながらテトの顔を見る。


「何だよ?俺の顔になんか付いてるか?」


 私の様子にテトはちょっとだけ顔を顰めながら私の言葉を待つ。

 そんな彼に私は戸惑いながらも口を開く。

 まだ村が無事だとは分かっていないだろうし尚更テトの態度に納得が出来ない。


「あ・・・ごめん・・・前みたいに話し掛けて来てくれたから少し驚いただけ・・・もうそんな風には話して貰えないと思ってたから・・・」


 素直に胸の内をテトに明かすと彼は気まずそうに頭を掻きながらゆっくりと答える。


「あー、その・・・戦場での事は俺も悪かった・・・二人が此処に来た時にリルから村の無事も聞かされたし、かなりの激戦の後に此処に来たお前の本心も考えろって怒られたんだよ・・・その・・・悪かったな・・・あんな態度を取って・・・」

「・・・いや、人の心が見えるわけじゃないのにそんな無茶な・・・」

「だよな・・・」


 テトの言った言葉に自分の眼の力も忘れて呟くとテトも苦笑いを浮かべながら同意する。


「ま、そんな事を言われたんでな。改めて聞いておこうと思う。コハクあそこで村を見捨てるって判断は本心だったのか?」


 表情を改め真面目な口調に戻したテトの質問に私も真面目な顔で答える。


「魔王としての判断は間違っていなかったと今でも胸を張って言うよ。でも、私個人の本心ではないよ。この言い方でテトが納得するかは分からないけどね」

「そっか、分かった。ありがとな素直に答えてくれて。よし‼これでこの話は終わりだな。今まで通りに頼むぜ」

「・・・ありがとう」


 そう言ってニッと笑うテトに私も笑いながらお礼を言う。

 正直に言ってテトから言わせれば私の答え方で納得など出来るはずも無いだろうがそう言っていつも通り接してくれると言ってくれた事が素直に嬉しかった。


「さてと、じゃあここからは別の話だ」


 再び表情を引き締め、テトはクライト達の顛末について話してくれた。

 結論から言うとあの時逃げたクライト達は何者かに惨殺されていて誰も生き残っては居なかったらしい現場からはシレネの首とデイルの剣が持ち出されており何者の犯行かは分からないらしい。


「コハクが倒した副団長や行方不明のナウゼリン以外の連中は生きてるからあいつ等から話を聞くらしいけどすっきりしない終わりだな・・・」


 そう言って息を吐き出しテトは椅子の上で伸びをする。

 ナウゼリンについては後ほど時間を設けて報告する事にしよう。

 私はデイル達を殺した犯人について考えていると伸びをしていたテトが思い出したように脇に置いていた包みを持ち上げる。


「あぁ、そうだ。アランからコレ返しておいてくれって頼まれてたんだ」


 テトから包みを受け取ると中には地下で落とした《クラミツハ》が現れる。


「もう一本は男5人でも持ち上がらなかったから後で自分で回収してくれってさ・・・全くどんな剣使ってんだよお前」


 《オカミノカミ》の場所を教えてくれながらテトは呆れた様に私の剣について聞いて来る。


「あー、アレには私以外が持つと重くなるって言う盗難防止機能が付いてるんだよね・・・」

「マジかよ・・・」


 失礼な、別に私が《カグツチ》と《オカミノカミ》に盗難防止機能を付けた訳じゃない。

 若干引いたような様子のテトをジトっとした目で見ながら私はゆっくりとベットから降りる。多少ふらつく様な気がするけど問題は無いだろう。


「行くのか?」

「うん、そろそろ国にも帰らないといけないし、《オカミノカミ》を回収してそのまま帰るよ」


 ベッドから降りた私に帰るのかを聞いて来るので私は笑いながら答える。


「あ、そうだ。リルも一緒に行くのか聞きたいのだけど何処に居るの?」


 リルの居場所を聞く私に椅子から立ち上がろうとしていたテトが一瞬、思い出した様な顔をして口を開く。


「あぁ、忘れてたぜ。リルは3日後に祝いの宴が有るからそれまで残るそうだ。てか、リストがそうしてくれって頼んでた。あと、その祝勝パーティーには勇者達や魔王達も出席してくれってさ」


 その言葉に私は苦笑いを浮かべながら返事をする。


「わかった。私は出席出来ないと思うけど狗神君達には話しておくよ。魔族側は代理を立てて置くって伝えておいて」

「おう」


 その言葉を最後に私とテトは保健室を出てレイン先生にお礼を言ってから私は《オカミノカミ》を回収する為に地下へテトは伝言を伝える為にアラン君達の元へ向かう為に別れた。


 夜の地下というこれまたホラーでありそうな光景に些か後悔しながら私はまだ生々しい血の跡の残るホールまで行き《オカミノカミ》を回収してから使い捨ての転移陣を使って数日振りに国に帰還した。


ここまでの読了ありがとうございます。

あと数話でイリアでのお話は終わりになります。

ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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