熊との闘い
こんにちは、第12話を投稿させていただきます。
二話に分けようかと思ったのですが、一気に書いてしまったのでそのまま投稿させていただきます。
少し長くなってしまったのはご了承ください。
「テトラ・ウインドエッジ」
発生した風の刃が今まさに強靭な爪で引き裂こうとしてきたブラッドベアの腹部を切り裂き大量の血を飛び散らせる。
「あと、5匹!」
バックステップで返り血を避けるとちょうど強化魔法が解ける。
「テトラ・ライトニングオーラ」
着地と同時に強化魔法をかけ直し、息を整えながらブラッドベアの位置を確認する。
ユユ達と別れてから大体一時間ぐらいが経った。そろそろ村に着いて大人達にこの事を伝えてくれた頃だろう。大人の足なら子供よりは早く着くだろう。
ブラッドベアの群れを見つけた場所から少し離れてしまったが、今いる場所までに転々と様々な死に方をしたブラットベアの死体が続いている。この死体を追って来てくれればうまく合流できるだろう。
いい加減テトラの使い過ぎでそろそろMPもまずい・・・
MPの状況的にも速く合流するに越したことはない。
「しまった!見失った」
MPや大人達との合流に気を取られてしまいイビルベアとブラットベアから一瞬注意をそらしてしまった。その隙にイビルベアは私の視界から消えてしまった。
慌てて周囲を見回すと不意に後ろから気配がする。
まずい、と思い前方に向かって跳躍すると同時に背中に激痛が走る
「痛っ!」
くそ・・・後ろに回り込まれていた
空中で一回転し、着地すると腕を振り下ろした状態のイビルベアがさっきまで私の立っていた場所の後ろにいた。
くそ、離れていた子分熊達もイビルベアの周りに集まってきた・・・
「テトラ・ヒール」
イビルベア達から目を離さずに背中の傷を魔法で応急処置して血を止める。
血が止まり、多少痛みが和らいだ所で三匹のブラットベアがこちらに向かって突進してくる。
「テトラ・ライトニングストーム」
最初に突っ込んで来たブラットベアが雷と風の混合魔法を真正面からくらい後ろに続く二匹を巻き添えにして吹き飛んでいく。
「テトラ・ライトニングランス」
吹き飛んだ三匹を雷の槍で貫き止めを刺す。
「トリ・アイスニードル」
後ろを振り向き近付いてきた四匹目に魔法を放つ、ブラッドベアの顔に氷で出来た無数の小さな針が突き刺さり怯んだところにさらに魔法を叩き込む。
「テトラ・ウインドエッジ」
風の魔法で四匹目の首を切り飛ばす。これで後はイビルベア一匹!
ブラッドベアの奥にいたイビルベアを見ると手下が死んだからなのか非常に不愉快そうにこちらを睨んでいる。へぇ、熊って表情有ったんだぁ・・・
少しの間睨みあってから同時に動き出す
「テトラ・アクアアドヒーシブ」
突進してくるイビルベアの足元に向かって粘着性を持たせた水の魔法を放つ、真直ぐ突進してきているにもかかわらず私の魔法をあっさりと避けると一気に距離を詰めて襲い掛かってくる。
跳躍して襲い掛かってくるイビルベアに向かって走り下をスライディングで潜り抜けながら魔法を打つ。
「テトラ・スリーアイスアロー」
三本の氷で出来た矢がイビルベアのお腹に刺さり血が噴き出し、苦痛の唸り声を上げる。
「くそ、やっぱり倒せないか…」
ダメージは有るものの倒すまでにはいかなかったようで怒りに満ちた目でこちらを見てくる。
「テトラ・ウインド…」
立ち上がり、ブラッドベアの方を向きながら追撃を喰らわせようとしたところで沢山の石が飛んできた。
慌てて避けるが、ゴキっという鈍い音と共に右腕に激痛が走る。
「ぐぅ!!」
痛みをこらえてイビルベアを見ると右腕の地面が爪の形に抉れており、右腕を振り抜いた形で立っていた。
こいつ、遠距離攻撃もしてくるの!?
くそ、やっぱり本と実物は違うか…
MPが残り少ないので腕は治療しないでそのままにしておく。
連続して飛ばしてくる石を躱しながら先程ブラッドベアが立っていた場所の後ろに着地して体制崩す。イビルベアは私が体制を崩したのを見逃さず、一気に距離を詰めてきて
その爪で直に殺そうとしてくる。しかし、私からほんの1mぐらいの所で急にその動きを止める。
「はぁ~、やっと掛かってくれた。ごめんね、こんな形で終わらせて」
息を吐き、右手を抑えながらイビルベアの前に立ちそんな言葉をかける。右手は痛いし背中の傷もまだ痛む。ぶっちゃけ、これ以上戦いたくない
イビルベアはさっき私が使った魔法アクアアドヒーシブに足をしっかり固定されて動けなくなっている。
動けなくてもなお攻撃してこようとする姿は称賛に値する。
「ごめんね。私はまだ生きていたいし、人を食べた貴方達をこのままにしていたら何時か私の居る村も襲われてしまうから、私は本当に個人的な我儘でこの場にいた貴方達を滅ぼします。」
右手から手を離しギリギリ届かない距離でイビルベアの顔の前に左手をかざし、止めの魔法を放つ
「テトラ・ウインドウエッジ」
風の刃で首を撥ね、一撃でその命を絶つ。
首を撥ねてしばらく痙攣していた体が完全に動きを止め死んだことを確認してから私は大きく息を吐いた。
「はぁ、とりあえず生きている…」
気を抜いたとたんに右腕の痛みと背中の痛みが強さを増してきた。
「痛っ!いくら痛みが生きている証拠って言ってもこれは痛すぎでしょ…」
魔法の使い過ぎでボーっとする頭でとりあえず、右腕の応急処置をしようと考えていると不意に周囲が暗くなりその瞬間に物凄い衝撃が襲い吹き飛ばされた。
大きな岩に叩きつけられ強化魔法を使っていなかったら確実に死んでいたであろう衝撃が全身を襲う。
「!?」
全身の痛みに耐えながらさっきまで自分の立っていた場所に目を向けるとそこにはさっきまで私と戦っていたイビルベアよりもう一回り大きい体をしたイビルベア立っていた。
「さっきの奴がボスじゃ無かったの…?」
もう一匹のイビルベアは私の殺したイビルベアの死体から離れるとゆっくりと私の方に歩いてくる。
マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ
動かなければいけないのに体が言う事を聞かない。思考も全然働かない。
ただただ無意味な思考をしているうちにイビルベアが目の前まで来る。
「ユユ、ごめん。約束守れなかった…」
「ヘキサ・アビスホール!」
死を覚悟していると何処からかそんな声が聞こえて来た。
イビルベアの足元に真っ黒な穴が開きそこから無数の骨の腕が出てきてイビルベアに絡みつくとそのまま穴に引きずり込んで行き、穴の中から血飛沫を上げると頭だけになったイビルベアが吐き出される。
誰かが近くに来るのを感じながら私の意識は暗闇に閉ざされていった
次回から別のキャラクターの視点に変わります。
コハクは一旦お休みです。




