報告と対策会議
おはようございます。
第119話投稿させて頂きます。
評価ポイント・ブックマーク本当にありがとうございます。とても励みになります。
また、誤字脱字報告ありがとうございました。
楽しんで頂けたら幸いです。
さて、黄昏の国からイリアに戻り、門番さんに怪しい人間を見る目で見られながらクルシナ陛下に出して貰った通行許可証を見せ、門を潜る。
はぁ~、変装しなくって良いって楽だ・・・
まぁ、この格好がデフォルメの時点で私は相当末期なのだが・・・
そんな事を考えながら街の中を歩き、お城へ向かう。
丁度、皆訓練に参加しているらしいのでそっちで合流した方が早いだろう。
歩いていると私の視界に訪ね人と書かれた看板が目に入り思わず足を止めて眺めてしまう。
「えうわぁ・・・・」
看板を見た私はこれまた思わず奇声が口から洩れる。
その看板には8年前の私の特徴と現在の年齢、現在はこうなって居るのではないかという予想の描かれた人相書きが色々なパターンでずらりと張り出されていた・・・
リルが私の言葉に微妙な顔をしていたのはこれが原因か・・・
「アラン君に言って撤去して貰わないとなぁ・・・」
心配してくれたのは嬉しいけどこれはやり過ぎだよ。アラン君・・・
そんな感想を抱きながら私は足早にお城へと向かった。
お城の兵士に声を掛け狗神君達の居る騎士団の訓練場に足を運ぶと丁度、騎士達と手合わせを行っている所だった。
遠くから控えめに眺めて居ると何故か段々と奥の方から悲鳴が聞こえて来る。
驚いてそちらに目を向けると師匠が笑いながら騎士や山辺君を吹き飛ばしていた。
・・・何してんだあの人
そう思いながらとりあえず止めた方が良いと思い駆け寄ろうとすると私より早く狗神君が師匠に向って行き師匠の木剣を自分の木剣で受け止める。
師匠も本気ではないのだろうが師匠の剣を狗神君は適切に捌いていき隙を見て反撃まで入れている。
しかし、それがあまり良くなかったのかもしれない。狗神君の受けや反撃を見て徐々に師匠もヒートアップしていく。とうとう木剣に魔力まで流し始めた。
・・・・本当に何しているの?あの人
内心で呆れながら私はいよいよ歯止めの利かなくなって来た二人の間に木剣を二本持って割り込んだ。
右手の木剣からはバシンっと左の木剣はガキンっと木剣では鳴りようのない音を上げて師匠の物も私の物も砕け散る。
「そこまでです。これ以上は怪我では済まなくなりますよ」
「こ・・・トワ⁉」
「おや?トワさん。お帰りなさい」
突然の私の乱入に狗神君は驚いた様に師匠はいつも通りに私の名前を呼ぶ。逃げ惑っていた騎士達も驚いた様子だ。
「お帰りなさいではないですよ。訓練で怪我人が出たらどうするんですか?特に木剣に魔力まで纏わせるなんて何考えているんですか?シャレになりませんよ」
私の言葉に師匠は珍しく視線を逸らしながら言い難そうに口を開く。
「いやぁ・・・研究に行き詰ってつい・・・最後は彼が私の剣を受け止めたのでついつい本気になってしまいました。それにレインも居ますし、ちょっとの怪我なら大丈夫かなぁ~っと・・・」
「レイン先生が居るからと言って怪我をさせて良いという理屈にはならないでしょう。あんまり良いように利用していると愛想つかされて離婚されますよ」
「う・・・・それは困りますねぇ・・・」
師匠は歯切れが悪く返事をする。
おや?師匠が意外にも動揺している。何だかんだでレイン先生の事を大切にしている様だ。
良かった。良かった。レイン先生の言う通り幸せみたいだ・・・・
心の中で2人が幸せそうな事に安堵しながら私は口を開く。言っておくことは言っておかないとね
「ちなみにわ・・・僕は助けません。それと、調査結果と厄災の対策案について話したいのでクルシナ陛下と騎士団長達を会議室に集めてください。拒否権は有りませんよ」
「そっちが、本題じゃないんですねぇ・・・わかりました。まぁ、今回は確かに私が悪かったですからねぇ・・・」
師匠は心底反省した様な様子で言葉を返し、お城に入って行く。
う~ん、師匠もこの8年で些か丸くなったのかなぁ・・・8年前だったらもっと言い返された気がする。ちょっと寂しい気がするのは私が相当毒されているからだろう・・・
「狗神君、大丈夫だった?」
師匠が居なくなったのを確認してから私は木剣を下げて狗神君にそう問いかける。
「あぁ、助かったよ・・・正直、もう限界だった・・・」
狗神君はその言葉と共にへたりとその場に座り込む。安心したのか、額から汗が噴き出してくる。かなり緊張していたみたいだ。
「山辺君も大丈夫かい?」
「だ~いじょ~うぶで~す」
先程、吹き飛んでいた山辺君に無事を確認すると妙に間延びした返事が返って来た。
うん、山辺君は後でポーションを飲んでおこうね。
「嘘だろ・・・あんなに小さいのに暴虐の賢人であるゲネディスト教諭の剣を止めたぞ・・・」
「ワト殿も流石、勇者だな・・・」
「イヌヤ殿も無事で良かった」
他の勇者達の無事や被害を見ていると周りからひそひそとそんな声が聞こえて来る。
おい‼誰だ‼小さいって言ったの‼小さくないよ‼周りが大きいんだよ‼今は160㎝(5㎝の厚底靴装備)有るんだよ‼
聞こえてきた声にそんなツッコミを入れながら私は密かに溜息を一つ吐いた。
それから少しして人払いをして貰った会議室には私と勇者一行、クルシナ陛下と他の重鎮達(クライト派や偏った意見を持っていない人達を厳選してくれた)、カルファダ騎士団長(私も初めて会った)、あと、呼んでも居ないのに騎士団長にくっついてきた神経質そうな副団長(偉そうに名乗ってたけど忘れた)、師匠にアラン君とライオネス王太子が集まった。
全員が席に着いたのを確認してから私は今回の調査で起った出来事の報告と厄災対策の話をした。
まぁ、厄災の対策とは言ってもこいつ等は町や村にどれだけの被害を出さないかがカギになって来るので首都までの通り道の近くにある町や村には魔物を避ける為の嫌気香や魔道具をありったけ使ってもらいこちらは所とから少し離れた場所で魔物を引き寄せる好気香を焚いておびき寄せた所を倒すと言うだけなのだけどね・・・
結局の所、第4の厄災に関してはこれが一番有効で最終的には真っ向から潰すしかないって手記にも書いて有ったんだよね・・・
後は目星をつけた場所を使っても良いかをクルシナ陛下に許可を貰ってオウルに頼んだ嫌気香と好気香が届いて村や町に配れば準備の第一段階は終わりである。
「ふざけるな‼首都を危険に晒すような作戦を我々が簡単に許可すると思っているのか‼」
そこまで話した所でそんな言葉と同時に机をダンと叩き、騎士団長に付いて来た副団長が耳障りな声で叫びだした。
全く持ってこの場に招待していないのにギャアギャアっと五月蠅いね・・・
「ふざけてなどいませんよ。僕はこれが最善と思われる案を提示したまでです。文句が有るのなら代替え案を出してください。無いのなら黙って貰えませんか?こちらも遊びでやっている訳では無いので代案が無いのなら話す事なんて有りません。自己満足で場をかき乱すな」
五月蠅いオマケに些か苛立ちながら威嚇するとオマケはイライラした顔で口を噤む。
時間が無い時に無駄な事を言う無能が一番イラつく・・・何でこんなのが副団長なんてやっているんだろう・・・
「少し良いですかな?トワ殿?私も代替え案は無いのですがこの作戦は何処まで有効なのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
私とオマケの話が一段落着いた所で重鎮の一人が控えめに手を挙げてこの作戦の有効性を聞いて来る。
まぁ、気になるよね。
私は先ほどの威圧するような態度を一変させて口を開く。
「申し訳ありませんがこの作戦が何処まで有効なのかは僕にも分かっていません。これらは先代が残してくれた過去の記録を元にして立てたものです。僕も流石に保証は出来ません」
「分かりました。ありがとうございます」
その後はもう少し話を煮詰めて目を付けていた土地の使用許可をクルシナ陛下に出して貰い。
勇者達とリルとマカさんを残してクルシナ陛下達は退室して行った。
途中でオマケのこちらを睨みつけるような顔が気になったが恐らく何も出来ないだろう・・・
残ってもらった皆は何が有るのかと疑問を浮かべている。
はぁ、これからする話は楽しい話ではないから気が重い。特に山辺君と夢菜さんには特に言いづらい・・・
不思議そうな皆に私は今回、遭遇したエリス・ケールの事、ヴィレドさん達の戦死の報告、それを隠していた理由や今回隠していたそれらを話すことにした理由などを丁寧に説明する。
エリス・ケールの存在に皆は強張った表情を作り、山辺君と夢菜さんはヴィレドさんとマティスさんの死にはやはりショックを隠せない様だった。
山辺君は悔しそうな顔をしていて夢菜さんは光さん達が慰めていた。
「第3の厄災の時に白夜の国で起きていた事を隠していて申し訳なかった・・・ヴィレドさん達は皆に身近な人達に為っていたから知ったらショックを受けると思ってフェル達と話して隠していました。皆を信じていなかったとかそう言う理由では無いのでそこの所は理解してもらえると幸いです・・・・」
幸いな事に私がそう謝ると皆は快く許してくれた。
許してくれる際に夢菜さんや光さんから一つだけお願い事を聞くという約束をした。
次の次ぐらいに第四の厄災編に入りると思います。
ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




