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一方、その頃

おはようございます。

第117話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。

本当にとても励みになります。

また、誤字脱字報告ありがとうございました。

今回は和登とフェル視点です。

楽しんで頂けたら幸いです。


 訓練している兵士の声や悲鳴を聞きながら膝に月夜を乗せ、休憩中にコハクから渡された《精神抵抗の指輪》を見ながら此処を出て行く前にコハクの言っていた事を思い出す。


『それじゃあ、私は少しの間調査なんかの為にここを離れるけど皆は騎士の人達に話を聞いたりしておいてね。帰ってきたらみんなで情報を共有しよう。それと念の為に皆に《精神抵抗の指輪》を渡しておくよ。もし、第三王子の婚約者殿が近づいて来たら一応、気を付けておいてね。じゃあ、行ってきます』


 そう言って彼女はネージュに乗って森などの調査に出かけて行った。


「はー、気を付けるって言っても何を気を付ければ良いって言うんだ?」

「何置いて行かれた子犬みたいな顔をして溜め息吐いてんだ?置いて行かれて寂しいのか?」


 そんな事をぼやきながら思わず溜め息を吐いていると横に同じ様に休憩に入った乾が腰掛けて来る。

 乾の言葉に少しムッとしながら俺は口を開く。


「そう言うわけじゃないよ。てか、なんだよ。置いて行かれた子犬って?」

「鏡見て来いよ」


 俺の抗議の言葉に乾は真顔でそう返す。

 ・・・失敬な・・・別に子犬みたいな顔はしてない・・・よな?


「で?実際、お前は彼女の事をどう思っているんだ?」


 乾の言葉に少しだけ頭を悩ませる。

 どう思っているかってコハクはクラシアに殺されそうになった時に助けてくれたし、何だかんだで剣も教えて貰っているし・・・

 そんな事を考えながら俺は顎に手を当てて答える。


「・・・恩人?」

「駄目だこりゃ」


 乾が呆れた様に肩を竦める。

 多少、ムッとするがとりあえず今は話題を変えよう。


「そう言えば乾の方はなんか情報聞けたか?俺の方は皆第三王子に相当頭に来ているくらいだった」


 俺が騎士から聞けた情報を乾に話すと乾も渋そうな顔で答える。


「露骨に話題を逸らしたな。まぁ、いいか。俺も似たようなもんだったな。まぁ、もう少ししたらまた聞き回ってみようかね。今はトワの師匠が乱入して来て皆話どころじゃなくなっちまったからな・・・」


 悲鳴が聞けてきたのはそれが原因か・・・

 悲鳴のする方を向くと黒髪の男性が高笑いを上げながら騎士達を相手にしている。兵士が宙を舞ってるよ・・・

 聞いた話だとあの人、魔法使いとか研究者だって言ってなかったっけ?

 てか、明日ってあの先生から魔法の講義を受けるんだよな・・・大丈夫か・・・・?

 俺は溜息を吐きながら巻き込まれて悲鳴を上げて吹っ飛んで行く戌夜の姿を眺めていた。



 意外だった・・・意外と言っては失礼だけど意外だった・・・デクリノミアさんに教わるよりも理解出来た・・・

 コハクにはなんでしっかり講義してあげなかったんだろう?


「あの・・・お隣、宜しいですか?」


 授業も終わってお昼時になり一人で人目の少ない中庭の隅の方の椅子に座りながらぼんやりとそんな事を考えていると控えめにそんな声を掛けられる。

 顔を上げると淡い水色の髪をツーサイドアップにした少女が少し不安げに立っていた。

 少し前にコハクから警戒する様に言われた第三王子の婚約者だ。その顔を見て俺は警戒を強める。


「えっと・・・あの・・・」


 俺の返答がない事に彼女はあたふたとし始める。流石に何も言わないのは体裁的にも良くないか・・・コハクやアラン王子達の行動に問題が起こるかもしれない。


「どうぞ・・・」

「ありがとうございます」


 嬉しそうに微笑みながら彼女は俺の横に腰掛ける。こんな所を見られたら第三王子が五月蠅そうだな・・・

 そう思い腰を上げようとすると少女は慌てた様に控えめに口を開く。


「あ、あの・・・何処かに行かれてしまうのですか?宜しければ少しお話相手に為って頂きたいのですが・・・」


 少し不味いな・・・・人目が少ないとはいえ完全に視線が無いわけでは無い。一緒に居るのも不味いが第三王子の婚約者にこういわれて断っては外聞が悪くなる。俺の行動でコハク達の足を引っ張るわけにはいかないのに・・・適当に付き合って用事が有ると言って逃げ出すか・・・

 彼女から少し離れた所に再び座り俺は慎重に口を開く


「分かりました。しかし、何故、お・・・私に?私と貴女には面識は無かったはずですが?」


 そう言うと彼女はハッとした顔で慌てて立ちあがり、口を開く。

 近くで見て思ったけどどことなく男受けの良さそうな動作が多いなこの子・・・


「あっ‼名乗りもしないで申し訳ございません。(わたくし)の方が一方的に知っておりましたのでつい馴れ馴れしく話し掛けてしまいました・・・私は、シレネ・アルネイトと申します。アルネイト男爵家の娘でこの国の第三王子様であるクライト・デイスト・イリア様の婚約者です」


 貴族令嬢らしい所作でカーテシーだっけ?っというお辞儀をする。

 挨拶されたら返さないのも礼儀に反してしまうので立ち上がりレクセウス(師匠)さんに習った騎士礼をして返す。

 くそ、なんか完全にペースを握られてるな・・・


「冒険者のワトアです」


 一応、念の為にフェルシア王国で決めた偽名と冒険者の方の身分を名乗って置く。これは少し前に皆で決めた事で警戒が必要そうな人物に偽名と勇者の身分は隠蔽する事にしている。

 そんな挨拶を終えた後で俺達は再び席に着く。


「それでですね。不躾ながらワトア様に声をお掛けしたのはですね。お願いが有るからなんです」


 席に着くと唐突にシレネは口を開き何やらお願いが有ると言って来る。

 正直、いきなり本題かと身構えながら俺は返事をする。


「シレネ様、私は平民の身分なので呼び捨てて構いませんよ?それで私にお願いとは?」


 俺の言葉に彼女は顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに答える。

 やはり一々男受けしそうな所作が気になる。


「あ、それではワトアさんと呼ばせて頂きますね。それでですが・・・あのですね・・・実はわたくし、冒険のお話が好きでして・・・よろしければワトアさんの経験して来た冒険のお話をお聞かせして貰えないかと思いましてお声を掛けさせていただいたんです。それでどうでしょう?報酬はお支払いいたしますので私に冒険のお話をお聞かせ願えないでしょうか?」


 その言葉を聞き俺は少しだけ考える。冒険の話をするだけならば多少話しても大丈夫か?そもそも彼女から離れるには少しだけでも話した方が離れやすいか・・・余り第三王子に嫌悪感を持たれても厄介だしな・・・


「分かりました。私の話なんかで良ければ少しですがお話させて頂きます」

「本当ですか‼ありがとうございます‼」


 そう言うと彼女は俺の手を取り喜んで見せ、その行動にハッとなり顔を赤らめて慌てて手を離す。

 ・・・これはこういう動作で気が有るアピールをしているのだろうか?

 そんな事を考えながら俺は当たり障りのない冒険譚だけをシレネに話して聞かせた。

 まぁ、途中の経過でコハク(トワ)が俺の剣の師匠などは話してしまったが一応大丈夫だろう。


「まぁ、私の話はこんな所ですかね。楽しんで頂けましたか?」

「はい‼とっても‼でも、一つだけ気になる事が・・・」


 一通りに話を終え、シレネに話し掛けると彼女は嬉しそうに返事し、何かを疑問に思ったのか疑問を口にする。


「あの黒いコートの方がトワさんと言いましたっけ?あの方は本当にワトアさん達の事を御仲間だと思ってらっしゃるのでしょうか?お話を聞いている限りだとワトアさん達に隠し事も多そうですし、今だってワトアさん達を放っておいて何処かに行ってしまわれているじゃないですか」


 シレネはコハクが俺達の事を仲間と思っていないかもという疑問を投げかけて来る。

 成程・・・彼女の狙いは俺達に対して疑心感を植え付ける事か・・・それにしても、俺も迂闊だった。最初はかなり疑っていたはずなのに重要な事は話していないとはいえ此処までの話を話してしまった・・・

 そんな悔しさを隠し、俺は彼女の言葉に乗るように表情を作り口を開く。


「そ、それは、私達はまだ弱いし、人には誰だって隠したい事は有ると思いますよ。だからトワの態度だけでそんな決断は下せないですよ」


 多少、動揺した風を装い答えるとシレネは顔をズイッと近づけ熱弁を始める。


「でも!やっぱりおかしいですよ‼仲間というのは皆で強くなる物だとクライト様も言っておりました‼あの‼もし、よろしければ他の皆様と一緒にクライト様と御一緒に活動されてみませんか?きっと今の状況がおかしいとお気づきになると思うんです」


 あぁ・・・駄目だ・・・正直、ウザイ・・・最初の動作や言動を見ていて思ってはいたけど俺は彼女に対して良い感情は持てそうにない。ついでに言うとさっきから膝の上の月夜が俺の足を噛んで早く立ち去れと急かしてくる。

 いい加減、離れた方がよさそうだ。そうじゃないと俺の足が血塗れになる・・・・

 そんな熱弁をする彼女に内心うんざりしながらあくまで動揺している風を装い口を開く。


「えっと・・・真にありがたいお話なんですけどまだ私も動揺しておりますし、他の皆にも聞いてみますので返答は控えさせてください。それでは申し訳ありませんが私はそろそろ御暇させて頂きます。お気遣いいただきありがとうございました」


 そう言って席を立ち一礼する。


「あ、私の方も楽しいお話ありがとうございました。それと最後に変な事を言ってしまい申し訳ありませんでした。でも、宜しければ御一考ください」

「えぇ、ありがとうございます」


 その言葉を最後に俺は彼女に背を向けて足早にその場を離れる。他の皆にも注意して話をしない方が良いと改めて言っておこう・・・コハクが何を隠していようと関係ない。俺達はコハク達を信じると決めたのだから


 ☆


「あ~、そこそこ。うん、次はもうちょっと右、そうそう、そこそこ~」

「フェル様、痛くはないですか?」

「全然問題ないなぁ・・・気持ちええよぉ~、ありがとうなぁ、ミア~」


 一日の仕事が終わり、風呂にも入って後は休むだけという段階に入り、テルミアの膝の上に顎を乗せながら俺は獣の姿のままテルミアに背中をブラッシングして貰っていた。

 尻尾を振りながらその気持ちの良さに目を細める。この姿はちょっと他人には見せられない。

 それにしてもテルミアも大きくなったものだ・・・8年前にうちに来た時にはまだまだ小さくて俺の後ろを着いて回って可愛かったのに今では出るとこは出て一丁前の淑女に育った。・・・まぁ、未だに俺の後ろを付いて回っては居るのだが・・・

 社交界に出れば男の視線は彼女に釘付けだろう。俺やテルミアの兄であるラルフリードが悪い虫は抹殺するけどな・・・

 8年前にテルミアの祖国であり暁の国の貿易相手の一つであるテルミアの腹違いの兄でメルルクの王太子であるラルフリードにテルミアを預かるように頼まれた時には一瞬何を言われているのか分からなかったがなんだかんだで預かる事になり、今では大切な妹分の一人だ。

 なんでも、当時のメルルクで盛大に王位継承争いが有ったらしくテルミアを避難させたかったらしい。

 そこで当時、貿易をしていて友好関係を結んでいた俺に目を付け、テルミアの事を秘密裏に暁の国へ避難させたのだ。ついでに言うと誘拐犯不明の誘拐扱いらしい。

 まぁ、現状は落ち着いた様だしそろそろテルミアを国に帰しても大丈夫だろう・・・その場合、毎日毛繕いして貰っていた連中からブーイングが飛んで来るな・・・

 そんな事を考えていると部屋のドアを叩く音がして返事を待たないで扉が開かれるこの城でこんな事を平然とやるのは一人しかいない。

 俺は薄く目を開けてメイド服を着た灰色の縞々生物に声を掛ける。


「アライちゃん、いくら俺達の仲とは言え部屋に入る際は返答を待とうぜ~」


 そう言うと彼女は素知らぬ顔で何時もの抗弁を口にする。


「僕の事はちゃんではなく。敬称無しのフルネームで呼んでくださいと言っているでしょう。それより急いで支度してください。コハク様とオウル様が見えています。アポは有りませんが火急の知らせが有るとの事ですよ。テルミア様、後で僕にもブラッシングをお願いします」

「はい、じゃあ、後でやりますね」


 ちゃっかり、テルミアに毛繕いをお願いしてやがる。アライちゃん、自分は男と言いながら変な所で女の子の部分が出て来てるんだよなぁ・・・本人気付いてないけど・・・

 あと、テルミア、嫌なら嫌と言って良いんだぞ・・・

 そんな事を考えながらテルミアの膝の上から頭を上げトコトコとコハク達に会いに行くあいつ等だし今更畏まった格好をする必要もない。どうせオウルの奴も梟の姿でコハクの肩か頭にでも停まっているんだろう。


「あ、フェル様、わたくしも後でコハク様と話しに行っても良いですか?」

「あぁ、コハクに言っておくよ。そういう時間もアイツには大切だろうからな。だからテルミアは部屋で待っていてくれな。ひょっとしたらアイツは泊って行くかもしれない」

「はい‼わかりましたわ‼」


 元気な返事をし、テルミアはアライちゃんと共に部屋から出て行くその後姿は16歳なのにまだまだ幼い印象を俺に与えた。

 テルミア達を見送った後、俺はコハク達が待っている会議室に向う。

 扉を開けるとそこには白い梟とこれまた8年で美少女に育ったもう一人の妹分が座っている。まぁ、こちらは傾国のっと付いてもおかしくない美貌なのだが本人がそんなの気にしないのも有って些か残念系なのだが・・・


「フェル、いきなり押しかけてごめん。でも早急に報告したい事が出来たんだ」


 そんな妹分は俺の姿を確認するとその見た目に合わない口調で口を開く。

 全く、魔王という立場上しょうがないがもう少し何とかならんのかね?

 まぁ、ソレはともかくコハクがこう言う時は碌でもなくて本当に急ぎの時だ。そうでなければオウルだって来る訳がない。

 俺は気を引き締めながらコハクに次の言葉を促す。

 コハクは多少、緊張したような面持ちで頷きアイテムボックスから一本のアンプルを取り出しテーブルの上に置く。

 見覚えの有るアンプルには『辛い眠気もこれ一本‼超進化薬』と書かれたラベルが貼られている。どう見ても数日前に白夜の国から奪われた危険薬物の一つだ。


「私の故郷の村で今日、ゴブリンロードが発見されたんだ・・・・そいつの巣の中に使用済みのそのアンプルが見つかったんだ・・・」


 その言葉に驚きつつアンプルをオウルと共に見分していると途中で言葉を切っていたコハクが更に驚きの言葉を口にする。


「それと・・・多分、その薬の使用者で白夜の国の隠し倉庫を襲撃した人間意に合った」

「本当か⁉」

「接触したのか⁉」


 その言葉に俺とオウルは声を揃えてコハクに詰め寄ってしまう。

 コハクにしては珍しく暗い表情で頷き口を開く。


「犯人は多分、前に話した金髪金眼の女だよ。名前も相手から名乗ってくれた・・・エリス・ケールって言ってた・・・」


 そう言ったコハクを見て俺達は眼を見開く。前に聞いていた金髪金眼の女の話をしているコハクは僅かに震えていた。

 はっきり言ってこいつがこんな風に何かを怖がる素振りを見せるのはレイスやお化け系の魔物や奴等と接触した時ぐらいしか見た事がない。それだけ異常な光景なのだ。


「交戦したのか?お前が無事で良かった・・・」


 驚きを隠しつつコハクに無事だったことを良かったと言うと彼女は小さく首を振る。


「私の実力じゃない・・・完全に相対した時に蹴落とされたのをエリス・ケールに見逃して貰っただけ・・・それに完全に無事というわけでも無かった・・・」


 そう言いながらアイテムボックスからストリアのおっさんの愛剣でもあった《カグツチ》を取り出し、慎重に鞘から抜く。

 鞘から抜かれた《カグツチ》はその刀身に無数のひび割れが入り少しの衝撃でも崩れそうな無残な姿に為っている。

 はっきり言って魔王の専用武器とも真っ向から切り合える剣の無残な姿に俺もオウルも言葉を失う。


「不意打ちの一撃を防いだだけでこうなっちゃった。はっきり言って今の私では絶対に勝てない相手だったよ」


 力なくそう言うコハクに俺もオウルも人型になり思わずコハクの頭に手を乗せ撫でて慰める。

 テルミアは嬉しそうにするがコハクは転生者なのも相まって普段は嫌そうな顔をするのにそんな様子を見せない所を見ると相当に参っているらしい。


「兎に角、お前が無事で良かった。怪我なんかは無いんだな?」

「うん、それは本当に大丈夫。それに一通り森やなんかを見て回ったけど他に薬が使われたような様子は無かった。とりあえず、フェル達と情報を共有する事が大切だと思ったから取り急ぎこっちに来たんだ」


 コハクは、撫でられ多少落ち着いたのか再びアイテムボックス手を突っ込む。


「それと前に私が持って帰ったナイフと同じ様な装備が手に入ったからこれも持ってきた。出所はエリス・ケールだけどフェル達の方でもこの装備について調べて貰える?」


 そう言って取り出した武器は何処にでもある普通の弓や剣だった。前に言っていた装備を貫通する異常武器だろう。


「分かった。調べておく。オウルには良いのか」


 武器を預かり自分のアイテムボックスに放り込むとオウルの分がない事に気が付き質問する。


「うん、オウルには作って貰いたい薬が有ったから連れて来るついでに渡しておいた」


 すっかり落ち着きを取り戻した様子に些かホッとしてから時間を確認し、かなり遅い事に気が付く。

 今後の対策を話し合うには些か遅い時間なのでここ等で休んだ方が良いだろう。


「とりあえず、オウルもコハクも今日は泊って行け」


 テルミアが話したがっていたがコハクが来た時点でかなり遅い時間だったし、明日で我慢して貰おう・・・

 そう思いながら立ち上がりメイド達に寝室を用意させようとするとコハクが服の裾を引っ張る。

 何かと思いコハクの方を見ると何か言いづらそうに口をもごもごさせている。

 本当に今日はこいつの珍しい所をたくさん見る・・・


「あの、一つだけ二人にお願いが有るんだけど良い?」

「なんだ?言ってみろ?」


 言いづらそうにそう言うコハクにオウルと俺は珍しい物を見る顔で答える。

 こんな感じのコハクの願いだ可愛い妹分の為にちょっとした無茶なら聞いてやろう。

 俺とオウルはそんな事を思いながら珍しいコハクのお願いを聞いてみた。



「「何でこうなった⁉」」


 数分後、俺とオウルは獣の姿のまま間の抜けた声を上げる。

 今の状態は俺が獣の姿の状態で少し大き目のサイズになり背中を上に向けうつぶせの状態でベッドに横になっている。腹の上にはテルミアとコハク、それに人型になったネージュを真ん中にして三人が頭を乗せて寄り添うように眠っている。

 コハクの腕の中には梟体のオウルが抱かれている。

 確かに昔はコハクが幽霊系に出会った時にこんな感じで寝ていたことが有ったけど流石に成長してからは無かった・・・

 そんな昔の行動を取ってしまうぐらいに今回、コハクは弱っていたという事か・・・

 妹分の様子を心配しながら俺もとりあえず眠りに着く事にした。


コハクは念の為に精神抵抗の指輪を渡しましたが今回は無駄に終わりました。

フェルやオウルはコハクやテルミアの事を小さい時から見ているので女性としては見ていません。

イクスが授業をちゃんとした理由は次のお話で出そうと思います。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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