表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/332

邂逅

おはようございます。

第115話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。

また、誤字脱字報告もありがとうございました。

お詫びです。前回、里帰りがこの話で終わりになる予定と言いましたが想像以上に長くなったのであと一話続きます。


楽しんで頂けたら幸いです。


 ユユとムウの結婚式から一夜過ぎて翌日の早朝、私は朝の型稽古を終えてさっそく森の探索を再開した。

 昨日は子供達やテトとの遭遇で碌に探索出来なかったので早く済ませて次の行動に移るつもりだったのだが・・・


「これ以上ついて来るならまたお母さん達に怒られるよ?アウイン君」


 道中で立ち止まって木の陰に隠れているアウインに声を掛けると彼は焦ったように更に身を隠す。

 全く朝も早いのに元気な子だ。


「今なら誰にも言わないから早く村に帰りなさい」

「ちょ!それは狡いだろ‼」


 私の言葉に焦ったのかアウインは少し怒ったように木の陰から飛び出してくる。


「狡い?何が狡いというのかな?僕はちゃんと村長さんに許可を得ているけど君は禁止されている事をしているんだ。もう8歳なのだからバレた時に怒られるリスクぐらい考えているだろう?」


 まぁ、実際問題、8歳児にリスクを考えろと言っても無理だろうね。むしろリスクを考えて行動する子供とかちょっと考えたくない。


「きょ、許可なら父さんから取ってる。トワとなら森に入っても良いって昨日言ってた」

「はい、嘘だね」


 アウインの必死の反撃を私は無慈悲にも一刀両断する。

 アウイン、知らないから無理もないけど私に嘘は通じないんだよ。まぁ、これに騙される人間は居ないだろうけどね。


「ネージュ、悪いけど村まで行ってテトを呼んで来てくれる?僕達は此処から少し離れた所にある開けた場所に居るから頼むよ」


 私の言葉にネージュは頷き私の頬に一回頭を擦りつけると村に向かって飛んで行く。

 村からも結構離れてしまっているので一人で帰すには心配だ。それにちゃんと村に戻るとは限らないしね・・・


「さ、アウイン。ネージュがテトを連れて来るまで君はこっちで僕と待機だよ」


 そう言いながらまだ何かを言おうと考えているアウインの手を引いて森の中で木の無い開けた場所に移動する。

 中心にある切り株に手をつないだままアウインを腰掛けさせてテトとネージュを待つ。


「それで?君は何で皆に注意されても森の中を探索しようとするのかな?」


 そんな言葉と共に私は空いている右手でアイテムボックスから果物水の入った水袋を取り出しアウインに手渡す。

 話すにしても何か飲みながらの方が話しやすいだろう。

 水袋を受け取り、中身を恐々と飲みながら(恐々と飲むなら受け取るんじゃないよ)アウインは口を開く。


「・・・村にデルガっていう奴が居るんだけど・・・そいつにお前の姉ちゃんはイビルベアやドラゴンと戦うぐらい勇気のある人間だったらしいけどお前は臆病だって馬鹿にされて・・・俺だって勇気ぐらいあるって証明したかったんだよ」


 悔しそうに顔を歪めたまま、再び水袋に口を付けるアウインに私は溜息を一つ吐き口を開く。

 要するに村に居るがき大将みたいな子に馬鹿にされたのが悔しかったのか・・・全く持って余計な事を言ってくれる。


「アウイン。初めに一つだけ言っておこう。君のお姉さんの話だけど彼女の行動は勇気ある行動ではないよ。僕から言わせれば彼女のそれは蛮勇だ。彼女は危険や周囲の心配を理解していながら一人で飛び込んで行った。どんなに正義感に溢れて正しいと感じて行動に移したとしても、周囲の心配や迷惑を考えないのならそれは蛮勇だ。そして、アウイン。君も今、両親や村の人達の心配を蔑ろにして危険な森に入ろうとしている。君のそれは蛮勇だ。自分の事だけではなく両親の事も考えて行動する様にした方が良い。自分だけでなく周囲への影響を考えて危険に立ち向かうことが出来るのが本当の勇気なんだよ」


 まぁ、私はそれが出来ないからいつまでも蛮勇なのだけどね・・・全く、どの口で説教などしているのか・・・そんな言葉を口の中で噛み潰しアウインを見る。

 私の言葉にアウインはムスッと言った感じで怒鳴り声に近い声で私に反論する。

 現状であまり大声はやめて貰いたいのだけどね・・・


「そんな事わかってるよ‼でも‼姉ちゃんもテトの兄貴達も生きてるじゃないか‼それに危険な森って言うけど小動物一匹居ないし、今は安全じゃないか‼」


 アウインの怒鳴り声に私はゆっくりと冷静に答えながら周囲を見渡す。

 ・・・くそ、テト達は間に合わなかったか


「良いか、よく聞け、アウイン。君の姉やテト君達が生き延びたのは戦闘能力の高い学校の先生がたまたま村を訪れたりしていて運が良かっただけだ。一歩間違っていれば村ごと全滅していたんだ。大人達はそれが分かっているから君達に森に入らない様に言い含めて村や子供の安全を守る為に高価な魔道具で魔物から防衛しているんだ。それに、この森が現状で安全なんてとんでもない。冒険者ギルドの調査で元々いたブラッドベア等の大型の魔物がこの辺りから姿を消していると報告されている。それにも関わらず()()()()()()()()()()()()()()小動物が一匹も居ないというこの状況は異常なんだ。この森にはそれらを捕食する別の何かが移り住んでいるんだ」


 その言葉と共に私はオカミノカミを剣帯から取り外し、鞘ごと振って飛んできた矢を叩き落とし、アウインを小脇に抱え上げて広場に為っているような場所から離れる。


「なっ!?はあ!?」


 私にいきなり小脇に抱えられてアウインは悲鳴の様な声を上げながら顔を赤くしている。

 まぁ、いきなり抱えれたら驚くか・・・反論は聞かないけどね


「な、なんなんだよ・・・・ご、ゴブリン⁉」


 アウインは私の腕の中で文句を言いながら視線を先程居た場所に向け、弓を構えてこちらを狙っているゴブリンアーチャーを見て悲鳴を上げる。


「正確に言うとゴブリンだけではないね‼」


 そう言いながらこちらにすごい速さで接近して来て斧を振り下ろそうとしているレッドキャップをゴブリンアーチャーの放った矢に向けて蹴りつけて盾にする。


「れ・・・レッドキャップ・・・と、トワ・・・やばいよ。逃げよう」


 ほぉ、ゴブリンにしてもレッドキャップにしても良く名前を知っているじゃないか、本で読んで勉強したのかな?あ・・・実家の私の部屋にその手の本が置きっぱなしだったわ・・・

 アウインは先ほどまでの様子から一変して怯えたように逃げようと言い出す。

 まぁ、この年で私みたいに平然としていた方がおかしいのだからこれが普通だろう。


「逃げたいのは、山々なんだけどね・・・このまま逃げるとこいつ等を村に案内するようなものなんだよ。良いかい?アウイン、少しきついし怖いかもしれないけど耳を塞いでしっかり目を瞑っているんだ。良いと言うまで絶対に目を開くなよ」

「わ・・・分かった」


 そう言うとアウインは両手で耳を塞ぎギュッと目を瞑る。

 その様子を確認してから私はオカミノカミを一振りし鞘を外して構え、背後から迫って来たもう一匹のレッドキャップを切り捨てる。

 切られた仲間を見てゴブリン達がひるんだ隙に私はアウインを抱えたまま奴らに矢の届かない木の上に避難し太い木の枝の上にアウインを降ろして目を開けて良い事を告げる。


「もう安全なのか?」


 不安そうな顔でそう聞くアウインに私はコートの釦を外しながら答える。


「いや、依然として危機的状況なのは変わらないよ。僕としても君を抱えたままでは十分に戦えないからね。奴らの手の届かない場所に君を避難させた」


 その言葉と同時にコートを脱ぎ、それをアウインの上に掛ける。

 アウインはコートの下から出て来た私の冒険者服に些か驚いているらしく目を大きく見開いている。


「アウイン、これを被ってテトとネージュをここで待つんだ。恐らく、テトは大きな声を上げて探しに来る。声が聞こえたら返事をして助けて貰うんだ」

「トワは?トワはどうするんだ?ここでテトの兄貴を待たないのか?」


 私の言葉にアウインが不安げに聞いて来る。

 一人にするのは可哀そうだがもう少しでテト達が来るはずなのだ。それに私といる方が絶対に危険だ。


「僕は奴らを処分してくる。怖いかもしれないけど少し我慢してくれないかい?」

「一人でかよ‼危ないよ‼それはさっき言ってた蛮勇とは違うのかよ‼」


 そう言って立ち上がろうとした私のスカートを握りながらアウインは涙声でそんな事を言って来る。

 私はもう一度かがんでアウインを優しく抱きしめて口を開く。


「そうだよ。アウイン。危険な場所に一人で乗り込むこれは蛮勇だよ。私はこれしか出来ないからね。君は私の真似なんてしなくて良いんだよ。誰かに言われなくてもいつか君が勇気を見せる時はきっと来る。君はテトと合流してこの事を皆に伝えて村に警戒態勢を敷いてもらうんだ。それが今の君が見せられる勇気だよ」


 そう言いながら体を離し私は仮面を外して笑顔を見せながら更に言葉を続ける。


「それにね。私はこう見えて結構強いんだ。その辺は安心して貰って大丈夫だよ。直ぐにこいつ等を倒して村に戻るから私の顔を見たことは誰にも内緒だよ」


 そう言ってアウインの頭を撫で仮面を被り直してカグツチを鞘から抜き、オカミノカミを握りなおして木から飛び降りる。

 飛び降りて着地と同時の近くに居た2匹のレッドキャップの首を落としゴブリンに投げつけて怯んだ所に接近し、何匹かを葬り、私に注意を引きつけ取り囲んでいた全部が追いかけて来るのを確認してから私は森の奥へと駆け、眼で見て確認したこいつ等の足跡を頼りに巣まで走る。巣を潰さない事には完全に安全とは言えないからね。

 追跡してくるゴブリンやレッドキャップを切り伏せながらしばらく走ると木や草が刈り取られた場所を視認する。その奥には洞窟とその周りに数十匹のゴブリン達も視認できるのでゴブリンやレッドキャップの巣で間違いないだろう。

 巣を確認した私は後ろに方向を転換し追いかけてきた残りのゴブリン達を始末する。急に方向を転換してきた私に追い掛けて来たゴブリン達は悲鳴も上げられずに切り捨てられる。

 追いかけてきた連中を始末し、再び方向を転換して広場に居るゴブリン達に向かって突っ込み近くにいた2匹の命を刈り取る。

 突然の私の襲撃に周囲に居たゴブリンが声を上げて騒ぎ立てる。全滅が目的だからね。呼んでくれる方がありがたい。

 叫び続けているゴブリンの首を刎ね飛ばし広場に居る全てにゴブリンを殲滅したころに洞窟からガチャガチャと音を鳴らしながら鎧を着込んだゴブリンナイトやゴブリンメイジ等が姿を現す。

 ・・・おかしい。ゴブリンが持つにしては鎧や武器の品質が良すぎる。


 ☆


 名称:縺却隕九

 刀匠:不明

 スキル:無し

 特性:慕ュ峨↓

 クラス:ノーマル


 ☆


 そう思い武器や鎧に向けて目を使うと数ヶ月前に金髪金眼の女が投げて来たナイフと同じ様に文字化けしたステータスガ見て取れる。結局、あのナイフも鍛冶屋さんやオウル達に見せても何もわからなかった。

 相手の装備をチェックしている内にゴブリンナイト達は私を囲み戦闘態勢に入る。少し時間を使いすぎたか・・・まぁ、どちらにしても得体のしれない装備に向かって突撃するバカは居ないよね。

 私は息を一つ吐くと相手を魔法殲滅するための魔法を放つ。


「《オクタ・サイプレス・サーヴァント》」


 その一言で私を中心にして《ルクス・スフィア》の様な光球が無数に展開される。

 それらは個々にゴブリン達の方に飛んで行き距離を詰め射程内にゴブリン達を捉える。


「ファイア」


 最後の起動ワードを口にすると光球から光の槍が発射されゴブリン達の鎧も関係なく貫く。

 《サイプレス・サーヴァント》サイプレスやその眷属と戦いそれらを元にして考え出した新しい魔法の一つだ。

 ゴブリン達は何が起こったのか分からないと言ったような顔で胸や頭に黒焦げた傷痕を作り地面に沈んで行った。

 全匹の死亡を確認してから私は洞窟の奥に潜んでいる上位種に向かって声を掛ける。見た所あまり広くはない様だ。声は十分に届くだろし、上位種ならこちらの言っている事も分かるだろう。


「隠れてないで出てこい。逃げても無駄だし、出てこないならこの洞窟を消し飛ばすぞ?」

「ギー」


 私の言葉に憎々し気な唸り声を上げながら依然見たゴブリンキングより豪華な装いに剣まで持ったこの群れの王が姿を現す。名称もゴブリンキングではなくゴブリンロードだ。森から上位の魔物が消えてそんなに経っていないはずなのにキングより滅多にみられないロードが生まれているなんておかしくないか?

 そんな事を考えながら私が剣を構え直すとゴブリンロードは死体が積み重なっているのにも拘らず私が女だと分かりにやりと笑っている。

 こういう所はロードだろうと平ゴブリンだろうと変わらないみたいだ。

 お互いに距離を取っていると唐突に私の周囲に魔法陣が浮かび上がりそこから100を超えるゴブリン達が召喚される。


「召喚魔法?」


 その光景に驚き思わず声が漏れる。通常のゴブリンロードは召喚魔法なんて使えない。そもそも私はこの世界で召喚魔法なんぞという物の使い手はフィルクス支部長しか知らない。

 少々、驚いたがコイツの事は始末した後で調べればいいか・・・

 私が驚いた事で何かを勘違いしたのか勝利を確信したように召喚したゴブリン達に指示を出し、一斉に襲い掛かって来る。

 その光景を見ながら私は冷たい声音で魔法を発動させる。


「オクタ・コキュートス」


 その言葉で私の居た広場一帯は一瞬して凍り付く。ゴブリン達は驚愕の表情を浮かべたまま凍り付き絶命している。

 ピシッと言う音と共に氷像になったゴブリン達にヒビが入り粉々に砕ける。

 ゴブリンロードだけは調べる必要が有るので原形はとどめている。

 戦闘の終了を確認し、私は念の為に巣穴を調べる為に一歩を踏み出そうとした所で嫌な予感がし咄嗟にカグツチを後ろに振るう。

 ガキンっという金属同士のぶつかり合う音と共に左手に衝撃が走る。


「およ?まだこんなに動けるんだぁ♪」


 そんな軽い言い方と同時に左手に掛かっていた重さが無くなり目の前に襲撃して来た何者かが着地する。

 警戒しながら姿を確認すると狗神君達を救出するときに見た黄金の瞳にふわふわの金髪をツインテールにした恐ろしく整った容姿の少女が光すら吸収している様な漆黒の長剣を持って立っていた。


此処までの読了ありがとうございました。

投稿できれば18時ぐらいに続きを投稿したいと思いますので宜しくお願い致します。

出来なければすみません。

ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ