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魔王様、故郷に帰る・2

おはようございます。

第113話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。

また、誤字脱字報告ありがとうございました。

楽しんで頂けたら幸いです。

 はいぃ⁉なんでこんな所に子供が居るの⁉この森は私達の事件が有ってから子供だけで入る事を禁止されたはずだ。

 考えられる事と言えば恐らく今から行われる結婚式の準備に紛れて森に入ったんだろう。要するに悪ガキ坊主という奴だろう。見た目的には8歳くらいかな?まぁ、昔の私達も子供だけで森に入っていたから子供だけで入っていても不思議ではないけど・・・

 昔を思い出し、笑いそうになる顔を仮面の下で正し、真面目な声音で襲撃者の子供に話を聞こうと口を開く。


「さて、君達は此処で何をやっているのかな?そこに居る君も含めてお話を聞かせて貰えないかな?」


 驚いてギャアギャア騒いでいる子達に声を掛けた後、少し離れた木に向かって声を掛けるとそこからおずおずと捕まえた子達と同い年くらいのストロベリーブロンドの髪の女の子が今にも泣きそうな顔で出て来る。

 あぁ、うん、本当にごめん。私のこの格好で声を掛けられたら怖いよね・・・


「ミリー、馬鹿‼逃げろ!」

「村まで走れ‼」

「大人を呼んでくれ‼」


 男の子達三人は女の子を逃がそうと必死に叫ぶ。あぁ、やばいこれ完全に悪人だ。

 私はなるべく優しい声音を心掛け両手を上げて子供達に声を掛ける。


「まぁ、落ち着いて、僕はただ立ち入り禁止に為っている森の中で何をしていたのかを聞きたいだけだよ。怪しいと思うのも分かるけど危害は加えないと約束するし、こんな格好をしているけど怪しい者じゃないよ。理由が有って顔は見せられないけど・・・」

「嘘つけ‼悪い奴は皆そう言うって村の兄貴達や大人が言ってたぞ‼」

「嘘じゃないなら顔を見せろ‼」

「ミリー‼早く逃げろ‼」


 あー、どうしよう・・・取り付く島もない・・・村の大人達の教育が行き渡っているね・・・不審者に対して容赦がないよ・・・どうやって信用を得ようかな・・・手っ取り早いのは顔を見せる事だけど子供に顔を見せるのは命取りになりかねないし・・・

 現状の自分がどう足掻いても子供を説得できない状態である事を再確認し頭を悩ませていると気配察知に物凄い速さでこちらに向かって来る新しい反応が引っ掛かる。

 あ、やばい、これ完全に戦闘要員だ・・・

 そんな事を考えながら私は三歩程後ろに下がると先程まで居た場所に剣が振り下ろされ礼服に身を包んだ黄色い髪の青年が私と子供達の間に現れる。


「アウイン、ルマン、ニキス、ミリー‼無事か‼」


 青年は慌てた様子で子供達の名前を呼び安否を確認し、男の子達の姿を見て険しい顔になり私を睨む。

 あ、しくった・・・女の子涙目、男の子拘束、これ完全に誘拐の現行犯だ・・・話し合いなんて出来なくなりそう。

 内心で間の悪さにうんざりしていると青年が剣を向けながら話しかけて来る。


「アンタは一体何者だ?この子達をどうするつもりだ?」


 警戒しつつも一応話を聞く気はある様で少し安心しながら私は口を開く。


「あー、僕が怪しい事は百も承知だけどこの現状の説明をさせて貰えるかな?まず、第一に僕はこの子らに危害を加えるつもりは無いよ。襲撃されたから一時的に拘束させて貰っていたんだ。名乗り忘れていたけど僕の名前はトワ。信じて貰えるか分からないけどこの場所には此処に生息している魔物を調べに来たんだ」


 私が両手を上げて現状までの経緯話すと青年は剣を構えながら自分も自己紹介を始める。


「イリア魔法騎士学校所属のテト。平民だから性は無い。こいつ等の兄貴分みたいなもんだ。アンタの言う事を全て信用は出来ない。少しでも信用してほしければこいつ等の拘束を解け」


 青年改め、テトは少しも警戒を解く事無く。私に子供達の拘束を解くように要求してくる。

 私は手袋を外し、パチンと指を鳴らして子供達の拘束を解く。

 それにしても、テトはこの8年で随分と冷静に物事を見れるようになったみたいだ。昔だったら有無を言わせずに切り掛かって来ていただろうね。

 当のテトは私があっさり拘束を解いた事に些か面食らった様子だ。自分で要求しておいて驚くなっての‼


「要求通り、彼等の拘束を解いたよ。これで少しは信じて貰えるかな?まぁ、僕の話だけでは嘘の可能性も有るだろうから襲撃うんぬんの話は彼等やそこの女の子にも聞いてみてよ」


 私はそう言いながら手袋を着け直し、逃げる意思のない事を示す様に近くの木に寄り掛かって懐から懐中時計型の通信機を取り出し、つい最近、狗神君にも渡した方の通信機につなげる準備をする。万が一の身分証明をリスト君に頼むつもりだ。

 準備を終え、テト達の方を見ると子供達から話を聞いている。子供らも顔見知りのお兄さんが来てくれたので安心した様子だ。


「それで?お前らは何で森に入ったんだ?子供だけで森に入るのは禁止されてるだろ?」

「でも、姉ちゃんやテトにぃ達が俺達より小さかった頃はそんな規則無かったんだろ‼不公平だと思ったし、ユユねぇに花でもあげたかったんだよ・・・そしたらあの怪しい奴が居たから村の危機だと思って姉ちゃんみたいに俺達も立ち向かおうと思ったんだよ」


 ポツポツとアウインと呼ばれた子が森に来た理由と私を襲撃した理由を喋るとテトははぁ~っと溜息を一つ吐くと怒った顔で叱りつける。


「バカヤロウ‼そんな危ない事をさせるために剣を教えてるわけじゃないぞ‼最初に剣を教えて貰っても危ない事はしないって約束したよな?今回はたまたま無事だったけどあの黒コートが人攫いだったらお前達まで行方不明になってたんだぞ‼おばさん達にこれ以上悲し思いをさせるな‼あと、ユユに花を渡したいと思うなら俺に相談しろ‼子供だけで危険な事をするな‼」


 おぉ・・・テトがちゃんと年上のお兄ちゃんをやっている・・・意外だ・・・それにしても、アウインと呼ばれた子のお姉ちゃんに何となく心当たりが有るんだけど・・・まさかね?


「それとな、お前の姉ちゃんであるコハクは異例中の異例だ。アレは女の皮を被った魔王だ。人間だと思うな」


 よし、テメェ表に出やがれ。誰が女の皮を被った魔王だ・・・いや、当たってるか・・・魔王なのは事実だし・・・

 てか、テトの言葉でアウインが私の弟だって確定したね。まぁ、目の色と髪の色が昔の私と同じだったから何となく予想はしていたけど…


「うん・・・」

「はい」

「ごめんなさい・・・」

「ごめんなさい。テトお兄ちゃん」


 テトに対して一撃入れようと思ってやめたり、アウインが弟だと分かって驚いている内に向こうの話は終わったらしい。

 テトが立ち上がりまだ警戒した様子で私に近づいて来る。


「悪い。待たせたな。それであんたの身分を証明できる物か証明できる人物はいるか?」

「そう言われると思ったからついさっき連絡を取った所だよ」

「連絡?なんだこれ?」


 そう言いながら私はテトに狗神君に繋げてリスト君に代わって貰った通信機を投げ渡す。

 この国にも通信機は有るけど小型化には至っていないし、ましてや姿が映し出されるのは魔族側独特の物(私の作った物の特徴)なのでテトが不思議そうな顔でまじまじと眺めていると不意にリスト君の声が聞こえてくる。


「すごいな・・・こんなに小さいのに本当に声が聞こえて来て相手の姿も見えるのか・・・」

「リスト⁉通信機なのかこれ⁉」


 通信機だと理解し、テトは幾つか二人だけにしか分からない質問をして本人である事を確認した後に私の事をリスト君に聞く。リスト君は、今は混乱を招くだけだと思ったのかうまく魔王の事と私の正体を隠しつつこの国の協力者だと説明してくれる。


「なるべく失礼のないように頼むな。まぁ、トワはそんな事気にするタイプではない様だけど・・・」

「失礼も何もうちの村のチビ達が怪しいからって襲撃しちまったし、俺も剣を向けちまったよ・・・とりあえず、村の皆に説明してこれ以上何にも無いように気を付けるよ」

「そうしてくれ。じゃあ、良い休暇を」

「あぁ、あんがとな」


 その言葉を最後に通信を切り、テトは気まずそうな顔で私に通信機を返してくる。


「えっと・・・うちの村のチビ達が悪かったな・・・あんたの事はリストから聞いたからとりあえず信用する事にするよ・・・状況も分からず剣を向けて本当に申し訳ない。ほら、お前らも謝れ」


 そう言いながらテトは剣を鞘に仕舞い。子供達にも謝るように促す。子供達も口々に謝りながら頭を下げる。驚いた・・・この8年で一番成長しているのはテトかもしれない・・・


「僕の方こそ怪しい恰好で不安にさせて申し訳なかった。色んな事情が有って顔を見せる事は出来ないけど信用してくれた事に最大限の感謝を。後、ミリーちゃんだっけ?怖い思いをさせちゃって悪かったね」


 お互いに謝罪を済ませた後にテトが口を開く。


「それで頼みが有るんだが、こいつ等を村に連れて行くのに一緒に来て貰っても良いか?多分、俺一人だと面倒見切れねぇと思うんだ。森の生態調査をするなら村長達にも話を通しておいた方が良いと思うし・・・」

「わかった。どの道、僕も村に行ってその事を伝えようと思っていたから君が居たら話が通りやすそうだし一緒に行くよ。ところで見た所、君も子供達も礼服の様だけど村で何か有るんじゃないのかい?」


 私の言葉にテトは頭を掻きながら言葉を続ける。


「あー、幼馴染の結婚式でな、最近物騒だから成人もしたし、早く籍を入れようって話になったんだ。本人達もそれを望んでいたしな」

「それはめでたい事だね。でも、そんなハレの日に僕みたいなのが行っても大丈夫かな?」

「大丈夫だと思うぞ。多分、人が増えて喜ぶと思う。そういう奴らだからな。さっ、そろそろ行こうぜ」


 テトのその言葉を最後にして、テトを先頭に間に子供達を挟んで私を最後尾にして村に向かって歩き出した。


此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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