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魔王様、故郷に帰る・1

明けましておめでとうございます。昨年は大変お世話になりました。今年もよろしくお願いします。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。

また、誤字脱字報告ありがとうございました。

第112話投稿させて頂きます。楽しんで頂けたら幸いです。


「さて、話も纏まったようですし、コハクさん。貴女の完成させた呪符を出してください」


 ライオネス王太子が部屋から退室して少ししてから師匠は唐突に私に右手を出しそんな事を言って来る。

 どうでも良いけど8年ぶりに再会した弟子に特に言葉も無くいきなりそれ?まぁ、予想はしてた・・・


「はぁ、やっぱり私の身を案じてお守りがわりに持たせたものじゃありませんでしたか。はい、これですよ」


 師匠の言葉に溜息を一つ吐き私は素直にフォルダーに入れていた呪符を数枚、師匠に手渡す。


「いえ?未完成でしたが何かの役に立てばと思い渡したのは確かですよ。ただ、貴女がどんな風に完成させたかが気になりましてねぇ。ほぉ・・・使える属性と魔法の種類を一つに設定して余分な魔力を食わない様にしてあるんですか・・・成程、成程、やはり使えない研究機関の連中より使える弟子ですねぇ・・・」


 呪符を受け取り何やらブツブツと楽しそうに呟く師匠を横目にお茶を啜りながらふとライオネス王太子の言葉を思い出す。そう言えばレイン先生の事を夫人って呼んでいたっけ?私の居ない間に結婚したんだなぁ・・・どんな人なんだろう?聞いてみるか


「あ、そう言えばレイン先生。ご結婚されたんですね。おめでとうございます」

「ありがとう・・・」


 私のお祝いの言葉に先生は嬉しそうな顔で答えてくれる。

 貴族の結婚って政略結婚のイメージが強いから幸せそうで良かった。


「どんな方とご結婚されたんですか?」

「アレ・・・」


 どんな人か気になったので先生に聞くと先生は目の前で呪符を手にブツブツ呟く師匠を指差す。驚きのあまり啜っていたお茶を吹き出しそうになった。


「アレですか⁉」

「アレよ・・・これでも・・・結構幸せよ」

「・・・なら良かったです・・・改めておめでとうございます」


 驚く私にレイン先生は平然と答えた。

 驚きはしたけど本当に幸せそうだったので私は改めてお祝いの言葉を贈った。


「そう言えばコハク、さっきライオネス王太子にああ言っていたけど絡んできた連中の中に贈り物の所持者が居たのか?」


 レイン先生の言葉に驚かされ少ししてから狗神君が先程ライオネス王太子と話した内容を疑問に思ったのか私に確認を取って来る。

 正直、私的には内容にげんなりなんだけど答えないわけにはいかないね。


「うん、クライトの取り巻きは皆、贈り物所持者だったよ。こっちでは、アラン君とリスト君が同じ様に所持者みたいだけどね」


 そう言って私は再びお茶に口を付ける。

 贈り物の所持者ってしっかりとステータスに出るんだよね・・・まぁ、私しか知りえない情報だけど・・・


「えっとね。後、テトも所持者なんだよ」


 そして控えめに言ったアラン君の言葉で再びお茶を吹き出しそうになった。

 何度かその場で咳き込みながら私は何とも間抜けな一言を口にする。


「マジで?」

「うん。後輩の子や街の人達からも結構慕われているみたいだよ」


 テトが?マジで?昔は無鉄砲でかなりうざかったあのテトが?

 少し見ない間に恐らく大出世したのであろう幼馴染に不覚にも驚かされながら私はカップのお茶を飲み干した。


「さて、今日は皆さんにはリストの家に泊まって貰います。ルガディン侯爵家には連絡を入れてあるので今日はゆっくり休んでください」


 一通りの話を済まし、アラン君のその言葉で私達はリスト君の家にお世話になる事になった。


 翌日、私達はルガディン侯爵と共に侯爵が出してくれた馬車に乗り王城に向かう。

 今回の私の格好は前に作った式典服(ローブ風のフード付き)に身を包んでいる流石に何時もの格好では調印式みたいな所に出られないからね。まぁ、フードと仮面はしっかり着けているんだけどね。

 道中は何のトラブルも無く無事に城に着き、私達は緊張した面持ちの貴族と騎士に囲まれながら国王と対面した。

 国王と対面し、妃として紹介された女性を見てライオネス王太子やアラン君がクライトと対立している理由を察した。

 8年前にアラン君の誕生日で見たお后様は記憶が確かなら優し気な雰囲気の女性で格好も華美ではなくどちらかと言うと質素な感じだった。今回、紹介された女性はそんな記憶にある女性とは似ても似つかず何処かこちらを見下した様な視線を向けている。服装も必要以上に華美で毒々しい感じの女性だ。恐らくアラン君達とクライトは母親が違い。元々、この女性は第二夫人でクライトの母親なのだろう。

 そんな事を考えつつも調印式は特に問題も無く昨日ライオネス王太子と話した内容で纏まったが王と握手をしようという時に問題が起こった。


「それにしても、魔王殿は陛下の御前で素顔を見せないなど些か信用に欠けるとは思わないのかしら?ライオネス王太子はこんな無礼な者を王に紹介するなど何を考えているのかしら‼」


 手を握ろうとした瞬間、唐突にお妃さまが騒ぎ出しそれに乗じて何人かの貴族からも非常識だという声が上がった。

 まぁ、非常識だろうね。だってわざとやっているんだもん。てか、言うタイミング遅いでしょう?

 私に向かって浴びせられる罵声に国王陛下が声を出す前に私は盛大に笑いだし、その姿に声を上げていた貴族とお妃、場に同席していた全員が驚きの表情を浮かべる。

 その姿を確認してから私はゆっくりと口を開く。


「いや、失礼、顔を見せないのが非常識というのは僕も自覚しているよ。ただ、此処には貴女も含めて『味方』と思っていない人物が多いので脱がなかっただけですよ。国王陛下も承知の上でね」


 実を言うとライオネス王太子が戻る際にひっそりと密書を渡していて此処に来る前に返事が来て了解を貰っていたんだよね。

 あっさり了解の言葉が返ってきた所を見ると国王も思う所が有ったみたいだね。


「ふざけないで頂戴‼貴方はイリアと同盟を結んだ身でしょう‼私達(イリアの貴族)を信用できないという事はイリアを信用出来ないという事だわ‼」


 私の言葉を聞きお妃は顔を真っ赤にして怒鳴りだす。全く持って沸点の事だ。下に居る人間は苦労するな・・・


「あぁ、別にイリアの貴族全てを信用していない訳では無いよ。僕が信用していないのは第三王子派閥の人間さ。はっきり聞くよ。人が話している時に突然割り込んできて挙句の果てに剣を向けるような人間の派閥を信用出来るかい?そんな人間の派閥の前で顔なんて見せた日には直ぐに王に内緒で情報交換をしているクラシアに情報を流されかねない。そんなリスクを犯すメリットを教えて貰いたいね」


 クラシアの話を出した所でお妃は驚いたような顔になる。全く持ってこういう時には役に立つ眼だ。

 お妃が尚、口を開こうとした時、国王がそれを遮り話す。


「もう良い。ダミア、あまり私に恥をかかせるな。退室しろ」

「陛下⁉わたくしは国のことを思って・・・」

「聞こえなかったのか?退室しろ。他の者と兵士もだ。皆、出て行け」


 国王は低い声でそう言うとアラン君とライオネス王太子以外の部屋に居た全員を外に追い出し、私に向かって頭を下げる。


「トワ魔王陛下、妃と貴族達が失礼を働いた。誠に申し訳ない。クルシナ・フォム・イリアが伏してお詫びする」

「クルシナ陛下、頭を上げてください。私は味方と敵をはっきりさせたかっただけですよ。こちらこそ、不愉快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」


 私はフードを外し、こちらの非礼も詫びた後、中断した握手を行い。無事に調印式を終えることが出来た。

 私が女だと分かった時のクルシナ陛下の顔は唖然としていて少し面白かった。


 それから少し時間が経ち、私達はルガディン侯爵家の一室でアラン君を含めて今後の話をする。

 結果として狗神君達はしばらくライオネス王太子派の騎士達と訓練を行わせて貰える事になった。

 さて、そう言えば結婚式は昨日を含めて2日後って言っていたよね?明日か・・・行くか。調査したい事も有るしね。


「さて、皆、申し訳ないけど私は明日からしばらく一人で行動させて貰うからよろしくね」

「へっ?一人で行動するのか?」


 お茶のカップを持ったまま狗神君が間抜けな声を出す。

 まぁ、彼等と行動する様になってから私が一人で行動する事なんて最近は無かったからねぇ・・・


「少し調べたい事が有るからね。一人の方が、都合が良いんだよ。皆は観光や何かもしたいでしょう?この国にはリルやアラン君達もいるから私が居なくても問題ないと思うんだ。皆には兵士の人達の信用を勝ち取って貰いたいしね」

「そっか・・・気を付けてな」


 そんな話を最後にその日は皆ゆっくり休む事にした。



 翌朝、私はネージュに鞍を着けてその背中に乗る。


「ネージュ、朝早くで悪いけど頼んだよ」

「うん」



 馬なら2日の距離でもネージュで飛んで行けば数時間なので私は早速貰った飛行許可を使いネージュに乗って9年振りの故郷に向かって飛び立った。


「ネージュ、お疲れ様。ありがとう」


 首都から飛び立ち早2時間、私達は私にとって因縁の深い森に降り立った。

 全く持ってここに来なかったら少し未来も変わったのかね?・・・そんな事無いか

 ネージュから鞍を外し、小さくなったネージュを肩に乗せ森の中を村に向かって歩くと唐突に背後と左右の三方向から風切り音が聞こえて来る。恐らく此処に着いた時に気配察知で感じた気配の正体だろう。全く、折角バニッシュを使って此処まで来たのに着いて魔法を解いた先に人が居たとは運が無い・・・

 そんな事を考えながら私は三方向から来た攻撃を全て躱し、カウンターで《アクア・バインド》を襲撃者に喰らわす。


「うわぁ‼」

「いで‼」

「何だ⁉これ⁉」


 思っていた以上に高く幼い声に些か面喰いつつ襲撃者の方を見るとそこには8歳くらいの子供が三人。《アクア・バインド》によって捕らえられていた。


此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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