私にも女としての自覚ぐらいある
おはようございます。第111話投稿させて頂きます。
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「アラン、お客様の前でそんな風に声を荒げてはいけないよ?さぁ、心を落ち着かせて座りなよ☆ストリクサ、私とイクスとレイン夫人にもお茶を入れてくれ」
「誰が怒らせていると思っているんですか兄上‼兄上こそなぜ毎回、初対面の人にそんな挨拶をするんですか‼」
アラン君の言葉を何処吹く風と言った様子でライオネス王太子はストリクサさんからお茶を受け取っている。因みにストリクサさんはずっとサロンに居ました。
そんな兄弟の様子を見ている当の私はと言うと・・・・
「本当に・・・・コハク・・・なのね?うそ・・・では・・・ないのね?」
「全くこの馬鹿弟子はいきなり消えたかと思えばいきなり帰って来るとは何を考えているんですかねぇ~」
アラン君達が何やら言い合っていると居る所、私は師匠とレイン先生に揉みくちゃにされている。師匠に至っては私の頬をあっちこっちに引っ張っている。完全に8年前の事に関する制裁だ・・・
「ま、なにはともあれ、元気そうで安心しましたよ」
「・・・ご心配をおかけしました」
まだ些か機嫌の悪そうな笑顔で私の頬から手を離しそう言った師匠に私はジトッとした目を向けながら心配を掛けた事にお詫びを入れる。少し赤くなった頬を今度はレイン先生が優しく包んでくれる。
「さて、多少ごたついたけど改めて、私はライオネス・カル・イリア。先程も言ったがこの国の王太子だ」
数分後、アラン君の説教と師匠の折檻を終えた私達は男女で別れて席に着き、改めて自己紹介を行う。
・・・てか、これって普通に私達とイリア側で別れればよくない?
そんな事を思っていると先程のチャラい様子から打って変わり王太子然としたきりりとした表情と口調で話しだす。
あぁ、成程、こっちが素か・・・さっきの態度で私達の反応を見て自分達を侮る様な人間ならここでサヨナラ。交渉に一切応じないつもりか・・・なかなか性格が悪い・・・
「今代黄昏の魔王、コハク・トワイライトです。この姿に仮面を被っている時にはトワと呼んでください」
私はリステナの名だけを伏せ、自己紹介を行う。私の自己紹介を皮切りに狗神君達もライオネス王太子やレイン先生に自己紹介をした。
「それにしても、勇者殿と魔王陛下が一緒に我が国に来るとは思いませんでした」
「私一人でイリアに来るよりは助け出したリルや人間の勇者が居た方が話を聞いてもらえるという打算が有ったのでね」
そう言いながら私はストリクサさんの淹れてくれたお茶に口を付ける。香りや味に多少の懐かしさを感じるが恐らくアラン君と初めて会った時に出された物と同じ銘柄の物だろう。
「魔王陛下は随分簡単に出された物に口を付けるのですね。毒等の警戒をしなくても良いんですか?」
私が無防備にお茶に口を付けた事に素で驚いた顔を見せながらライオネス王太子はそんな質問をして来る。
まぁ、驚くか・・・人間側と魔族側は私がこの世界に来た時点で下手したら戦争になりかねない程関係が拗れていたらしいしね。私だって帝国やレティの所で出された以外のクラシア(この格好でお茶など出て来るわけないが)では絶対に口を付けない。そもそも、私にこっそり毒を入れるという行為は通用しない。
「ストリクサさんは仕事に誇りを持っている方だから淹れたお茶に毒を盛る方ではありませんし、貴方方がそういう事をするメリットは有りませんからね。そもそも、その質問はストリクサさんに失礼ですよ」
「アラン、君の思い人は中々面白いね」
そう言うとライオネス王太子は面白い物を見るような目で私を見ながらアラン君に何やら囁いている。
何かを囁かれたアラン君は無言で兄の頭を一発殴る。
「あ痛‼全く、アランは暴力的だなぁ・・・さて、では、本題に入りましょうか?まず一つ聞きたいのは厄災との戦いで同盟をお望みとの事ですが貴女方、魔族が我々と同盟を結ぶメリットは何ですか?」
先程までふざけ合っていたライオネス王太子は表情を引き締め本題に入る。
「ありていに言えば魔族だけが得をするメリットは有りませんね。敢えて言うのなら人間側と協力する事でお互いの被害を少なくする事が出来るという事ぐらいでしょう。第一にメリット以前に勇者も無しに人間側にアレに対抗できる手段があるとも思えない」
私の言葉に考え込むような顔を見せ、ライオネス王太子が口を開く。
「確かに普通の国ならば対抗できる手段はほとんどないでしょう。しかし、イリアは人間側の国で最も多くの『女神の贈り物』が発見されている国で学生の中にも贈り物に選ばれた者がいます。彼等の力が有れば被害も少なくなると国王は考えるかもしれません」
その言葉に私は溜息を吐き、着ているコートの釦を外し、次いで中の服の釦も外して上半身の右半分の肌を露出させ、右腕から肩までを全員に見せる。
右腕から肩に掛けての傷痕や火傷の跡を見て全員が驚きの表情を浮かべる。
正直、第三の厄災の自爆で右腕はほぼ炭化していたらしいし、他の個所の傷も酷かったのでエリクサーイミテーションでも完全に傷は治らなかった。
「この右腕の傷は数日前の第三の厄災との戦いで負った物です。この傷の所為で私は右腕が以前の様に思い通りに動かなくなりました。そして、恐らく今現在この世界に存在する最高級の薬を使ってやっとここまで回復しました。その時の戦いで私達が失った物はその薬を二本、3万の兵士、薬の製造工場、薬の保管庫等です。『女神の贈り物』を抜いて居なかったとはいえ、はっきり言ってこれだけのハンデを抱えた魔王の剣も見えない者が居る様な所持者が何人集まっても結果は見えているでしょう。そこの所も国王に伝えて良くご検討ください」
そこまで言い切ると唐突に後ろから衝撃を受け私は前のめりになってしまう。
何事かと驚いていると血相を変えたリルや夢菜さん達5人が私に上着を掛けながら口々に説教を始めた。
「ちょっと‼コハクちゃん‼なんでいきなり脱ぎだすの‼傷を見せるだけなら袖を捲るだけで良いでしょう!・・・うわ・・・大きい・・・」
「山辺君‼先輩‼あと王子様方全員マジマジと見ない‼早くあっちを向く‼うそ・・・着痩せするの・・・?」
「もーもーもー‼何でコハクちゃんは変な所で常識外の行動をするの‼・・・大きい・・・」
「女性としての自覚有るんですか?コハクさんは女の子なんですよ‼・・・大きいですね・・・」
「もっと・・・女の子の・・・自覚を・・・ちゃんと持ちなさい‼・・・大きいわ…」
夢菜さん、光さん、リル、マカさん、レイン先生の順で説教?をしている途中で皆、私の胸見てなんか同じ様な事言ってるけど胸じゃなくて傷痕見て‼大体、今の私の状態って見られても大丈夫なようにスポブラ風な下着にタンクトップを着てるからそこまで露出は高くないっての‼
「あのねぇ、私は効率重視なの。傷痕を見せて被害を説明した方が分かりやすいでしょう?そもそも私の格好は、あまり露出は高くないよ」
「「「「「そういう問題じゃないから‼」」」」」
その後もう少しだけ5人からお説教された。
因みに男性陣はそれぞれがそれぞれの目を塞いでいるような状況だった。師匠は一人爆笑してレイン先生に怒られていた。
一通り落ち着いてからまだ何か言いたそうな五人を手で制し、衣服を整えた後、国王陛下に報告してもらう内容や同盟を結ぶ際の条件などをお互いに話し合い煮詰めて行った。
「それでは、色々有りましたがとりあえず同盟の内容は第四の厄災襲来時の援護及び援助を行う。また、今回の戦いが終わってからも両国の友好の為、条件付き相互安全保障。これは魔族側に人間が人間側に魔族が攻めてきた時に戦力的な援助を行う。また、相互通行許可、お互いの国を自由に行き来できる様にするという物ですね。ただし、我々は黄昏、白夜、暁、憤怒の国のみでその4国以外には許可できない。この辺は商人に通達しないといけないですね。最後に黄昏の国から商会の出店の許可とドラゴンの飛行許可。以上が同盟の締結の内容ですね。国王陛下には明日、謁見して頂き両者合意の下で正式に締結される予定です。他に何か質問は有りますか?」
そう言いながらライオネス王太子は手元の紙を丸め、ストリクサさん渡す。
今日中に同盟の締結内容などを決められたのは恐らく私がフェル達からある程度の内容決定権を託されているように彼にも決定権が与えられているのだろう。
「いえ、特に確認内容は無いです。それでは、明日は宜しくお願いします。あ、あと私の性別や顔については他言無用でお願いします」
「分かりました。こちらこそ、宜しくお願い致します」
そう言って私達は握手を交わした。
「では☆堅苦しい話も終わったし、私は父上に報告に行って来るのでね☆魔王陛下や勇者殿達の宿は任せたよアラン☆」
そう言い残し彼は最初に見た時の様な軽い口調でサロンから出て行った。
前言撤回、あっちが素かい‼
向かいでアラン君が頭を抱えながら「なんか・・・ごめん」っと言っている姿が何だか印象的だった。
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