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同窓会って会いたくない奴にも会うよね

おはようございます。

第110話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。

また、誤字脱字報告ありがとうございました。

楽しんで頂けたら幸いです。


「グァ‼」


 裏拳で殴り飛ばした騎士の格好をした男が短い悲鳴を上げるのと同時に男の方を向き、手を捻り上げて地面に叩きつける。男の格好から察するに恐らく誰かの護衛だろう。学生が負けても自分なら勝てると高を括ったか?全く持って甘い。


「力量差を測れと言ったはずだぞ?大体、不意打ちを狙うにしても殺気が漏れ過ぎている隠す努力ぐらいしろ。次は・・・」


 出来るだけ小さな声でありったけの殺気を込めて「殺すぞ」っと男を脅し付けて手を離し開放する。

 手を離すと護衛らしき男はガタガタと震えだし気を失う。

 やれやれ・・・久しぶりに帰って来た国で私は何をやっているのか・・・

 仮面の下で呆れているとパチパチパチっと手を叩く音とともに不愉快な声がしゃべり始める先程、アラン君とクライトの話に割り込んだ貴族A(仮)だ。


「いやいや見事、見事、クライト王子殿下、確かに今回は我らの方が多少礼儀に欠けていたようです。僭越ながら(わたくし)から彼の者達に紹介させて貰ってもよろしいですかな?」

「わかった。許可する」


 貴族A・・・ええい‼面倒くさい‼デイルがやけに芝居掛かった動作でクライトに一礼してから確認を取りクライトが許可を出すともう一度一礼してから口を開く。

 動作が一々うざったい。


「ありがたき幸せ。さて、申し遅れたが私の名前はデイル・ヴァトラー、ヴァトラー侯爵家の嫡子だ。僭越ながら我らの事を貴様らに紹介させて頂こう。このお方はクライト・デイスト・イリア第三王子殿下。分かっていると思うがこの国の第三王子殿下だ。貴公らの様な者共には縁のないお方だろう?そして貴公に向って行った勇敢なる者はナウゼリン・ガイスタ、ガイスタ伯爵家の後継ぎ令息だ。殿下の右隣の者はフラビオ・イダ、イダ伯爵家の次男、殿下の左隣の者がカイサエ・アイダエル、アイダエル子爵家の嫡子だ。殿下の後ろに居るのがフラアル・ヒシオ、ヒシオ子爵家の三男だ」


 デイルがご親切に私達に自己紹介してくれたので私も礼儀として自己紹介を行う。


「僕は今代の黄昏の魔王、トワだ」


 敢えて狗神君達の事を伏せ、私は自分が魔王だという事のみを彼等に言うと案の定、私の事を聞いた途端に先程紹介された第三王子の取り巻き達が一斉に剣を抜く。意外な事にデイルも驚いた顔で剣を抜いている。

 その光景に狗神君達も応戦しようと武器を呼ぼうとしているのを横目に私は口を開く。


「むやみやたらと剣を抜かない方が身の為だぞ?まぁ、その剣では何もできないと思うがな」

『‼』


 そこにいる全員が抜かれた剣を見て目を見開く。構えられた刀身は全て中ほどから切り落とされている。


「嘘だろ・・・いつ抜いたんだ・・・?」


 切られた刀身を呆然と見ながらカイサエと呼ばれていた男が私の両手に握られた《カグツチ》と《オカミノカミ》を見て呟く。

 何時?君達が剣を抜いた瞬間だけど?

 呆然としている彼等を仮面の下で呆れた顔で見ながら私は口を開く。

 てか、私、此処に喧嘩しに来た訳じゃないんだけどなぁ・・・完全にこの魔王って肩書が悪いよね・・・


「君達と敵対する気は無いよ。僕達は大切な話が有ってこの国の国王に会いに来たんだ。君達が攻撃してこなければこちらから攻撃する事は無いよ」

「きさま・・・」


 フラアルと呼ばれた男が忌々しそうに呟きながら私を睨んでいると唐突に少女の声がこの場に響く。


「クライト様、ここにいらっしゃったのですね」


 澄んだ可愛らしい声のした方を見るとリルより淡い水色の髪をツーサイドアップにした学園の制服に身を包んでいる小柄な少女がクライトに向かって駆け寄って来ていた。


「シレネ、危ないからこんな所に来ては駄目じゃないか、どうしたんだい?」


 駆け寄って来た少女を先程アラン君に向けていた鋭い表情とは打って変わって愛おしそうな顔で少女を抱きとめる。


「申し訳ございません。クライト様。探しいていたら大きな音が鳴ったので此処にいらっしゃたら大変だと思い。心配でいてもたってもいられずに来てしまいました。浅慮な女とお笑いください」


 シレネと呼ばれた少女も愛おしそうに庇護欲を掻き立てる様に可愛らしくクライトに語り掛けている。見た感じ婚約者みたいだ。

 この子、私達の事をガン無視か・・・この状況で普通に二人だけの世界に入れるなんてある意味才能だね。


「それで、探していた理由なのですけどまた今日も慈善活動で炊き出しをしようと思っていたのでその御相談がしたかったのです」

「わかった。スラムの人間や浮浪者の事を思いやれるなんてシレネは本当に優しいね。ゆっくりと話そう。皆、ここはもう良い。行こう」


 最早、私達の事は眼中にないと言った様子でクライトはシレネと呼んだ少女の肩を抱き私達に背を向ける。他の連中も素直に従い倒れているナウゼリンと護衛に肩を貸している。

 それにしても、勝手に話に入って来たくせに失礼な連中だ。

 内心呆れていると斜め向かいのアラン君からクライトに向かって怒声が飛ぶ。


「待て‼クライト‼まさかまた国のお金で炊き出しを行うつもりか‼」


 アラン君の言葉に立ち止まったクライトは忌々しそうな顔で振り返り苛立だし気に口を開く。


「何だ?兄上?俺の婚約者の提案にまた難癖をつけるつもりか?未だに婚約者も決めずに8年前に行方を眩ました平民の娘を今も未練たらしく探しているのなら一人でも多くの国民の為に動くのが王族の務めだろう?大体、国民から徴収した金を国民に還元してやっているだけだ何が悪い?文句が有るなら浮浪者やスラムの人間の救済処置を早く出したらどうだ?それが出来ないのなら文句を言うな。さぁ、行こうか?シレネ」


 捨て台詞の様にそれだけ言うと未だに私の事を睨んでいる取り巻き達を引き連れて訓練場を出て行った。

 それにしても、第三王子(馬鹿王子)の婚約者の名前はシレネっね・・・まぁ、意味は無いだろうけどねえ・・・・

 そんな事を考えていると小さな溜息を一つ吐いたアラン君が小さく「フィル、カーク」っと口を開くと二人の黒装束の人物が姿を現した。

 なんかうちの皆みたいだな・・・多分影だな・・・


「クライトより早く陛下と兄上に魔王陛下と勇者殿達の事を報告しろ。奴らに悪意ある報告を上げさせるな」

「御意」


 アラン君の言葉に二人は短く返すと景色に溶け込む様に姿を消す。

 その様子を見送ってからアラン君は私達の方に向き直り丁寧に頭を下げる。


「不愉快な思いをさせてしまい申し訳ありません。挨拶が途中でしたがゲネティスト教諭の片付けも終わったようですし、場所を移動しましょう。そこでお話を聞かせて頂けますか?」

「分かりました。場所を移動しましょう」


 彼の申し出に了承し、場所を訓練場からサロンに移動する事になった。その過程で師匠は一度実験機器を自分の研究室に持って行った。まぁ、現状の状態ならアラン君に通しておいた方が、都合がいいか・・・多分そのうちこっちに来るだろ。


「先程はお恥ずかしい所を見せて申し訳ありませんでした。また、我が国の貴族と不肖の弟がご迷惑をおかけしました」

「貴方が謝る事では無いと思うよ。アラン第二王子」


 私は敢えてアラン君の自己紹介を引き継ぎ彼の正体を口にすると彼は仕方がないという顔を私達に向ける。


「やっぱり気付いてしまったかい?」

「まぁ、アレだけ殿下、殿下と言われている人間が兄上って呼んでいるし、取り巻きも君の事を殿下と呼んでいたしね。分からない方がどうかしているよ」

「だよね。じゃあ、そろそろ君も顔を見せてくれても良いんじゃないかな、コハク?」


 彼の言葉に私は仮面を外し、フードを脱ぎながらニヤリと笑い口を開く。

 リスト君はやっぱりと言う顔で他の皆は素直に顔を見せた私に驚いている。まぁ、あれだけ正体がバレたくないと言っていたから当たり前だよね。でも、状況が変わったのだから全くの他人としらを切るよりこっちの方が早い。


「アラン君こそ何処で気付いたんだい?」

「最初にリストが連れて来た時にリルさんが居たので何となく。決定的だと思ったのがゲネティスト教諭の実験が失敗したときかな。初めての時は皆驚くのに君は冷静だった」

「あぁ、やっぱりか・・・私も後から失敗したと思っていたんだ」

「僕もあそこでクライト達が来たのは予想外だったよ」

「あ、因みにさっきはああ言ったけど私は別にさっき気付いたわけでは無いよ。会った時から予想はしてた」

「嘘でしょ?」


 私の言葉に彼は驚いた様子で声を上げる。


「だって、私が公爵家なのかって聞いたら一応とかいうし、第二王子(貴方)の誕生日パーティーの時には私を連れてお城の中の図書室に連れて行くし、普通は主役をほっとくなんてあり得ないでしょう?」


 恐らく家名やミドルネームの違いはこの国の風習からの偽名だろうし不思議に思う事は何もないね。


「参った。そんな早くから感づかれていたなんて・・・リルやテトは気付かなかったんだけどなぁ・・・」


 そう言いながら意気消沈する彼に私は今更ながら此処にいない人物の事を思い出し質問する。


「そう言えば黄色い頭のテト(ピヨコ)は何処に?」

「彼は今、里帰り中だよ。幼馴染の結婚式が有るらしくってね。首都からリステナ村まで馬車で2日掛かるから向こうに着く頃に丁度結婚式の日ってわけだよ」


 マジか・・・幼馴染って事はムウとユユかな?まぁ、村だから村の子供は皆、幼馴染な訳だけどわざわざテトが行くって事は親しい人間だからあの二人だろう。

 そんな事を考えているとアラン君は真面目な顔になり話を切り替える。


「さて、色々と聞きたい事は溜まっているし、話したい事も有るし、文句も有るけどそろそろ何でイリアに戻って来たのかを聞こうかな。魔王をやっているかも含めてね」


 昔見た黒いオーラを纏わせた笑みに私は苦笑いを浮かべながらこれまでの経緯(転生者の下りは省く)と厄災の襲撃についてとそれらの討伐の為に同盟の申し込みに来た事などをアラン君に話した。

 一通り話を聞き彼は「フゥー」っと息を吐くと口を開く。


「星詠み達の言葉で予測はされていたけどまさかそんなに早く来るとは思わなかった。急いで使いを出して陛下と兄上に知らせないと・・・」

「その必要は無いぞ☆アラン」


 彼がそう言って再び影を呼ぼうとした瞬間に唐突にアラン君の横から声が聞こえる。

 驚いて全員で声の方を向くとアラン君やクライトと同様の髪と目の色の美青年がニカリと笑い。ハイテンションで自己紹介を始めた。


「ハロー☆みんな大好き、イリア王国第一王子にして王太子のライオネス・カル・イリア(22)だよ☆」

「あにうえーーーーーーーー!!!!!」


 先程とは全く違うアラン君の怒声がサロンに響き渡った。後ろの方では二カニカと笑っている師匠と私を見て驚いた顔をしているレイン先生が見える。

 いや、みんな大好きって初対面だろ・・・てか、この人が第一王子で王太子なの?大丈夫かこの国・・・・?

 いきなり出て来たハイテンションな男に私は困惑し、故郷の未来に失礼ながらも一抹の不安を覚えた。


アランの名前に多少の変更が有ったのは王子だからです。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。


報告です。少し前の話で厄災の来る国の一つを聖国と書いていましたが正確にはマカの国のルファルデ法国でした。現在は修正しました。



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