喧嘩売るなら相手を見てね
おはようございます。
第109話投稿させて頂きます。
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「ゲネディスト教諭はこの時間なら多分、実験の為に訓練場に居ると思う」
無事に学校に入ってから少ししてリスト君は師匠が今は研究室では無く訓練場に居るだろうと教えてくれたので皆で訓練場に向かう。
その道中もやはり周りからの視線がすごい何人かは私達を見るとなぜか嬉々とした表情で何処かに走り去っていく。
懐かしい廊下を歩きしばらくすると私達は目的の訓練場にたどり着いた。
そこには師匠とプラチナブロンドの髪にエメラルドグリーンの瞳の青年が立っている。青年の方も何だか見た事の有る風貌の青年だ。
「やあ、リスト、遅かったね。何か有っ・・・・リル?」
柔和な笑みを浮かべてリスト君に話しかけた彼はリルの顔を見て驚いた顔になる。青年の隣で何かしらの魔道具を調整していた師匠も彼の言葉に顔を上げる。
「おや?リリウェルさん。お久しぶりですねぇ~無事そうで何よりです」
「お二人共、御久しぶりです。皆様、御心配をおかけしました」
「うん、本当に無事で良かったよ」
リルが青年と師匠に向かってお辞儀をして口を開き、青年もリルの言葉に居返事を返している。
師匠は最初少し顔を上げただけでまた目の前の魔道具の調整を行っている。相変わらず胡散臭い。てか、8年経っているのに見ため変わって無くない?化け物か・・・あ、化け物だったね・・・
「ところでリスト、後ろの人達は誰だい?一応、今ここには関係者以外は入らない様にと連絡しておいたのだけど?」
そんな事を思っていると青年がリルと話していた青年が唐突に私達のことを聞いて来る。リスト君は、青年に近づき耳元で何かを囁いている恐らく私達の事を説明しているのだろう。
「魔王と勇者殿?」
一通りの説明を終え、リスト君が離れると彼は確認する様にぽつりと呟き私達に視線を向けて来る。彼の意識が私達に向いたタイミングで先程、リスト君にした様に皆で自己紹介をすると彼は柔和な笑みを向けて自己紹介を返してきた。
「自己紹介が遅くなり申し訳ありません。私はアラン・テルトゥス・イリアです。この国の・・・」
その時、彼の自己紹介を遮る様に大きな爆発音が鳴り響く。師匠の弄っていた魔道具が唐突に爆発したのだ。・・・てか、アラン君(確定)が自己紹介していた時点で何かしらの怪しい煙が噴き出していたので唐突と言って良いのか分からないが・・・
私は咄嗟に《アクアリウム》で障壁を張り師匠以外の全員に被害が及ばない様にする。結構な爆発だったけど正直、師匠は自分で何とか出来るでしょう。
師匠の奇行に慣れている私やリスト君達は動じていないが勇者組やマカさんは相当驚いた様子で悲鳴を上げている。
「ちょ⁉爆発しましたよ⁉大丈夫なんですかアレ⁉絶対に死にましたよ⁉」
山辺君が慌てたように捲し立てて私達に聞いて来る他の皆も心配そうな顔をしている。
うん、普通はそう言う反応になるよねぇ・・・
「「「「あー、大丈夫、大丈夫。これぐらいで死ぬ人じゃない(です)から」」」」
慌てふためく皆を他所に私達4人は腕を振って恐らく師匠が無事であることを告げるともくもくと上がっている煙から声が聞こえて来る
「いや~、失敗ですねぇ~、やはり魔法の威力を増強させる魔道具は無理が有るんですかねぇ~。それにしても、勇者に魔王ですか・・・厄介事のにおいしかしませんねぇ~」
そんな呑気な声と共に煙の中から無傷の師匠が私と狗神君達を一瞥しながら考え込む様に呟く。
・・・怪我ぐらいしてろよ・・・爆心地だったでしょうよ・・・
「先生、実験は失敗してしまいました。考え事は後にして、客人も来たので余計な人間が来る前に片付けて撤収しましょう」
「まぁ、そうですねそうしますか」
アラン君は無傷の師匠に突っ込まず考え事は後にして片づけする事を提案している。師匠もそれに賛同し急いで片づけを行っている。
「皆さん、すみません。挨拶が途中ですが一先ず場所を変えてからお話をしましょう。勇者殿と魔王陛下が一緒に来られたという事は何かしらの重大な話が有ると思われるので少々お待ちを…」
「兄上、また、ゲネディスト教諭の実験の失敗ですかな」
アラン君が喋っているのを又もや遮るように何やら嫌味な感じの声が聞こえて来て声と共に入り口の方に6人ほどの人影が現れる。
「クライト、ここは立ち入り禁止にしていたはずだが?何をしにここに来た?」
アラン君が私達の対応をしていた時とは別人の様な冷たい声音と表情でクライトと呼ばれた青年に対応している。てか、彼には兄弟が居たんだ・・・一年ぐらい一緒に居たけど知らなかったなぁ・・・それにしても彼が弟に向ける視線は冷ややかだ。氷点下だ。弟や妹ってそんな表情をするものなのかな?8年前の彼からは想像できなかったなぁ・・・
まぁ、私は彼の家の事情を知っている訳では無いので色々とあるのだろう。てか、見た感じ同い年みたいだけど双子なのかな?似てないね。似ているのは髪の色と目の色だけかな?
「いえいえ、大した理由ではありませんよ。兄上の従僕が恥知らずな婚約者と何やら怪しい集団を学園内に招き入れたと聞いたものですから事実なら大変だと思い確認しに来た次第ですよ」
「お前が心配する事なんて何もないよ。彼等は俺とゲネディスト教諭の客人だ。お前には関係ない」
「いえいえ、関係ない事はないでしょう?怪しい物を招き入れる従僕とその少し後に起った爆発、この私が腹違いとは言え大切な兄君の事を心配して何が悪いのですか?」
「白々しいな。どうせ俺の粗でも探しに来たのだろう?」
おぉ・・・思っていた以上に仲が悪い・・・アラン君は自分の事を俺呼びに変えたし、私達の前でお互い嫌悪感丸出しだよ。
アラン君とクライトと呼ばれた青年が睨み合っていると彼の取り巻きであろう一緒に来た赤茶色の髪の目つきの悪い貴族風の男が割って入って来る。コイツもどっかで見た顔だなぁ・・・
「アラン殿下、お話し中申し訳ありませんが、そろそろ未だに名乗りもしないこの無礼者共やルガディン殿の恥知らずな婚約者に付いて教えて貰ってもよろしいですかな?」
・・・いや、無礼者も何もあんたらが急に私達の話に割り込んできたんだし、その後私達の事ガン無視だったじゃない。それで無礼も何もなくない?ほら、私達側の皆も困惑した顔してるよ。
「おい、そこの者共、許可してやるから名を名乗れ‼」
アラン君と貴族A(仮)が話し終えると待ってましたと言わんばかりに茶色の髪をオールバックにしたこれまた目つきの悪い悪人顔の貴族B(仮)が偉そうに私達に命令してくる。てか、昔いたなぁ、こんな風に無駄に偉そうな奴。あと、この貴族A、B(仮)って表現、昔にしたな・・・
「おい、何をしている?発言を許可してやっているんだ。名を名乗れ‼」
残りの3人も同族で止める気が無いらしくニヤニヤとした笑みを浮かべて私達の様子を窺っている。
高圧的に命令して来る貴族B(仮)を仮面の下で冷ややかに見ながら私は口を開く。
「黙れ、人に名を尋ねるならまず自分から名乗ったらどうだ?そもそも、お前がその様な態度で接した者が他国の重鎮でお前の態度で国が危機に陥ったらお前はどう責任をつもりなんだ?その程度の事も分からないで貴族を名乗るなど片腹が痛いわ。第一にこちらの話に割って入った分際でなぜそのような態度が取れる?筋を通すのならまずお前達から名乗れ。よって僕はお前達に名乗るつもりは無い。話がしたければ礼儀と常識をお勉強して来い」
「きさまぁぁぁ」
私の言葉に貴族Bは顔を真っ赤にして腰から下げていた剣を抜き私に向かって来る。相変わらず沸点が低い・・・
やれやれ、挑発に乗りやすいのもキレやすいのも8年前と何も変わらないのか・・・8年間もこいつは何を精進して来たのか・・・大きくなったのは体と自尊心だけか・・・クライトと他のC、D、Fは知らない人間だけどこいつの連れだ。似たような人間だろう。
内心で溜息を吐きながら迫って来る貴族Bの手首を掴み、剣を止め鳩尾に膝蹴りを入れて地面に沈める。先に手を出してきたのはこいつだ正当防衛だろう。殺してないしね。
私は地面に痛みで蹲った貴族Bの剣を遠くに蹴り飛ばし貴族Bを見下ろしながら口を開く。
「喧嘩を売るのなら相手との力量差を正確に測る事だ」
そう言いながら私は後ろから襲い掛かって来た何者かを裏拳で殴り飛ばした。
此処まで読了ありがとうございました。
アランにミドルネームが増えたのと名字が違う理由などは次回でやりますのでごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




