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魔王様、国に帰る

おはようございます。第107話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。

また、誤字脱字報告ありがとうございました。

楽しんで頂けたら幸いです。


「うわ・・・すごいな・・・どうしたんだ?これ?」


 テーブルに並べられたタルトやフロランタン、挙句の果てに羊羹などの大量のお菓子を見て狗神君は素っ頓狂な声を上げている。


「あー、私の癖みたいなものだよ。あんまり気にしないで・・・ストレスや嫌な事が有ると大量にお菓子や料理を作って鬱憤を晴らす癖が出来たみたいなんだよね・・・この中から新商品に回す物が出るから無駄では無いんだけどね・・・」


 ちなみに彼等が来た時に出したわらび餅もそうだったりする。まぁ、たまたまフェルから大量にわらびを購入してわらび粉を作っていたっていうのも有るんだけど・・・あの時は粉を作る際に量の採れ無ささに作業した全員で青ざめたものだ・・・知識だけ持っていても実際に見るとビックリするよね・・・


「これ、食べても良いの?」


 私の作ったお菓子の山を指差しながら狗神君が聞いて来る。


「少し前にお昼を食べたばっかりじゃなかったっけ?」

「皆で稽古をしていたら小腹が空いちゃってね・・・で?食べて良いの?」


 あぁ・・・そう言う事・・・・てか、私、皆に休めって言ったよね?なんで稽古してるの?まぁ・・・こちらの世界の為にやってくれているのだから文句なんて言えないんだけどね・・・


「良いよ。作りすぎちゃったから食べて貰えると嬉しいよ」


 そう言うと彼は嬉しそうに洋梨のタルトを切って一切れ皿に乗せると口に運ぶ。


「ウマ‼」


 彼はそう言うと少しだけ真面目な顔をしてこっちを見る。


「で?どんなことが有ったの?」

「え?」

「さっき、嫌な事やストレスが有るとって言っていただろ?何が有ったんだ?」


 狗神君の言葉の意味が分からず首を傾げると彼は些か心配そうな顔で聞き直してくれる。

 彼の言葉に私は頬を掻きながら口を開く。


「あ~、うん、まぁ、ストレスはこんな状況だし仕方が無いのだし、どちらかと言うと嫌な事も嫌な事と言うかイリアに行くのが、憂鬱って言うだけだよ」

「憂鬱って故郷に帰るんだろ?別に憂鬱になる事も無いだろ?」

「いやいやいや、よく考えて、国から魔王に為った人間が出た上に私、イリアでは行方不明扱いだからね。皆にどれだけ迷惑を掛けたかと思うと・・・ねぇ・・・」

「・・・」


 私の言葉を聞いて狗神君は気まずそうに視線を逸らしケーキを口に運ぶ。

 うん、まぁ、何も言えないのは分かるけどね・・・

 そんな事を考えていると突然私の頭に手が乗って来て優しく撫で始める


「まぁ、あれだ。迷惑かけたとかはとりあえず置いといて久しぶりに友達の顔が見られると思っておいた方が、気が楽じゃないのかな?あまりマイナス思考になるのも良くないし」


 ふぇえ!?私、今、撫でられて励まされてる⁉てか、狗神君なんか撫でるの上手くない⁉

 慣れない事をされ私が驚いているとそれを悪い方に捉えたのか手を引っ込め彼が気まずそうに口を開く。


「あ・・・なんかごめん。いきなり頭を撫でて悪かったな」

「あ、いや、慣れない事をされて驚いただけで嫌では無いよ」

「そっか、なら良かった」


 微妙な沈黙が私達の間に流れて少しすると廊下側から声が聞こえて来る。


「なんか良い匂いがする」

「お腹すいたね~」

「それにしても、勝手に動き回って良いとは些か不用心では無いですかね?」

「それだけ信用してくれているという事じゃないですか?」

「てか、ここ何処だ?」

「乾先輩、わかっていて歩いていたわけじゃないんですね・・・」


 そんな言葉と共に再び扉が開き、皆が入って来た。

 その後は、皆で一緒にお菓子を食べたり私と狗神君が二人きりだった事で夢菜さんと光さん(夢菜さんを名前呼びする際についでにと言われた)、リル達が何やら勘違いしていたのを訂正したりしながら過ごした。



「あるじ~、いっしょにねよう?」


 その日の晩、ベッドに入って本を読んでいるとネージュが布団に潜り込んできたので一緒に横になりながらネージュの頭を撫でていると不意に狗神君に頭を撫でられた事を思い出す。

 何と言うか慣れない事をされた物だ。しかも、何となく心地良かったというのが何とも言えない・・・


「あるじ、なにかいいことあった?」


 そんな私にネージュが嬉しそうに聞いて来る。


「どうしてそう思ったの?」

「嬉しそうな顔してた」


 そう言われて自分で少し驚く。うそ・・・私、顔に出てた?

 そんな事を考えながら私はネージュに「そうだね。ちょっと嬉しい事が有ったかも」っと答え、明日のイリア行に備えてゆっくり目を閉じた。



「それじゃあ、皆、私達はイリアに行って来るからまた、留守を頼むよ」


 翌朝、準備を済ませた私は転移装置の前で見送りに来てくれたメイド長達に留守を頼んで私達はイリアの首都から少し離れた森に飛ぶ。

 こうして私は実に八年ぶりに自分の生まれた国に戻って来た。


「それでコハクちゃん伝手って誰を頼るの?」


 森の中を首都に向かって歩いているとリルが私の伝手について聞いて来る。私は苦虫を潰したような顔をしながらある人物の顔を浮かべる。こういう時に面白そうな顔をして協力してくれそうな人物を私は未だあの人しか知らない。


「とりあえず師匠(先生)を頼ろうと思っているよ。リル、師匠(先生)はまだ学園で教師をやっているんだよね?」


 私の言葉にリルが頷くのを確認して私達はイリアの首都に向かった。


次回から第4の厄災編んです。

ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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