閑話・幼馴染
こんにちは、第105話の閑話を投稿させて頂きます。
楽しんで頂けたら幸いです。
私がまだ幼かった頃、私には特に仲の良かった幼馴染が4人居た。
一人は今も村に残り両親と共に村の畑を耕している。二人は王都の学校に推薦を貰って行き、一人は騎士科の中でかなり有名になっている。実際、一度王都に行った際に彼に親しそうに声を掛ける友人や後輩と思われる子達が多かったことに驚いた。昔は一緒に行ったもう一人の幼馴染に負けて悔しがっていたような子供だったのに・・・
そして最後の一人、長い茶色の髪を腰まで伸ばした青い瞳の少女の事を思い出す。
実を言うと私は最初、彼女の事が怖かった。
彼女は村長さんの娘さんで初めて会ったのは4歳の時で父と母が村長さんの家に用事が有りついでに連れていかれた際にひたすらに分厚い本を読む彼女を見たのが最初だ。
何にも興味を持った様子も無く只々ページを捲る彼女の横顔が綺麗で私は一瞬、お人形が動いていると思った。
確か彼女を最初に見て母に言った言葉は「お人形が動いている」だったと思う。
彼女・・・コハクはやはり異質で4歳の時点で既に文字を覚えていたらしくスラスラとよく分からない本を読み進めていた。
後で聞いた話だがこのとき読んでいた本は魔法の入門書だったらしく村長たちも驚きを隠せなかったらしい。
そんな私がコハクと仲良くなったのは一言で言って村の男の子達の所為というのが正しいだろう。
コハクを初めて見た日から少し経ったある日、村にある教会(私の住む村はそれなりに大きいので教会が有る)の集まりにたまたま来てくれた騎士様に感化された男の子達が木剣を持って色んな子に勝負を仕掛けるという事が流行ってしまったのだ。(当然、当時のテトもその中の一人だ)
その時は運が悪く教会の集まりが終わり皆で遊んでいると私は何故か何人かの男の子に追いかけまわされる事態になってしまったのだ。
男の子達から逃げている内に森の中に入り気付いた時には帰り道が全く分からないという事態に陥ってしまった。所謂迷子だ・・・。
村に戻ろうと歩き回るが何処をどう走ったのか憶えておらず時間だけが過ぎ周囲は暗くなってしまった。
そして、森の中を歩き回り私はとうとう疲れ果てて暗い森の中一人で蹲ってしまった。
一人で心細くなり泣き出しそうになっていると近くの茂みでガサガサという音が聞こえて来て怖くなってそのまま茂を凝視してしまった。
森には人を襲う魔獣が居ると両親や村の皆に日頃から言われていた私はこのまま魔物にたべられてしまうと思い怖くて仕方が無かった。
「あっ、居た」
そんな鈴を転がした様な声と共に茶色の髪の少女が茂みをかき分けて出て来る。
その姿を見て地面にへたり込んだ私にコハクは近寄って来ると心配そうな顔で口を開く。何にも興味がなさそうな子だと思っていたのでこの時は驚いた。
「だいじょうぶ?立てる?痛い所はない?」
私は同じ4歳の子供だというのにその声に安心して思わず泣きだしてしまった。
「え?ちょっ⁉だいじょうぶ?どこか怪我してるの⁉」
私が急に泣き出したためか今度はコハクが驚いた様な顔で聞いて来た。
この時の私は泣きながらもなんだこの子はちゃんと表情が有るじゃないかなんて思っていた。
その後は、泣き止むまで待っていてくれたコハクに手を引かれて私は無事に森から村に戻る事が出来た。道中でコハクに何故迷わずに村に向かって歩けるのかと聞くと本に書いてあったように目印を残しているからだと教えてくれた。
当然、心配を掛けた事で私はコハクと共に親や村の大人達からお説教を喰らってしまった。横でコハクが「あの男子共め、憶えてろよ・・・」っと小さな声で呟いていたのは私だけの秘密だ。
余談だが後日、私の事を追いかけまわした男の子達はコハクが全員、木剣で伸してしまい一人を除いて村の男の子達は大人しくなった。
そんな事が有ったのが切っ掛けで私はコハクと仲良くなり当初から仲の良かったムウとコハクに勝負を挑むようになったテトと4人で穏やかな日々を過ごしていた。
少ししてコハクがお化けと泳げないと知った時のテトは調子に乗りまくってコハクにお仕置きされていたのも良い思い出だ。
今でも思うのがあの時、私が森に行こうと言わなければ今日もコハクは此処にいてくれたのではないかと思ってしまう。
2年が経ち6歳になった私達はイビルベアの率いる群れに遭遇した。コハクはそこに残り恐らくイビルベアに追いかけまわされ殺される直前でたまたま誰か(恐らくコハク)を探していた胡散臭い学校の先生に助けられた。そしてコハクは何故かそのまま行かないと言っていた学校へ行く事を決めて翌年にテトと共に学校に行ってしまった。テト達が学校に行ってから更に1年が経った頃。突然、村に貴族の馬車が入って来て中から私と同い年ぐらいの貴族の女の子が村長の家に入って行くのが見えた。
少しして村のお母さんから村長の家に呼ばれていると言われて一人で村長宅に行くとムウも呼ばれた様で二人で中に入ると貴族の女の子が私達に手紙を渡してきた。
聞けば、彼女はコハクの学校での友達らしく。彼女は言い難そうにコハクが行方不明になった事と彼女がその現場にいた事、手紙を渡すように書置きが残っていた事等を教えてくれた。
簡単に言うと手紙には急に居なくなることその事によって騒がしくなるであろうことに対する謝罪や生まれた弟の事を頼むなどの事が書かれていた。
弟に会うのを楽しみにしていたはずなのになぜ・・・?
その手紙を読んだ私はそんな事を思いながら体から力が抜けヘナヘナと床に座り込みそうになった所をムウとコハクのお母さんに支えられる。コハクが居なくなって動揺しているのはお母さんの方が大きかったはずなのにあの時は本当に申し訳なかった。
それが、私が幼少期の時に起きた最大の事件だった。今でもコハクは見つかっていない。今も生きているのか分かっていないが私は何時かひょっこりと返って来るのではないかと思っている。
椅子に据わったまま昔の事を思い出していると外からムウの呼ぶ声が聞こえて来て返事をしながら立ち上がる。小さい頃から思いを寄せていた彼との大切な日に幼馴染の彼女が居ない事がすごく寂しいがいつか彼女と会える日を思って私は少し速足で扉をくぐって彼の元へと向かった。
ちなみにこの時のコハクの読んでいた本は『魔法基礎学Ⅰ』『逃げ出した獲物の追い掛け方』『森で迷うなら迷わない様にすればいい』『食料になる獣の見分け方』『危ない獣の避け方』『食べられる木の実の見つけ方』『うるさい子供の黙らせ方』 全て著 イクス・ゴルデュフィスです。
次回は次の場所に行く話になります。ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




