光刃の獣・1
おはようございます。
第101話投稿させて頂きます。
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ネージュの上で私はティアマトを構え、矢を番えながら魔法とティアマトのスキルを発動させる。
「モードデストロイ、フレイムエレメント、《デカ・フレイムエンハンスアーマメント》《デカ・ライトニングオーラ》」
オーラ系の魔法は、ノナ以降は肉体に負荷が掛かるけど今は気にしていられない。
ティアマトの外装が開き赤い光が漏れ出したのを確認し、弦を引き未だ動きの無い第三の厄災に狙いを定めてから口を開く。
「騎竜隊、攻撃開始‼敵の攻撃が来る前に削り切れ‼」
その言葉と共に弦から手を離し、矢を放つ。それと同時に周囲の仲間からも一斉に攻撃が放たれる。
私の放った矢は炎を纏い第三の獣に激突し轟音が鳴り響き第三の厄災の表面が燃え上がる。
しかし、先程の攻撃同様大したダメージを与えた様子は見られない。
「手を休めるな‼続けて攻撃しろ!ネージュ、ブレス発射用意‼」
同時にネージュのアイスブレスや他の飛竜のブレス等も使って次々と追撃を加えて数十分、ついに第三の厄災に変化が現れ三十面体を構成している菱形の一つが赤く発光を始める。
「全騎、敵の形を構成している面の一つの色彩が変化‼敵が動き出したぞ‼気を付けろ‼」
『?黄昏様、こちらで色彩の変化の確認はされて————』
私の言葉に誰かが返答を返している途中で周囲がカッと光で包まれて赤く発光した面からビームが放たれ射線上に居た騎竜隊の一部が巻き込まれ姿を消す。
私の通信に答えていた兵も巻き込まれたのか通信の途中で雑音に変わる。
発射されたビームはそのままポーションを生産している建物が有る街の方向に向かって消えて行く。
一瞬、唖然とした後で直ぐに我に返り慌ててオウルと他の兵に通信を行う。
「オウル‼直ぐに第一の工場に連絡して安否の確認を‼他の兵は攻撃を続行しろ‼」
私の言葉に呆けていた他の仲間も我に返り行動を再開する。
『コハク、聞こえるか?』
「何?」
攻撃を再開しようとティアマトを構えると通信機から先程とは打って変わって真面目な声音のフェルの声が聞こえて来る。
『落ち着いて聞け、さっきのビームで街が一つ消し飛んだ。お前がさっき言っていた第一工場の有った街だ』
その言葉で私は矢を放ちながら舌打ちをしてしまう。やはり、先程のビームの方向はポーションの生産工場の有る方角だったか・・・
『それとさっきの話だが何が見えていた?俺達にはアイツがいきなりビームを放ったようにしか見えなかった。詳細の報告をしてくれ』
そのフェルの言葉に私は今更ながらに私と彼等とで見えている物が違う・・・変わったという事に気が付く。
前回の厄災と戦ってから今回の厄災と戦うまでの間に私の眼はまた進化したのだ。その可能性について考えが及んでいなかった自分に多少イラつきながらフェルに対して応答をする。
「フェル、多分、私の眼が原因だ。あいつが攻撃してくる直前に攻撃面が赤く変わってそこから攻撃が・・・」
フェルに説明している途中で不意に私の周りに影が出来る。
顔を上げると先程まで第三の厄災本体と一緒に飛んでいた正八面体の一つが私の近くまで飛んで来ている。少し前までの第三の厄災と同じ様に色彩を赤く染めて・・・
「ネージュ‼」
まずいと思い慌ててネージュに声を掛け手綱を引き正八面体から少し距離を取ると先程まで私達の居た場所を青白いレーザーが射貫く。
周りを見ると他の兵達も正八面体に追われて何人かがレーザーに撃ち抜かれ落下していく。
『おい‼コハク無事か⁉』
双眼鏡で見えているだろうに通信機からフェルの慌てたような声が聞こえる。
「私は無事、それよりさっきの話だけど多分、私の目が原因、アイツが攻撃をした時に私の目には攻撃する面が赤く発光して見えた。それは八面体の方も同じで攻撃時には赤く発光するみたい」
八面体の攻撃を避けながら手短に気付いた事とその原因を伝えていく。
そうこうしている隙に第三の厄災の一面がまた赤く発光を始める。光っている方角を見るに今度は第二工場の有る方角だ。
「撃たせるかぁー‼」
ティアマトに矢を番え赤く発光する面に向かって放つ。
放った矢は何にも阻害される事も無く真っ直ぐに飛んで行き赤く発光している面に当たり先程と同じ様に轟音が鳴り響き、それと同時に辺りに硬質な物の砕ける音が鳴り響く。
いくら攻撃しても大したダメージが入った様子の無かった菱形の結晶があっさりと砕けた事に驚きながら私は心なしか焦ったように集まって来た正八面体からの攻撃を避ける。
『コハク、今、何をした⁉』
ネージュに指示を出しながら攻撃を避けていると耳元からフェルの戸惑っている様な声が聞こえて来る。まぁ、アレだけ攻撃してもビクともしなかった敵にダメージが入ったのなら当然だろう。
「さっき言った赤く発光した面に向かって攻撃をしただけだよ。多分、攻撃する際が弱点になるタイプだと思う。攻撃する瞬間に相手の発光面を叩ければ倒せるけど皆には何番目とか分からないから指示の出しようが無い」
『誰がどの場所に居るか分かれば指示が出せるんだな』
どの部分が発光しているか分かってもどの面かを正確に伝えることが出来なければむしろ足を引っ張る原因になってしまう。
私の言葉にフェルが確認を取って来たので出来るとそう返答すると少し考えた後でフェルが口を開く。
『分かった。コハク以外の者は29の組を作って行動しろ‼』
その言葉を最後に耳元の通信機と全体で使用している通信機の通信が一度切れる。フェルの指示を聞き、全員が29組の班に分かれて行動する。それからしばらくして、恐らく一撃加えた事によってマークされたのか追いかけて攻撃してくる正八面体を第三の厄災と同じ様に攻撃して撃墜しながら移動する厄災を追いかけていると通信機からフェルの声が聞こえて来る。
『コハク、待たせたな。これで少しは指示しやすくなるか?』
その言葉を聞き辺りを見渡すと1~29の番号が書かれた旗を掲げたフェルの率いている騎竜隊がこちらに向かって来て29組に分かれた兵達と合流し、相手を構成している各面の前に待機する。
各菱形の面に番号が振られパッと見で分かるようになった。
「フェル、ありがとう」
フェルにお礼を言うと丁度真正面を飛んでいた1番の旗を掲げた騎竜に乗っていた人物が片手を挙げてサムズアップした姿が見える。
そんなやり取りをしている間にも第三の厄災は、また表面を赤く発光させる。
「5番部隊!相手が攻撃の準備に入った‼相手に攻撃させる前に破壊しろ‼」
フェルのお陰で指示をする事が出来る様になり着々と相手にダメージを与えることが出来るようになった。
そんな戦闘になって数十分が経った。私が指示を出している事に気付いたのか私を追いかけて来る正八面体が徐々に増え始める。
「28番部隊‼赤く発光を始めたぞ‼気を付けろ‼」
正八面体から逃げながら指示を出し続けて順調に約半数程の面を破壊してから相手に変化が起きた。
唐突に破壊してひび割れた面と赤く発光した無事な面がまるでパズルの様に組替わった。
「なっ⁉5番部隊‼回避―――――‼‼‼‼‼」
いきなり替わった面に驚き私は急いで弓に矢を番えて破壊した面に居た5番部隊に退避を指示したが一足遅かった・・・入れ替わった菱形から発射されたビームは最初の時と同じ様に5番部隊を巻き込み彼方に消えて行く。向こうの方角にはやはりポーションの生産工場が有る。
そして、驚き、正八面体から目を離してしまったのが災いしてしまった。
本体がビームを発射したのとほぼ同時に弓を支えていた右腕を八面体のレーザーが射貫いた。
それを合図にしたかの様に複数のレーザーが私の体ごとネージュを射貫いた。
誰かの叫び声を聞きながら私達は地面へと落下していった・・・
次回は和登の視点からスタートします。
ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




