長い一日の始まり
おはようございます。
第100話投稿させて頂きます。
評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。
楽しんで頂けたら幸いです。
『そう言えば、第三の厄災って言っていたがどんな見た目の奴なんだ?』
『あ、それ僕も気になってました』
『私も私も‼』
『私もです』
『コハク、差し障りなければ教えて貰えないかな?』
移動を終えて全員が各々の配置に着き第三の厄災の出現を待っていると唐突に乾君から通信が入り第三の厄災について聞かれ他の勇者達も同じ様に聞いて来る。まぁ、些か緊張感に欠けるが・・・厄災についてワザと詳しく説明していないからしょうがないだろう。
「あ~、話しても何の差し障りも無いんだけど多分役に立たないよ?」
『役に立たない?』
「私は先代の手記である程度の能力や見た目を予習していたんだけど今回の第一、第二の厄災はその記録から外れているんだ。多分、第三を含めた他の厄災も同じなんだと思う。狗神君には前に言ったけど多分これが本気を出して来たって事だと思う」
いや、まぁ、攻撃の方法とか共通部分も有るから全く役に立たないわけではないから教えても良いか・・・
「先代の手記によると光刃の獣は全長20メートル位の四足獣で口から所謂レーザーを放って攻撃して来るらしいね。今回これがどんな姿で具現化して来るのか予想がつかないし記されていた弱点も当てにならないだろうね。恐らく共通するのはレーザーで攻撃ぐらいじゃないかな」
ちなみにこれ等の情報はフェル達とは共有しているけど第一の厄災の姿が違った時点でフェル達と話し合い余計な混乱を防ぐために他の魔王には共有しなかった。
『因みに第一と第二の厄災はどんな姿をしていたの?』
前の二体の姿が気になったのか湊瀬さんから質問が飛んで来る。
あぁ・・・第一の厄災と第二の厄災ねぇ・・・第二の方は良いとして第一の方は嫌がるだろうなぁ・・・
「手記の方は殆どが獣の名の通り四足獣だったよ。でも、実際に現れた奴は、第二の厄災は鳥型で空中から人の憎しみを増す様な魔法で仲間割れを誘うような奴だったねぇ・・・第一の厄災は・・・一言で言うと台所に現れる黒光りするアレが巨大に為った見た目だったよ・・・」
『『『『『『『うわぁ・・・』』』』』』』
そうだよね・・・そういう反応になるよねぇ・・・私も最初そんな反応しちゃったもん・・・でもね、ヤバさで行ったら第一の方が第二の厄災よりやばいんだよねぇ・・・
「フェル達があっさり倒しちゃったけど第一の厄災、恐怖の獣はそれに対して恐怖を感じた者に対して即死をもたらす奴だったんだよね・・・まぁ、被害なんてフェルの国の畑が3つ駄目になっただけだったんだけどね・・・相手が悪かったよね」
『『『『『『『うわぁ・・・』』』』』』』
はい、またうわぁ頂きました。
え?緊張感が無いって?まぁ、あんまり緊張しすぎるのも良くないし彼等はまだ安全な後方組だから多少は良いんじゃないかな?それにね。第一の厄災の時なんて私とオウルはテーブルにティーセットでお茶しているだけだったんだよ・・・
『3つだけなんて言い方畑様に失礼だろ‼訂正しろコハク‼』
そんな呑気な会話をしていると唐突にフェルが通信に割り込んでくるどうやら最初から聞いていたらしい。
『あともう少しで収穫できた俺の可愛い。可愛い。菜花、新玉葱、春キャベツゥゥゥゥゥ‼‼‼‼』
『『『『『『『・・・』』』』』』』
「・・・」
フェルの言葉に呆れて思わず黙ってしまう。通信機の向こう側からは「魔王様しょうがないですって」など笑い声や慰める声などが聞こえて来る。
まぁ、彼なりに皆の緊張をほぐそうとしたのだろう・・・
『お前らなぁ・・・そろそろ来る時間だぞ。気を引き締めてくれ』
呑気な話をしているとオウルから注意が入る。まぁ、流石に呑気で馬鹿馬鹿しい話をし過ぎたよね。
「ごめん。オウル。ちゃんと気を付けるからゆるし———」
オウルの通信に返事をしていると不意に何もない空間から何かが割れる様なピシッという音が鳴り響き空間に亀裂が入り、空がパラパラと剥がれ落ち、そこから黄緑色をした菱形の結晶体が現れる。
菱形の結晶体は亀裂の入った空間から完全に出ると唐突にその数を増やし連結して行き巨大な菱形三十面体の形を作り上げていく。
更に三十面体が出て来た亀裂から同色の人ぐらいの大きさの正八面体多数出現した所で空の亀裂が閉じた。
☆
HP ?/?
名称:第三の厄災=サイプレス
ランク:ミソロジー
特記:第三の厄災、世界を死で包む光で照らす。
☆
相手のステータスを見てその情報量の少なさに思わず舌打ちをする。
第一、第二の厄災と同様に名前とランクと特記事項しか詳しい事が見えない。
『結晶体みたいな見た目でビーム撃つって・・・ラミエルかよ・・・』
第三の厄災を睨んでいると不意に乾君から気の抜けるような声が飛んで来る。エ〇ァですね。分かります。でも形が違うんだよね・・・いや、まぁ、小さい奴らは見えなくないけど・・・てか、呑気にこんな事を考えている場合じゃない。
意識を戦闘モードに切り替え、ネージュの鞍に取り付けた通信機に向かって前線参加者に全員に向って指示を出す。
「総員‼戦闘準備‼後方に敵を近づけさせるな‼砲撃部隊及び魔法部隊‼攻撃はじめ‼」
黄昏・暁・白夜合同の騎竜部隊で迎撃に向かう。
え?戦争に魔物を使わないんじゃなかったのかって?ベヒモスみたいな単体では使わないよ?騎竜としては使うけどね。
砲撃と共に第三の厄災に向かって飛び立つ。私もネージュに指示を出し周りの皆と共に空に出る。
放った魔法や魔法弾は何にも憚られずに第三の厄災とその周りを飛ぶ正八面体に当たり轟音が煙と共に辺りに響く。
『敵、損害無し‼無傷です‼』
「くそ・・・やっぱり簡単にはいかないか・・・」
煙が晴れ何の損傷も無い敵を睨みながらネージュと共に第三の厄災に向かって飛ぶ。
最初の攻撃で何のダメージも与えられないまま私達の長い一日が始まった。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




