「◯◯言ったら100円ねー。」「聞いてないよぉ(怒)」
ほぼ実話
「── 扉を開けた途端、灼熱の空気がまとわり付くようにこの身を包んだ。息を逃して体温を下げようと知らぬうちに呼吸をすれば、吸い込んだ空気が肺を焼く。
じわり、じわりと汗が吹き出て額から目尻を伝い流れ、涙を流していないのに目元に水が溜まり、眼に映る像が歪んだ。背中からうなじから吹き出した汗が滝になり服に染み込み、濃い色の丸い大きなシミを作る間も無く色を変え、背中に、脚にピタリと張り付く。
知らず汗でじっとり濡れた髪からポタリ、ポタリと……「やっかましいわあーーーーっ!!!余計暑くなるでしょうがぁーーーーっ!!!」」
妹の独奏をキレた姉が遮った。部屋にいる他の家族もうんざりしている。
「よし、姉ちゃん100円 ♫」
「もー、辞め辞め!何この嫌がらせ!只でさえ暑いのに余計暑くなるじゃない!」
「帰って来たばかりで何も聞いてないのに100円請求するからだよ。
フェアにやってよね。」
── ふっ、勝った………──
妹は勝利の美酒を噛み締めた。
── エアコンの設定が【冷房】ではなく【暖房】であったと気付くまで、あと3分の出来事であった。