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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 6 白馬の騎士  作者: 石渡正佳
ファイル6 白馬の騎士
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サテンのドレス

 「伊刈さんはいらっしゃるかしら」伊刈を名指しで女性が電話してきた。

 「どちら様でしょうか」

 「まどかの安座間だと言えばわかると思うけど」円の社長が女性だと思っていなかった喜多は驚いた。

 「班長お電話です。円の社長からです」喜多が転送ボタンを押すと同時に伊刈が受話器を上げた。

 「円の安座間と申します」

 「あ、そうですか」伊刈も喜多と同様に円の社長が女性だというのは予想外だった。

 「近くまで来たついでだから今からお邪魔したいんだけどかまわないかしら」

 「いいですよ」

 「そう、じゃよかったわ」他人に気を使わせて生きてきた女王様らしい傲慢な態度で安座間は一方的に電話を切った。

 安座間彌香の登場は劇的だった。クラブのママが着るような艶やかな黒いサテンのドレスに身を包んだ肉感的なプロポーションの美人が運転手の若い衆を引き連れて乗り込んできたのだ。いかにも姐さんといわんばかりの他を圧倒する風格があった。嵐山が言っていた上に繋がる人物の一人だった。右翼の会長を名乗った高峰も上に繋がる人物だった。彼はとうとう姿を現さなかった。安座間は何を思ったのか自ら伊刈に会いに来た。

 「どうぞこちらへ」伊刈は長嶋を伴って安座間を打ち合わせテーブルに案内した。

 「あなたは車にいなさい」安座間に命じられて若い衆は安座間のコートを腕にかけたまま引き下がった。所内に居合わせた全員が彼女に注目していた。まるで大女優のように安座間は視線を気にするそぶりを見せなかった。

 「豊洲さんからなんて聞いたの?」安座間は悪びれた様子もなく切り出した。

 「金剛産業から返品された産廃を円が勝手に犬咬に捨てたと言っていました」

 「そんなこと言ってたのね。うちは青ナンバーなのよ。不法投棄なんてするわけないわ」

 「どうして那須まで行ったのに犬咬に戻って来たんですか」

 「確かにねえ那須にだって棄てる所はいくらでもあるでしょうけど豊洲さんがそう言ったならそれでいいじゃないの」

 「円のダンプが犬咬に来るのは初めてじゃないですね。でなければ茨城を通り過ぎてまでわざわざ来ないでしょう」

 「私こっちは初めてよ。こんなとこに来る用事ないもの」電話では犬咬へ来たついでに立ち寄ると言っていたのになかなかの二枚舌だった。

 「金剛産業に運んだ運転手はどなたですか。返品されたというならマニフェストもあるでしょうし運転手さんの名前もわかりますよね」

 「それを聞いてどうするつもりなの。現場はうちが撤去するわ。それでいいでしょう」

 「円は栃木県と茨城県の収集運搬業の許可業者ですよね。たとえ一台でも不法投棄したなら両県に通報すれば許可は取消しになるし刑事事件にもなるんですよ」

 「それならそれで仕方がないわね。私は会社なんてどうでもいいのよ。許可を取り上げるなら取り上げてちょうだい。たいした会社じゃないしね」まるで007に登場する女スパイのように堂々とした態度だった。

 「取消しはそれぞれの県の権限ですからうちは撤去をしていただけばいいんですよ」

 「それならそうと最初から言ってよ。それで何台片せばいいのかしら」

 「今回は一台でいいですよ。それだけしか調査していないですから」

 「あら欲がないのね。現場をすっかりきれいにしろと言われるかと思ったわ。一台ならいつでもいいわ。それにしても伊刈さんは話が早いと聞いていたけどほんとなのね。明日から始めてもいいのかしら」

 「撤去は調査結果を総括してからお願いできますか」

 「それじゃ連絡をもらえるのね。私は逃げも隠れもするつもりはないから安心してちょうだい」安座間はエコユニバーサルの罪をかぶっているようなそぶりをみせた。今度の事件に深くかかわっていることは確かだった。

 安座間が幕引きを図った広域農道事件は、その思惑とは裏腹にさらに大きな広がりをみせることになるのだが、伊刈すらそれを完全には予想していなかった。安座間と伊刈の勝負もこれかぎりでは終わりにならなかった。

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