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Link. ~すべての世界線がつながる物語~  作者: ヤマ
2:Third Life ----七つの罪
98/105

S:98 どこまで同じ?

今までに比べると文字多めです

「アモス」


 気を強く持って、部屋に響かない、しかし芯の通った声で声をかける。

 対してアモスからは返答がない。

 ――これはこれでキツイものがあるが、そんなものことは今の状況に比べたらたやすいことだ。

 しかし――翼を見せれば、同類と思ってくれるのだろうか。こう思ってはなんだが、アモスは空と同じで結構頭が固いような気がする。空が特別だと言われてしまったらそれまでなのだから。

 と、嫌な想像が頭を巡ったが、すぐに振り払い。


「――俺から、逃げないでくれよ」


 本心を口にする。

 今までに感じたことのない感情だ。空からしたらアモスは人生で初めて通じ合えるかもしれない人なのだ。セイルもその枠に入るかもしれないが、アモスとは根本的なものが一緒に感じるのだ。

 そんな心から自分を許せる、許してもらえるかもしれない人から拒絶されて――それはまるで自分からの拒絶をされているようで、胸が苦しい。

 ただの空のエゴかもしれない。だが、そのエゴがなくなってしまうと――また空は、空のまま、殻を破ることができないかもしれないのだから。今は、それがたまらなく怖いから。

 それに空が勝手に理由を後付けしているのかもしれない。でも、同時に本心ではアモスを救いたいとも思っている。過去の自分と重ねて、自己満足したいだけかもしれない。自分でもよくわかっていないのだ。

 ――ただ、わからないからといって放置していては、投げ出しては、きっと二人とも救われない。

 だから、ハリネズミの針に自ら刺さりに行くのだ。それで、アモスが離れていくなら、そうなった時だ。

 でも、アモスが寄り添おうとしてくれるのなら。

 傷ついたって、かまわない。


 ――空とユーシャが、つながった――。


「いつまでも顔を背けるな」


 わざと、つらい言葉を投げかける。過去の自分に怒るように。


「君には翼があるだろう。君はどこまでも飛べるのに、もったいない」


 励ましの言葉さえも、棘を持たせて。わざと自分から棘に刺さりに行く。

 そして。


「――そんなことを言いに来たなら、帰って」


 泣きそうな、怒りを持った声が、空の耳に届く。

 朝ぶりに聞いたその声にひどく心が揺れたが、小さく鼻を鳴らして正気を保つ。


「そうやって、嫌なことから目を逸らすのか」


「帰って」


「そんなことしたって――


「帰ってよ!!」


 飛び出した怒号が、どの程度の音量だったのかは分からない。ただ空はそれを全身で受け止める。


「帰って! もう関わらないで! ――あなたに、私の気持ちなんてわかるわけない!! 分からないのに――知ったように言わないでよッ!!」


「じゃあお前も――俺を見て話せよッ!!」


 言い終わるころには、保健室は静寂が流れて。

 見つめあう、男と女がいた。


「お前こそ、自分自分って自分のことしか考えない! 自分しか見てない! 誰かが視界に入ったら、そうやってまた一人になろうとする!」


「あなただって、昨日今日の付き合いで私を語らないでよ!」


「――。そうだよ。俺はお前のことを全く知らない」


「なら帰ってよ」


「でもな、俺にもわかることがあるんだよ。アモス、君は飛べるんだ。羽ばたけるんだ」


「そうやって嘘ばっか――


「そう思うんなら、こっちを見ろよ!」


 そう言って、アモスのほっぺたを両手で挟み込み、無理やり空の方に向かせる。


「お前と同じ、この翼を見てから言えってんだよ! 文句を言うなら目をみて言え! 見られてないのに文句なんか言われてもそこに本心は感じられないんだよ!」


 空は、息を荒げてアモスの返答を待つ。

 当のアモスは、目を見ず空の背中についている異形も異形、片の悪魔の翼を見ている。


「これを見て、お前は本当に俺が知らないと思うのか」


 実際のところ、空にはこの翼の異常性なんてこれっぽっちも分からない。だが、その好奇の目は空が生きてきた中で浴びせられたものとそっくりなのだ。――それは目の前のアモスの目も例外ではない。

 俺は慣れているからいいんだ。慣れているから、アモスにも鈍感になってほしい。そうじゃないと、生きていけないから。向けられる視線にあきらめるのではなく、鈍感になってほしい。


「なんで、君が――その翼を……」


「そんなの、俺が知りたいよ――それより、話を聞く気になったか?」


 アモスの頬に当てたままの手の力を少し抜いて、優しい声で問いかける。


「ごめんなさい。――実は私も、仲直り、したっくてぇ……」


 怒声の飛ばしあいが終わり、緊張が切れたのだろう、間もなく涙を流して泣きじゃくるように、絞り出すように声を出す。


「俺もお前と一緒なんだよ。俺たちは同じ翼をもつもの」


「確かに。一緒だね」


 泣きながら、同志の存在をかみしめるように言う。

 ――ただ空は知っている。一つだけ違うところがあることを。

 だがそう思っても、その思いを前言撤回しなければならなくなる。


「でも。私と君は違うよ」


「どこがだよ」


「私には――」


 ――未来がないのよ。

あと2話。

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