S:96 青く光る
「それで、私のところに相談しに来たわけか」
「……」
朝の件がどうしようもなくやすれなくなった空は、授業がすべて終わった放課後、職員室の隣の面談室にて、スロスに相談していた。
「一言で言うと、君がアモスを傷つけてしまったのを悔やんで、一人でどうすることもできなくなって私に相談に来たということで間違いないかな?」
「はい……」
「――」
これまでは、人のことなんて気にしない質だったのに。空は今までに感じたことのない後悔と、今までなかった故の困惑にさいなまれている。
それはきっと、アモスと自分を重ねたから、重ねたうえで自分の不遇を嘆いたからにほかならない。
「二人とも不器用だな」
スロスが言う。
空は返す言葉がない。
「そしてとても似ているな」
「――それってどういう」
空が最後まで言い切る前に、スロスは語り始める。
「さっき、君と同じような悩みを持った女の子が私のところに訪れてね。その子もこう言ったんだ。私のせいで、傷つけちゃったかもしれないの、どうすればいい? ってね」
まさか、アモスも来ていたというのか。
「なんだいユーシャ。何かに気づいた顔をして。――もしかして、相談なんてなかったのかい?」
そう言うスロスの顔は笑っていた。
――本当に、なんなんだか。男なんだから、シャキッとしないと。
そう、空は正真正銘、生まれ変わったのだから。今までにできたことができないかもしれない。でも、できなかったことができることだってあるだろう。
だからそれを今から、確かめに行こうではないか。
「そうですね――相談なんてなかった。ただの決意表明に来ただけでした」
空の目には、朝から消えていたはずのある種の光がともっていて。
「そうかい」
スロスはそれを見て満足する。
「それじゃ、失礼しました」
一礼を済まして、足早にあるところへ向かう空。
「――青いな、君たちは。待ち受ける絶望に、幸あらんことを」
面会室には、言葉の残響だけがあった。
あと三話。




