S:94 悪魔か天使か
「――」
これは、いったいどうしたものか。
一旦カーテンを閉める。
「――」
いや、だめだ。落ち着け。イレギュラーなことはこれまでたくさん起こっていたじゃないか。今回は相手も起きていない。今までよりも対処は簡単なはずだ。とっさのことでぼやっとしか見えなかったし。今逃げ出せばきっとばれない。
どうするどうする。
「ん……あ」
声が聞こえた瞬間、空の身体が雷に打たれたようにびくっとしてしまう。
ばれたか……?
ゆっくりと、カーテンから体の方向を変えず、一歩、一歩と後ずさる。
「先生、ですか……?」
違います。
なんて言えるはずもなく、空はその場から動き出せない。動いてしまったら不信感を与えてしまうし、動かなくても不信感を与えてしまう。どうすればいいんだ。
「――誰、返事して」
少し強くなった言葉を聞いて――空は観念した。両手をゆっくり挙げて、小さく息を吸って、カーテン越しに言う。
「俺だよ。すまなかった。起こしたか?」
覚悟を決めたはずなのに、少しだけ事実を捻じ曲げてしまったことが良心をえぐられる。
「えっと、ユーシャ?」
「お、おう」
「どうしたの、こんな朝から」
心臓がバクバク音を立てている。アモスは自分の状況を理解した方がいいと思う。
「約束を果たしに来てやったんだよ……!」
緊張のあまり、ぶっきらぼうになる。
「――。もしかして、見た?」
「――! 見てない!」
まだ、何をさえ言っていないのに、決めつけて焦ってしまう。
「そっか――――嘘だよね」
「――。悪かったよ」
「……」
しばしの沈黙が二人の間に流れる。
その後、すすり泣く音が聞こえ、また空の心臓を跳ね上がらせる。
「ちょ、ちょっ!?」
泣かれてしまったという事実から、慌てて弁明しようとカーテンをはがす。
――カーテン越しのベッドの上には、黒い翼の悪魔のような天使がいた。
来週確定で100話行きます。やったー!




