S:88 託す思い
「託したい……」
「そうだ。私は感じたんだ。昨晩、少年が奇跡の光を顕在させたのを」
昨晩、奇跡の光……空の知らないところで、スロスたちの知らないことが起きていたことは間違いない。
「しかし、何でセイルなんですか。極端な話、僕でもよかったわけでしょう?」
「確かに君でもよかった。いや、適正としては君ほど合う人物はいないだろう」
「なら――」
「ただの昔の約束事だよ。少年が私の言葉を忘れずにここまで来た、来てくれた。なら私は運命を信じて少年に託すだけだ。あいにく、私ももう持ちそうにない」
そう言って空に向かって差し出した手は色を失っていて、それは老人の手よりもしわがあり、太くはあるものの、より一層悲惨さを強調させるだけだった。それがこうして目の前で動いていることに不思議な感覚を抱く。
「このありさまだ。君が気づいてくれなければ、きっと私はすべては託せない。――だから頼む」
「――」
空としては、正直まだ疑問だ。不透明な部分がありすぎる。
「ま、引き受けてもいいですけど――その真意は何だ。なぜ俺に気づかせた」
「――そうだな。君は強情らしい。なら、事情を説明しよう」
どうやらグリードよりも話が分かる、さすが英雄だ。英雄たちはどちらかというと空達の世界に似た考え方をする者が多い傾向にある気がする。だから、空を選ぶのだろうか。
「君はどうやらあの『七勢派』からも気に入られているようだ。君からすると普通なのかもしれないが、普通ではないからな。普通は、学園生活で出会えても二人、三人ぐらいだ。はっきり言って――君は不気味なぐらい短い期間で三人と対峙している」
「――。それで。それだけだと、まだ納得できないな」
「そうだな。確かにそれだけだと、ただの運のいい奴だ。――ほかにもある。というか、これがあるからこそ、君に頼みたいんだ。それは――」
君と少年の魔力の流れと、君の『型無し』だ――。
次回は月曜日~
評価待ってますよ!




