S:86 黒い太陽
夜もすっかり暗くなり、寒さが襲う時間帯になって空はふと、目覚めた。
「――」
暗いグラデーションの中、時を刻む『時刻秤』を手に取り、時間を確認する。
二本あるうちの長い針は、ちょうど0時あたりをさしていた。短い針は、二時あたりだろうか。
――セイルに取り扱いを教えてもらった限りでは、空の時間に対する知識との互換性があることが分かった。だから、見たまま時間は読めるというわけだ。この世界にきて、まともに取り扱えるようになったのが時計なのは、何とも言えない気分になる。便利だが、セイルもいるので時間はさして重要視してしていなかった。
丑三つ時に目覚めるとは、なんだか寝起きが悪い。それに妙に体がうずく。少し夜風に当たってこよう。
「んしょ……」
セイルを起こさないようにゆっくりと布団から出て、何もない部屋から出る。
部屋の外は部屋の中よりは明るいものの、月かさえ分からない天体の明るさだけが廊下を照らしているので、開けるときに気を使わない程度の明るさだった。
「さっむ」
寝巻が薄いのもあるのだろうが、素直に外が寒すぎる。空は、この国は空に浮かんでいるからだと勝手に思い込んでいるが――まあ、間違ってはないだろう。
夜風に当たろうという思考が少し妨害されそうになったが、その気持ちを押し殺して部屋から一番近い窓に向かってゆっくり歩いていく。
窓はガラスなのだろうか、透けてはいるが、素材は違うかもしれない。こういった原材料の違いでの融通が利かないのがいちいちうっとうしく感じてしまう。
その窓にはカギが付いていない。それを見て、窓に手をかけ、横にスライドする。
その瞬間――廊下よりも暖かい、心地よい生ぬるさの風が流れてきた。
耳には風の流れる音が流れる。
ビュウという音が収まったころ――別の音が空の耳に届いた。
「やあ、さっきぶりだね」
そこには、黒い布をまとった――太陽がそこにいた。
次回、おじさん回。
そろそろ百話到達するので、感想ください……!




