S:80 英雄の翼
地面と激突する音が耳を貫いて、空は後ろへ倒れ込んでしまった。
「な、なんだ!?」
砂ぼこりでセイルの様子が見えない。大丈夫か。
尻もちをついてしびれる腰を上げ、セイルの元へ駆け寄る。
くそ、どこだ。この濃さの砂ぼこりなんて知らないぞ。
前が見えないし、目を開けようものなら目に砂が入ってしまう。極限まで目を細めて薄暗い視界の中、セイルのいたところまで何とかたどり着けた。
「セイル! 大丈夫か!」
「そ――ユーシャ!? 君こそ大丈夫かい!」
「俺はいいから! 何が落ちてきたかわかるか」
「分からない」
セイルを支えて立たせ、セイルと共にその場を離れる。
セイルはおびえた顔をしていたが、空は空から降ってくる奴にいい記憶がない。同じような輩だったらどうしよう。それに、少年、とは誰のことだ。あの場にいたのはセイルだけだった、少年とはセイルのことだろうか。ということはセイルの知り合いか。
だとしても、どうして吹き抜けからやってきたのか、空がそうだったように、正面から入って、ここまで歩いてこればいいのに。
砂ぼこりが収まるまで約一分。うっすらと現れるシルエットは、巨漢。それこそ、空よりも身長の高いグリードと身長差はないように思えるが、体格が違う。すらっとしているあいつや空とは全く真逆。筋肉で覆われ、背中には綺麗な翼が自慢げに、その存在を世界に示すように悠々と広げられている。
「少年」
うっすらと舞う砂ぼこり、逆光に充てられ黒く光るシルエット。それから発せられた言葉は、少年に――セイルに向けられたもので。
「――!?」
セイルはそれに驚愕を隠せないでいる。
だってそれは――
「ルミラ――さん……?」
英雄、だったからだ。
八十話にして、きりよく英雄の登場です。




