S:77 グリード=グレッダ
スロスの身長よりも少し大きい扉を重そうに押すスロス。
しかし、こちらの世界にも研究所があるのか。空も年齢が年齢だったために、進学とかは考えていなかったが、周りの高校生がそうであれば、ネットの世界にもそれが反映されるわけだ。そうすれば嫌でも目に入る。だからこそ、そういうシステムがこちらでも発達しているのだと思うと、少し感激だ。あのままの空ならば、一生体験しえないことだっただろうから。
「失礼するぞ」
スロスが中をのぞいて一言断りを入れ、空に「入れ」と告げる。
スロスの後をついていって、部屋に入っていった。
――そして空は驚く。それは、その人は、スロスが空の前にいるから見えなかった人影は。
――昨晩、出会ったあの男だったのだ。
「「あ」」
部屋の中央と入り口近くで、間抜けた男の声が重なる。
その後に。
「あー! お前、昨日の!」
「お前こそ! こんなところで何してんだ!」
「それは俺のセリフだ! 俺の胴体ぶち抜いて自分は失神で勝ち逃げしやがって!」
「うるせ! お前が間抜けなのが悪いんだよ!」
スロスを間に挟んで、怒声や罵声が飛び交う。それは止まることを知らず、二人が息が切れるころには、顔を真っ赤にし、にらみつけあっていた。
「まあユーシャ。座れ」
「――――」
腰を曲げてにらみながら用意されている二つの席の一つに座る。
「で、なんだよ。てか、なんでだよ! 何でこいつがこんなところに来るんだよ!」
「俺だってお前がいるなら来なかったよ! てか、来たくなかったよ!」
「お前ら、少し黙ってくれ」
まさに鶴の一声。第三者による注意喚起がなされてからは、二人のやり取りはにらみつけあうことに落ち着いた。
「で、ようやく本題に戻れるわけだが、まずはユーシャ。昨日あの部屋で何があった」
「――。昨日せんせーと話した後、部屋に戻って、ふと、空を見上げていたら、目の前のこいつが空から部屋めがけて降ってきた」
「ハッ、黄昏てんじゃねえよ、乙女が」
「ああん!?」
「おおん!?」
「――――」
スロスのため息、それから苦労が読み取れる。教師なので子供二人を扱う能力は高くない。
「ユーシャの状況は分かった。次はお前だ」
スロスが話題をすっと変えてくれたおかげで、空はこれ以上不愉快な思いはしなさそうだ。
――そういえば、こいつの名前。何て言うんだろう。
心の中で発したその発言は、次の瞬間に解答される。それはおおよそ空の予想しえないものだとしても。
スロスは彼をこう呼んだ。
――グリード、と。
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