S:73 アモス
「なるほど」
確かに彼女の悩みは妥当だ。自分が少数派に所属していてそれが正しいと信じているが、世界はそれが許していないという事実、その二つの『正』に板挟みにされ、その矛盾と葛藤していることが分かる。悩んでいる分、あきらめて結論を出した空よりかはよほど人間らしい。
そしてこの問いの答えを、空は持ち合わせていない。なにせあきらめてしまったから。
だから。
――もしもこれも試練ならば、上等だ。
そう変換することでしか、この問いについては答えられない。
いや、答えることはできるが――明確な答えは出せない。
だが彼女はきっとそれすらわかっているのだろう。
「――君、名前はなんていうの?」
「――え」
「いつまでも君呼びだと俺が持たないんだよ。しっくりこない。言葉をしっかりと届けたいんだ」
君なんて、不特定多数に使える言葉に乗せて発言をしたくない。
「名前――それじゃ、君のも教えてよ」
「分かったよ。じゃあ俺から――俺の名前はユーシャ」
「何で自分の名前、そんなにたどたどしく言うの?」
何でだろう、たどたどしく言ったつもりはないが。七勢派の人たちはどうしてこう勘が鋭いのだろう。まあ、疑惑をかけられているだけだろうし、うまくかわせそうだ。
「俺は俺さ。名前なんてどうだっていいだろ。それより本題だ」
「そう」
自分から聞いてきた割にはうんと薄情な。
「私の名前は、アモス。――さあ、あなたの答えを早く教えてちょうだい」
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