S:72 正しいのはどっち
「質問してもいい?」
「いいぜ」
「どうして君は、人の表情なんか見てるの? そんなのしても意味ないのに。相手のこと考えるだけ無駄だと思う」
「――。答えよう。まず一つ指摘するなら、君自身、そうしていることに違和感を持っていると俺は感じる」
「それは何故?」
少しも視線を動かさない彼女。
「君が俺の内面を読み取らなければ俺が表情を見ていると言えないからだ。俺が察するに、俺と君はかなり似ている。君が笑えといったのは、俺が同じ考え方をしているか確かめたかったからだ。そうだったら共感、そうじゃなかったら笑われておしまい。君は、仲間が欲しかった。自分がこの世界で異常だと思っているから」
空の世界でのマジョリティーはこちらの世界でのマイノリティーだと空はこの数日で、身をもって体験した。レインやスロスのように、染まり切ってはいないものもいるようだが、初対面のレインのような、残虐性を大小問わず隠し持っているのだろう。
言葉を選ばないとしたら――彼女は生まれる世界を間違った。あちらの世界で生まれていれば、さぞ生きやすかっただろうに。こちらの世界には『察し』という独特の文化がないのだから。
空の気持ちを察してくれたのか、彼女は空の顔に近付いて、真意を問う。
「ねえ、教えて。気持ちを知ろうとする私か、気持ちを知ろうとしない世界か。――どっちが正しいか」
じっと目を見つめて、君ならわかるよねと、うるんだ瞳で空に問う。
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