S:71 馬鹿だと笑って
「ちょちょちょ……!」
いったいどうしたというのだ。泣くほど嫌がられたのだとしたらメンタルがズタボロなのだが。
「ん、何?」
彼女は声音こそ平然としていたものの、顔は歪んで涙を引かせるのに必死だった。
――なんというか、ほっとけない。同じ匂いがする。それはもしかしたらただの思い違いかもしれないけど。
「ほら。これ」
「何、これ」
「黙って受け取ってくれ」
空はハンカチを渡し、足元を見る。泣いている姿を見られるのは――空はみじめだと感じているから。空自身がそうだったから。
ハンカチを受け取ってくれたのが分かったので、空は話しかける。
「なあ、どうして泣き出したんだ?」
「――。教えなきゃ、いけない?」
涙をぬぐいながら答える。
「できればでいいけど。俺がなんか無神経なことをしたんなら、謝るよ。悪かった」
ぶしつけではあるが、これも気遣いだということで、顔を見ずに謝っている現状を許してほしいものだ。
「どうして許しを請うの」
「は?」
「別にあなたが悪いわけじゃないのに。みんなはそんなことしても謝らないよ。それに、誰も誰かの気持ちなんて考えない」
その言葉を聞いたとき、なぜか空は彼女を見てしまっていた。その横顔は涙が滴り、やはり美しかったが、その表情はこの世界に対して、一種の諦めに等しい感情を持っていた。
だからか――さっき、空自身と同じだと感じたのは。彼女はきっと、セイルのように何かがあっても真っ白であるわけじゃない、何かがあったから、空側に思考回路が寄った、世界に対する気持ちが汚れてしまったのだと。
「――もうちょっと、吐き出したいんじゃないか?」
「――」
彼女は答えない。が、その口は動きたそうに震えている。
不満の代わりに、一言返ってくる。
「どうして、そう思うの?」
「君の顔を見ればわかる」
「――。分かった。馬鹿だと思うなら、笑ってね」
目を合わせることなく、二人は語る。
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